お題20:願いをひとつ叶えるというランプをこすったら、出てきたのが近所のおじさんだった。

「ふふ……お前か、ランプをこすったのは」

「いや通学路でたまに見かけるおじさんじゃねえか」


 願いを一つ叶えるという魔法のランプを拾った。けれどこすって出てきたのはランプの青い魔人じゃなくてただのおじさんだった。


「くっそパチモンかぁ……」

「パチモンではない。ちゃんとランプの先から出てきただろうが」

「いやそうだけどさぁ」


 なんかこう、心躍らないというか。ただのだらしないおじさんが出てきただけだもの。


「さあ、願いを言え」

「朝見かけるおじさんに話すの嫌なんすけど……」

「いいから、ほら何でもいいんだぞ」

「えー……」


 気は引けるけど、言わないとおじさんが引いてくれなさそうだ。


「まあ、言わなくてもわかるけどな。お前さん、最近野球部で成果が出せていないだろ?」

「なっ、なぜそれを!?」

「朝の顔みりゃわかる。ずっと浮かねえ顔してんだろ」


 まさかの俺の悩みがバレていた。


「力みすぎなんだよ。ちったぁ肩の力抜いてみろ」

「は、はい……」

「願いはこれで叶う。じゃあな」


 そういって去っていった。なんか思ってたのと全部違ったけど、気分は悪くないからまあ良しとしよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る