光の守護者は風を知る
美月つみき
光の見える場所
実地訓練
雲ひとつない晴れ渡る空の下。監視塔から見える景色といえば飽きるくらいに広がる荒地とこちらに直進してくる全身真っ黒で目だけが翡翠のように輝く魔物たち。
今日が初めての実地訓練ということもあって、極度の緊張が電流のように体を走り抜ける。
それでも冷静に、慎重に、確実にと頭に言い聞かせる。
僕は遠視鏡を覗きながら、頭上の師匠に声をかける。
「北東37、5体。……次いで南東41、8体。どちらも規格外なし。」
「了解です。一気にいきます。」
我が師ロゼッタは杖を両手で握りしめ詠唱を始める。
詠唱が続くにつれて師匠の周りに光の粒子が漂い、空へと舞い上がる。
ロゼッタの声は水のように透き通る声で、いけないと思いながらもつい聞き入ってしまう。
詠唱の声が止むと共にロゼッタは軽やかに杖を上に突き上げる。
次の瞬間、魔物の頭上には先ほどの光の粒子で出来た柱が現れて、音もなく無慈悲にその肉体を穿いた。
魔物は悲鳴をあげる間もなく、黒い粒子となって空へと向かう。
初めて見る実地での師匠の魔法は、修行で見たときよりもずっと綺麗で迫力があった。
「師匠、お見事です。」
「いいえ。レイが的確に位置を割り出してくれるからできるのですよ。ありがとう。」
「そんな、光栄です。」
恥ずかしさに俯いてしまった。
師匠にお礼を言われる日が来るなんて、修行を始めた当初じゃ考えられなかった。
毎日冷徹な笑顔で叱られて、杖で殴られて、その度に逃げ回ってと捕まって散々な目にあっていたのに!
自分の成長を噛み締めていると、聞こえてしまった。
まだまだ甘いですけどね。という皮肉たっぷりの冷徹で氷のような美声が。
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