お題31:目覚まし時計に「今日は休んでいいよ」と言われたので、逆に嫌な予感しかしない。

 ピピピピピ……。


 朝の目覚ましがなる。横の盛り上がった布団がもぞもぞと動く。


「うぅ……もう朝か。起きたくない……」

「そう、なら今日は休んでいいよ」

「へっ!?」


 予想外の許しにビビった彼は、思わず布団から飛び起きた。


「あれー、目覚ましにそんな音声設定してたっけなー……?」

「休みたいなら、休んだ方がよいですよ」

「いやいや、普通に出勤だから……、ってやっぱ喋ってないかこの時計?」


 まるで彼を甘やかしているかのように話す目覚まし時計。彼が何か設定をしたわけではなく、意思を持って語りかけているかのようだ。


「ご安心ください、あなたの仕事は全て私が片づけておきましたから。今日は出社する必要がなくなりました」

「待って、それはそれで怖いんだけど!?」

「すでに課長からも許可をいただいております。『今日からはもう君でいいや』とお墨付きです。えへん」

「えへんじゃないよ!?」


 将来AIに仕事を取られるかもしれない、という話題はあったけど、これはなんか違う気がする。危機感を覚えた彼は急いで会社へと向かった。

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