皇帝に放置されたので、朝廷生活を謳歌します 〜放置妃の二重生活〜

弥生真秀

序章

大夏国──建国より三百年。


今では誰も口にすることもなくなった古い言い伝えがある。


「初代皇帝の妹・麗姫の血を引く者を后に迎えねば、国を護る封印は緩む」。


真偽はともかく、その伝承だけが芳家の娘たちを後宮へ送り続けてきた。



私は、芳真桂。大夏国の皇帝・夏文琳の妃。

……と言っても、誰からも見向きされない妃なんだけど!


入内したころは「伝承で妃になったけど、皇帝陛下にきちんとお仕えして──」

なんて殊勝なことを考えていたのに、あの男、一度も来やしない!


……あ、そうですか。

なら、好きにさせてもらいますよ! って話。


でもね、アイツ、ひとつだけ見直したところがあるの。

それは、女性にも科挙の道を開いたってこと。

思わず「いい皇帝だ」なんて思っちゃったじゃない。


……だけど、そうやって制度は進むのに、相変わらず周りは私に全然興味なし。

おかげで後宮では本当に“空気”扱い。


でさ、ふと思ったの。

誰にも見向きされないってことは……

誰も私のことを気にしてないってことでしょ?


小梅の服を借りて、小梅にお化粧してもらったら……はい、完成!

“王小葉”のできあがり♪


そんな勢いで科挙を受けてみたら、

あらまあ、探花になっちゃうわ、戸部に配属されちゃうわ。

人生、楽しいったらありゃしないわ!

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