時の番人

Veroki-Kika

第零話

「はぁっはぁっはぁっはぁっ!」

ゴウゴウと雨が、走る少年の体を叩き続ける。

服が濡れても、髪が濡れても、そんなのもう気にしていない。

そんなことをいちいち気にしていたら、間に合わない!

少年の心の中に、不安が広がっていく。

「うっ!」

べしゃっ!

少年は濡れた地面と解けた靴紐に足を取られて転んでしまう。

膝に痛みを感じて、見ると血が滲んでいる。

少年は歯を食いしばり、靴を脱ぐ。

アスファルトと雨の冷たさが、足に直で伝わった。

そして、また走り出す。

「頼むっ…!間に合ってくれ…っ!」

ウーウーウー。

街ではサイレンが鳴り響いていて、道路には人気がない。

道を走るたびに、雨水が跳ね返る。

大雨警報が出ていて、どんどん雨は強くなり、辺りが暗くなる。

とある地点で少年は立ち止まった。

目を見開く。

「いたっ…!」

少年の目に、眩しい光が映った。

暗い景色の中、そこだけが別世界のように明るい。

その光の中心に浮かぶ、一つの人影。

少年はそれを見て青ざめた。

ふわりとした光に靡く長い髪。

それだけで、少年は影の少女ょの正体がわかった。

「××!」

少年はその少女の名前を叫んだ。

光の中で、少女の影が振り返る。

それと同時に光がさらに少女を包み込んで輪郭がぼやける。

「頼むっ!いかないでくれっ!なんでっ!なんでお前はっ!」

少年は何度も必死に叫ぶ。

だが、どんどん少女の影も光も薄くなっていく。

少年は動かない足を無理やり動かして走り出す。

光に向かって手を伸ばした。

「あとちょっと…!」

しかし、

後一歩のところで、光と少女の影は辺りに消え、手は空を切った。

「そんな…嫌だ…××!」

少年の悲痛な叫びが、雨の降り続ける空に響いた。

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