049.面倒を見るという事
ブラボーチームとチャーリーチームを送り出した俺は、特にすることもないのでベッドの上でゴロゴロしていた。
寝返りを打つたびに沈み込んだ身体を優しく受け入れてくれるマットレス。最高だ。
さすが俺の腕一本分のDPと交換しただけある……?
「え、DPでベッド創れるの?」
「びっくりしたぁ。一体何日前の話題のリアクションが返ってきたのよ。ping悪くない? どこのサーバーから話しかけてるのよ」
「サーバーもネットワークも介してないよ。俺のアンテナが壊れてたんだ」
「増設する?」
「DPで物理的な人体改造とかされそうだからやめとく」
「いいじゃない。サイボーグ」
「本当にできそうな感じやめてね?」
前にピンチに陥ったときに強くなりたいとは言ったが、それは別に機械的にではない。というか、機械的な改造……もしかしてできるのか?
「DPをいっぱい使えばシノミヤと私の知ってるものなら再現して創れるよ。はっきりとどんなものかわかっているならね」
「その情報はちなみにいつからお持ちで?」
「感覚的には最初から。でも、命に関わらないものだしDPも無かったから話さなかったの。だって、お風呂欲しいとか言われても困るじゃない?」
「お風呂欲しい」
「困らせないで」
困らせてしまった。でもそうか、知識にあるものならDPで創り出せるなら試してみたいな。別にお風呂や家電じゃなくても、武器とか。さすがにファンタジーに銃とかは邪道だし魔剣とかかな? いいな、魔剣。俺もそろそろ何かしら真剣に戦闘に備えるべきかもしれない。
「何ゴロゴロしながらニヤニヤしてるのよ」
「夢を見ているんだよ」
「起きてるじゃない」
「起きてる時にしか見れない夢ってのが男にはあるの」
「あっそー。あ、チャーリーが帰ってきたみたいね」
「映像を」
コアちゃんに合図を送るとすぐにモニターモードになってくれた。
ダンジョンに戻ってきたのはオークが一匹と、ゴブリンが一匹。オークはなんか穴だらけのグロいものを引き摺っている。
「人間の死体みたいね? 他のメンバーは戦死かしら?」
「それにしてもあんな殺し方はうちのモンスターのやり方じゃない。しかもあの死体、鉄の鎧だ」
今は汚れていて無残なものだが、これまで見た冒険者たちのものより上等な物に見える。グロすぎて直接は見たくないけど調べるべきか?
いや、やっぱやめとこう。説明ならまた演劇でうまいことやってくれるだろう。
「コアちゃん、死体は吸収してチャーリーチームの生き残りをコアルームに」
「はいよー」
「グルル! グル!」
「あの死体は汚かったから食べるのはやめときなさい」
「ぐるるぅ」
グレイスを宥めるために手を差し出して噛まれる。たまには清潔な手で過ごしたい。
そうしている間に、コアルームにオークとゴブリンがやってくる。
「フゴッフゴッ」
「ゲギャギャ!」
あー、生き残りは変な鳴き声のゴブリンか。こいつは演技が上手いから楽しみだ。
というわけで、オークとゴブリンのボディランゲージをしばらく鑑賞。音楽はなし。
「つまり、さっきの死体は小鳥にやられた? で、その小鳥の群れはダンジョンの側に集まってきてると……鳥、穴だらけ……どっかで聞いたような?」
「
「ああ、それそれ……え? ハチドリってそんなヤバいの? さっきの死体メチャクチャ穴だらけだったよ?」
まさか鹿がけしかけたんじゃないだろうな。あんな重装備してても貫いてくる小鳥とかもうニワトリよりヤバいでしょ。
「とりあえず、チャーリーチームは持ち場に戻ってくれ。仲間にも近くに危険な鳥がいるから気をつけるように伝えて」
「フゴッ」
「グギャ!」
生き残った二体をコアちゃんに転送して貰う。
「困ったな。あの死体が冒険者だとしたら、客が来ないのはそのハチドリの群のせいか?」
「調べてみる?」
「無理でしょ、チャーリーチームのゴブリン四体もやられたようだし、戦力を失うだけだ。リスポーン待ちの間に人間がハチドリを突破してきたら困る」
しかしハチドリか。小鳥サイズの鳥なら第一のハーフ壁ゾーンなんて関係なく中に入られちゃうな。第一には今は守りを置いていないけど再配置すべきか?
再びベッドの上に戻って頭を働かせる。今はダンジョン内に侵入者はいないので、内装を弄ることもモンスターの配置換えもできる。
新しく拡張したりしないのであれば、あり物を弄るのは可能なのだ。ただ、弄ったところで相手が小鳥では……うーんうーんと唸っていると「ブラボーチームが帰還したわ」と呼ばれた。
「ブラボーチームの生き残りはゴブリンが四体だけみたいね。オークとペニーが見当たらないわ」
ブラボーチームのオークには一番いい装備を与えている。外でロストしたとなるとかなりの痛手だ。しかし、ペニーまでか……こちらのチームの損失は数よりも質でチャーリーよりも大きい。
「とりあえず、みんなを呼んで」
「はいよーおいでー」
すぐに「ゴブゴブ」と見分けのつかないゴブリンたちがやってくる。恐らくは二期生か三期生。あまり馴染みがない。
「ゴブゴブリ」
ゴブリンたちはベッドから這い上がった俺をみると、膝をついて屈み、床の上に
ゴブリンは大抵がちょっと反抗期みたいな連中なのに珍しいことだ。何があった?
というか……
「またこどもか……」
「しかも過去一幼いわね」
こいつら食糧探しに行ったんじゃないの? なんでこどもを連れてくるわけ? 嫌がらせかな? こどもなんてたいしたDPにならないし、DPにすること自体に嫌悪感があるってのに、ああ……グレイスがいい顔をしている。俺を責めるのがそんなに嬉しいかよ。
「こどもを攫ってきたってことは人の住んでるところまで行けたのか?」
「ゴブゴーブリ、ゴブーリ」
「わからん。劇で頼む」
こっちのゴブリンたちはあまり劇が得意ではなく、ジェスチャーを解読するのに苦労した。やっぱり喋れるモンスターが早めに欲しい。できれば俺のことを溺愛してくれる巨乳がいい。
「ゴブリンたちが一生懸命メッセージを伝えてるんだからちゃんと見てあげなさいよ」
「見てもわかるときとわからないときがあるんだからしょうがないじゃん。えーと、オークは魔法使いと弓を持ったやつに襲われて、ペニーは森で四本足、猫? 豹みたいな感じ? に襲われて囮になって死んだ? でいい?」
「ゴブリゴブリ」
そんな感じらしい。多分。
「じゃあきみたちも持ち場に戻っていいよ、あー、取ってきたその食糧は好きにしていいから。俺の分はまだ残ってるし」
「ゴブゴブ!」
三人のこどもの他に、一体のゴブリンが抱えていた小さな袋の中身。恐らくは唯一の彼らに取っての戦利品。奪うつもりはない。彼らは家族のために戦ったのだから。ゴブリンを見送る。
そうして残ったのは、赤子と二人の女の子。
「どうしていつもこうなるかなぁ……」
なんで、いつも俺に敵意を向けてくる相手ではなくて何の力もない無抵抗な者ばかりを殺めなければならないのだろうか。
せめて、もう少し大きければ労働力にでもなるか、配下のところで家庭を持てただろうに。
何もできない、ただ生きているだけ。それだけで許されるべき存在。
その命を奪って小悪魔な巨乳お姉さんを喚び出せたとして何が楽しめるというのか。
「だがせめて、その魂が我らの
そして俺は、もう何度目かになる赦されざる罪を背負う。罪はグレイスに貪られる前にすぐにダンジョンに飲み込ませた。
グレイスに分けてやる訳にはいかない。これは俺だけのカルマであるべきだ。
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