第五章:突然の別れ

デートの日。春は胸を高鳴らせ、待ち合わせ場所で時計を何度も確認する。空は少し曇り、 冷たい風が頬を撫でる。

「もうすぐ来るよね...?」

手に持ったバッグをぎゅっと握りしめる春。 待てども待てども、玲央は現れなかった。時間が経つほどに焦りと不安が募る。 結局、春は連絡せずに待ち続ける。数時間後、体は冷え、心は怒りと悲しみでいっ

ぱいになった。

「もう、帰ろう...」 春はため息をつき、肩を落として家へ向かう。 部屋に入ると、無意識にベッドに倒れこむ。布団にくるまり、目を閉じた。

その時、携帯の通知音が鳴った。友達からのメッセージ。

「玲央、事故にあったって...。今病院...」

春の手から携帯が落ち、体が硬直する。息が止まったように感じ、胸の奥が締め 付けられる。

布団の中で震えながら春は、昨日までの小さな幸せを思い返す。

隣で笑いながら勉強したこと、放課後に肩を軽く叩かれたこと、夕日を一緒に見た廊下

――すべてが遠く、手の届かない世界になった。

「なんで、、玲央...」 涙で視界がぼやけ、胸の痛みが全身に広がる。 春は手元のノートを握りしめる。玲央と一緒に解いた数学の問題、書き込んだメモ、ふざ けて描いた落書き――どれも大切な思い出だった。

「ごめん... 待てなくて怒っちゃった... でも... ずっと好きだった...」 声に出せない言葉を布団に向かってつぶやく。 涙が止まらず、夜の静けさに声が吸い込まれていく。

春は何時間も布団にくるまり、体も心も震えたまま眠りについた。

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