SCP:TASK FORCE

@Nanasinosireikann

サイト19編第1話 鎖につながれた牙

俺はサイト19のブリーフィングルームに立っていた。

コンクリートの壁、低い天井、空気は相変わらず消毒薬と金属の匂いが混ざっている。ここは戦場の一歩手前だ。いつも通り、だが「いつも通り」が通用しない場所でもある。


「……全員、揃ってるな」


俺――モバイルタスクフォース・イプシロン11、“ナインテイルズ”の現場指揮官、ハウンド。

腰には愛用のマグナム。何度も俺と仲間を生き延びさせてきた相棒だ。


テーブルを囲む三人に視線を向ける。


「よう、ハウンド。今回はどんな地獄だ?」

軽口を叩いたのはフォックスだ。肩にはグレネードランチャー。陽気な笑顔だが、目は獲物を探す猟犬そのものだ。


「まだ地獄とは決まってない、フォックス」

俺は静かに返す。


「……そう言って、毎回地獄じゃないか」

低い声で呟いたのはファルコン。ライフルケースを抱え、少しだけ肩がこわばっている。

臆病に見えるが、引き金を引かせれば話は別だ。あいつの一発は、状況を一変させる。


部屋の隅、影のように立つ男が一人。


「命令はまだか、ハウンド」

シャドウ。

マチェットを腰に下げ、表情は読み取れない。冷酷だが、誰よりも仲間を気にかける――それを俺は知っている。


「もうすぐ来る」


そう言った瞬間、天井のスピーカーが低く唸った。


《ハウンド、聞こえるか》


「こちらハウンド。クリアだ、オーバーウォッチ」


《サイト19で異常事態が発生している。詳細は現地合流後に開示する》


フォックスがにやりと笑う。

「つまり、“楽しい”ってことだな?」


《黙れ、フォックス。今回は冗談を言っている余裕はない》


一瞬、空気が張り詰めた。


《お前たちはイプシロン11として、サイト19の封鎖区域へ展開する。目標は――生存と状況安定化だ》


「……了解した」


俺は仲間たちを見る。

この四人で、何度も“ありえない”をくぐり抜けてきた。


「準備しろ。武器チェック、通信確認。命令が下りた以上、俺たちは行く」


「へいへい」

フォックスは軽く肩を回す。


「俺、ちゃんとカバーするからな、ハウンド」

ファルコンはそう言って、小さく息を吐いた。


シャドウは何も言わず、ただうなずいた。


《ハウンド》


「何だ、オーバーウォッチ」


《……帰ってこい。全員でだ》


その言葉が、妙に重く胸に残った。


「当然だ」


俺はマグナムを確認し、ホルスターに戻す。


サイト19の奥で、何かが動いている。

まだ姿は見えない。だが――牙を剥ぐ準備をしている気配だけは、確かにあった。


俺たちはその檻の中へ、歩き出す。


――任務開始だ。

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