モンスターハーレムには興味がない 〜だって俺、人間オンリー主義だし〜

アッシュ

第1話 ハーレム願望

――男なら誰しも一度は夢見る。

異世界に転生して、最強スキルを得て、美少女ハーレムを築く。


雨月イオリ、17歳。高校二年生。

恋愛経験ゼロ、告白成功率もゼロ、存在感もゼロ。やけにゼロが多い人物だ。


ただし、ハーレムを作りたいという欲望だけはクラス随一である。


「ふっ……もし俺が異世界に行ったら、

 美少女のメイドや美人なお姫様にお姉さん騎士が俺を取り合う。

 “イオリ様〜♡”って、完璧じゃね?」


昼休み、机に突っ伏しながら気持ち悪い妄想。

当然、誰もイオリがそのような下衆な妄想を知る由もなく、だが本人は至って真剣だった。






その夜、目を覚ますと真っ白な空間。

目の前に立つのは、白髪のお爺ちゃん――どう見ても神様っぽい人。


「雨月イオリ。お前は選ばれた。異世界へ行く資格を与えよう。」

「ま、まじで!? テンプレ展開きたこれ!!」


イオリは両手を握りしめる。

「えっと……その、チートスキルとかって……」

神は微笑む。


「与えよう。ただし内容は教えられん。」

「へ?」

「だが安心せい。お前は特別な力を手に入れる。

 それは、お前の“願い”に最も近いスキルだ。」

「おおっ! じゃあ俺、最強になるんだな!?

 ハーレムもつくっちゃうかもな!!」

「…ふむ。どう受け取るかは、お前次第じゃ。」


そう言って、神は指を鳴らした。

世界が光に包まれ、イオリの意識は闇に落ちる






「……うわっ、まぶしっ! ここどこだ!?」


気がつけば、深い森の中にイオリは倒れていた。

頭上には見知らぬ巨大な月、風は澄んで、どこか甘い香りが漂っている。


「ここが……異世界か。マジで来たんだ……!」

イオリは拳を握る。


「よし! 俺の最強人生、ここからスタートだ!

 美少女を助けて“あなたこそ勇者様です!”って言われて、 そこからハーレム無双! 完全ルート入り!!」


テンションはMAX。

……だが次の瞬間、足元で“ぷるん”と何かが跳ねた。


「うわっ、スライム!? 最初の敵かっ!?」


透明なスライムがイオリの足にまとわりついてくる。

彼は身構え――


「チュートリアルって、やつか?……最強の俺からしたら余裕だぜ!」


拳を握った瞬間。


「ぷるる♪」

「え?」


スライムはイオリの足をすりすり。

「……な、なんだ? やけにフレンドリーだな」


さらに、頭上から「ギィィッ」と鳴き声。

無数のコウモリが鋭い牙をイオリに向けて飛んできて――彼の肩に止まった


「ひぃ!? 吸血か!? いや、痛くない!? むしろ……くすぐったい!?」


スライムは頬を舐め、コウモリは耳元で羽をぱたぱた。

どう見ても、懐かれている。


「……なるほど。これはあれか。

 チートスキル“動物にも好かれる勇者体質”ってやつか!」

「最強主人公っぽいぞ、俺!」


……だがそのスキルこそが、神が授けた“魅了の加護”。

対象は――“人間の敵”。

つまり、モンスター限定。


イオリはそれを知らない。

この瞬間、“魔王イオリ”誕生への第一歩が刻まれたのだ。


「……って、なんでスライムとコウモリに囲まれてんだ俺ぇぇぇ!!」

なんか、違う! ハーレムの方向性おかしくない!?

いや……なんでやねん!!


(To be continued…)

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