【第１話　キリンの写真】

　ゴルフバッグの中から主人公の少年〝時羅歩（じらふ）〟が瀕死の状態で発見されるところから物語は始まる。時羅歩の母親である柚奈は学歴がないせいで、様々な不幸に見舞われる。その不幸は負の連鎖となって繰り返され、せめて自分で断ち切ろうと必死に生きようとする。つかの間の幸せをつかみ、愛する家族と共に動物園を訪れキリンの前で写真を撮る。しかし幸せは続かず、再び不幸が訪れる。

【第２話　期限付きのシンデレラ】

　再び訪れた孤独と貧困の中で、柚奈は夜の仕事先で親身に接してくれる男性と出会い、再び愛と家族の幸せを手に入れた。今度こそはと運命に逆らうように幸せをかみしめ共に暮らし始めたが、その夫も高校中退ゆえの不遇を経験し、生活は不安定になる。やむを得ず柚奈は夜の仕事に戻りつつ家計を支えたが、夫は昼間から怠惰にふけり三度不幸は繰り返される。柚奈は自分はシンデレラのように幸せは続かないと運命を呪う。時羅歩には変わり果てた父と母の狭間で危機が迫っていた。

【第3話　絶望の淵から】

　柚奈が客と旅行中、父親は嫉妬と酒で暴力的になり、折檻として時羅歩をゴルフバッグに閉じ込めてしまった。そのまま外出した父親は交通事故で即死し、一週間後に発見された、時羅歩は昏睡状態となるが、奇跡的に回復する。その時、時羅歩の人生と深く関ることになる看護師の秀子と運命的に出会う。柚奈は事故の顛末を知り、ショックで自殺する。間もなく時羅歩は回復し、自分の置かれた状況を理解するとともに、養護施設での生活を言い渡される。絶望的な状況の中でも静かに現実を受け入れようとする。

【第4話　新たなる絆と試験】

　時羅歩は、施設に入所しょうとするとトラウマから拒絶反応が起こってしまい、やむを得ないということで秀子の自宅に引き取られることになる。時羅歩は秀子に強く依存し、安心感を得ながら秀子の自宅を訪れる。やがて、さらに深い関りとなる久則と名乗る秀子の夫と出会い、二人から正式に子供として迎え入れられるかの相談を受ける。時羅歩は秀子への絶対的な信頼から、彼女の命令には何があっても従うことを条件として、契約が成立する。新しい生活が始まり、部屋を与えられ、手料理の食事で幸福をかみしめつつ、久則から突然「東大入学」という最初の課題を告げられる。