第27話 信じる心が俺のアクセルだ!

『――さて』


 ザンティネルの声が聞こえた。


 唯一残った四大天使。黄金の装甲、六つの翼、そして、六つの眼が、こちらを見ている。


『ドリフターとシャーケニル、ジーバイネル、メコウシエル――四体がゴールに消えた』


 その声は冷静だ。何の感慨もないように聞こえる。


『そして、お前のチャージも使い果たした』


「……」


 震える手で、涙を拭った。



 ザンティネルがゆっくりと降下した。フィールドの端――シルビアとコルトの前に降り立つ。


『お前たち二人――車から降りた者は、ドームの外に出る権利がある』


「え……?」


 シルビアが驚いた様子だ。剣を構えたまま、警戒している。


『これは、バトルドームの古いルールだ。乗り物から降りた者は、戦闘員ではない。ゆえに、退場することができる』


「……それは、本当なのか?」


 シルビアの声に疑いが滲んでいる。


『ああ。我々は、ルールに従う』


 ザンティネルが頷いた。六つの眼が穏やかに光る。


『さあ、外に出るがいい。お前たちは、もう戦う力がない』


「……」


 シルビアがこちらを見た――どうすればいいのか、と問いかけるような視線だ。


「シルビア、コルト――バトルドームの外に出てくれ」


「しかし……」


「頼む。生身のお前たちが命を懸ける必要はない」


「……分かった」


 シルビアが頷いた。コルトを抱えたまま、ゆっくりと後退する。


「ヒロシさん……!」


 コルトが涙を流している。


「大丈夫だ。俺は――必ず、戻ってくる」


 そう言って無理やり笑顔を作った。


 

 光の壁が現れた。ゲートのように、フィールドの端に開く。

 シルビアとコルトが、その光の中に入っていき――そして、消えた。



『さて、マジンカーZの操縦者ドライバー――お前の同乗者も、外へ出してやってもいいのだぞ』


 ザンティネルの六つの眼が、カレンを見つめている。


『彼女は、戦闘員ではないだろう? 魔法使いのようだが――お前の車に乗っているだけだ』


「……」


 確かに、カレンは戦う必要がない。俺が巻き込んだだけだ。


「カレン。お前も、外に出てくれ」


「え……?」


 カレンが驚いた。大きな緑の瞳が俺を見つめる。


「ここからは危険だ。お前まで巻き込みたくない。……お願いだ。外に出てくれ」


「…………です」


「え?」


「いやです」


 その声は小さいが、強い意志が込められていた。


「私は……ヒロシさんと一緒に戦います」


「でも……」


「私は、戦力にならないかもしれません」


 カレンの涙が頬を伝う。


「でも……でも……! ヒロシさんとZさんだけが戦うなんて……そんなの、嫌です!」


「カレン……」


 カレンの表情が、真剣だった。


「私も……一緒に戦います。ヒロシさんの隣で……! たとえ、何もできなくても……一緒にいたいんです……!」


 小さな手が震えている。


「……」


 胸が熱くなる。涙が溢れそうになった。


「……ありがとう、カレン。一緒に、戦おう! 必ず勝つぞ!!」


「はい!」


 カレンが笑った。涙を流しながら、笑顔を見せた。



『……フフフ』


 ザンティネルが笑った。


『いい絆だ。だが――そのようなもので、ワタシを倒せるか?』


 赤い六つの眼が鋭く光る。


「……」


 涙を拭った。そして、ハンドルを握り締める。


「信じる心が――俺のアクセルだ! やってやるぜ!!」


『マスター、私も共に戦います。カレン、あなたもいます。我々は三人です』


「はい!」


 カレンが両手を握り締める。


「行くぞ、ゼット、カレン!」


 アクセルを踏み込む。


 ゼリカが加速した。青い光はないが、それでも力強く前に進む。


 ザンティネルも動いた。翼を広げ、こちらに向かってくる。


 黒い車体と、黄金の装甲。


 

 バトルドーム最後の戦いが、始まる――!!

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