第2話

 翌日の朝。

 アリシアはいつも通り面倒そうに出勤した。

 朝のギルドは昨日から新しいクエストの張り出しや、クエストに関する細かい規定など最新の情報を共有等々で忙しい。

 そんな中面倒くさがりのアリシアはサボっているのがバレないように机の右にある資料をまとめて左に、左にある資料をまとめて右に置くという生産性皆無の行為を続けていた。

(なにもしていないと仕事を頼まれてしまいますからね。バレそうになったら棚の整理に行きましょう)

 ギルドが冒険者を迎える十分前。職員が集まり定例の朝礼が始まった。

 みんなの前に立つのは眼鏡をかけた背の高い女性、セシル・ブラックバーン。

 鋭い目つきに黒縁眼鏡。黒い髪を短く切り、前髪の右側だけ伸ばしていた。

 セシルは眼鏡をくいっと直した。

「はい注目! 最近は依頼が増えてます。その分仕事も多いけど、ミスなく丁寧を心がけてください。私達の仕事は人の命に直結するんだから、その自覚を持って業務にあたること。あとモニカ!」

「は、はい!」

 名前を呼ばれたモニカは焦って背筋を伸ばした。

「あなた昨日パーティーと食事に行ったでしょ? こっちは機密情報を扱ってるんだから誘われたからってホイホイついていかない! 分かった!?」

 モニカは涙目になって「うう……。すいません……」としゅんとした。

 セシルは再び眼鏡をくいっと直した。

「皆さんも気をつけるように。では今日もよろしくお願いします!」

「お願いします!」と職員達が返事をする中、モニカは涙目でアリシアに言った。

「うう……。アリシアさんを連れて行かなかったから文句言われたり、結局誰とも良い感じにならなくてショックだったのにまた怒られるなんて……」

 アリシアはモニカを白い目で見ていた。

(ついて行かなくて正解でしたね)

 アリシアはやれやれと嘆息する。

(さて、今日も面倒な仕事が始まります)

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