いつか
オーク
第一章:隣の席と放課後の勉強
高校の教室。窓際の席に座る鈴木春は、今日も静かにノートを開いていた。
春は控えめで、目立たないタイプ。クラスの中ではいつも静かにしている。教室のざわめきや友達の笑い声は、遠くで響いているように感じられた。
その日、担任の先生が席替えを告げた。
「春、今日から隣は玲央ね」春の胸は小さく跳ねた。
「え..隣、玲央..?」
心の中で小さくつぶやき、少し震える手で机に座る。
目の前には、いつも穏やかで少し無邪気な笑顔の央が座っている。手元のノートが突然光を帯びたように感じられた。
授業中、隣にがいるだけで緊張が和らぐ。鉛筆の音、ノートをめくる音、ささやく声
一すべてが普段より優しく、心地よく響いた。春は自然と背筋を伸ばし、集中できている自分に少し驚くほどだった。
授業後、教室に二人だけが残る。
玲央は少し困った顔でノートを広げ、春に声をかける。
「春、ちょっと教えてほしいんだけど...この問題、全然わからなくて」春は驚きつつも、少し照れながら答える。
「えっと...ここはこう考えるといいよ」
指先がノートの文字を指し示す。
玲央は真剣に聞き、時々頷く。
「なるほど..春、わかりやすいな」春は顔を赤らめ、小さな笑顔を返す。
「そんなことないよ…..」
玲央は軽く笑った。
「でも、春って本当に落ち着いてるよね。授業中も冷静で...俺、ちょっと見習いたいくらい」
春の心臓は少し早鐘を打った。
こんな風に自分を見てくれる人がいることに、春は驚きと嬉しさを感じた。
ふと窓の外を見ると、夕陽が校庭を赤く染め、教室の中の影が長く伸びている。
その光景が、二人だけの時間をより特別に感じさせた。
春は小さく息をつき、静かに心の中でつぶやいた。
「玲央の隣..ずっといたい」
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