この作品の魅力は、美しい和歌の「生きたい」という願いと、主人公の「死んでもいい」という虚無感が対照的に描かれる点にあります。浅村しおんとの出会いは救いであり光でしたが、その喪失が一転して恐怖と不安を呼び起こす構造が印象的です。友情が救済であると同時に狂気へと変わりうる余韻を残し、繰り返し読むことで新たな発見がある奥深さを持つ、美しくも不穏な物語です。