追放された錬金術師、素材1つで世界を壊す。俺だけ“純度100%”を作れるから

@Tonarinohiroshi

第一章:価値ゼロ追放から始まる、世界核錬金術師レオンの逆転劇

第1話 追放と世界核の石

王国最弱の錬金術師──それが俺の肩書だった。


扱える素材は“ゴミ石”。形も、色も、匂いも、ただの石ころである。

いくら精製しても見た目が変わらない。成果なし。才能なし。努力の無駄。


王国錬金術師団は、ずっと俺を嘲笑っていた。


「レオン、お前の素材は価値ゼロだ。団を今日限りで追放する」


国王の命により、俺は王城を追われた。

悔しさ……は、あまりない。ただ、やっと肩の荷が下りた程度だった。


問題はその夜だった。


研究室の窓の外、見慣れた団員たちがこそこそと侵入している。

彼らは何を盗んだ? 金か? 機密か?


──違う。

──彼らが手にしたのは、俺の“ゴミ石”だった。


(なぜだ? あれは価値ゼロじゃなかったのか?)


俺はポケットに残っていた最後の一個を取り出し、精製をかける。


瞬間、空が震えた。


世界の雲がざわめき、遠くの山が軋むように鳴る。

石が純度100%に戻ったのだ。


「……世界核の振動。あり得ない。まさか、本当に……?」


“ゴミ石”の正体は、世界の根を構成する最古の素材。

扱える者はほぼ存在しない、禁断級の物質。


それを盗んだ王国は、知らずに災厄を呼ぶだろう。


──取り返さなければ。

──世界が壊れる前に。


俺は静かに息を吸い、夜の王都を離れた。


「価値ゼロと言ったお前たちが、世界を壊す前に──」

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