第十四話 狂気の谷!ヘイムス・ヴィティズ……はぁ……セリフを取られるとは……。
続いてはヘイムス・ヴィティズ……既に城郭都市メルトケーレの地下深くで息を潜めていた。
「しっかし飽きるよな。」
「何がだよ?」
兵士は見張りをしながら会話する。
「俺たちはクレアトラ街で視察しないでいつも通り街をウロウロ……こんなん飽きるぜ。」
「まぁ、派兵された連中はいつもと違う仕事で少し楽しいかもな……。」
兵士二人は目立たない路地に入ってタバコを吸う。
「ふぅ……俺達もダイナモウス神に使える敬虔な信徒……タバコは御法度だが……やめらんねぇな。」
「ああ、生まれて直ぐに信徒扱い……宗教の自由なんてこの国じゃあ許されねぇ……。」
「ゴホ……ゴホ……。」
「あ?お前、喉でもやったか?」
「いや……。」
「気のせいか……。」
兵士は隣を見て確認するが異変は見られない……。
「なぁ……」
兵士が再び話題を振ろうと隣を見ると頭頂部から槍が刺さっており顎の下まで貫通している……綺麗に真っ直ぐ……粗がなく美しい……。
「はぁ……はぁ……。」
動揺……いつも通り気兼ねなく話してた同僚の死に気が追いつかない……。
後退りをすると何か柔らかい物がぶつかる……。
「やん……♡」
「は?」
下半身は蛇……上半身は女性……奇妙であり下半身の艶かしい鱗に艶……目を奪われる……。
「そんなに見ないで……♡この体は全部ご主人のだから……♡」
その女性は兵士の腹部に何かを刺す……。
「ご主人様のために……死んでくれるよね?」
オロチは刺したナイフをゆっくりと抜く……。
墓地周辺では数多くの兵士が集結している……。
「おい、モンスターが居たって本当かよ?」
「ああ、デスパペットかな……?とにかく下位のモンスターだが、住民の安全を優先しなければ。」
墓地周辺から連絡を受けた数多くの兵士がゾロゾロと集まってくる。
墓石から顔がヌッと出ると再び引っ込める。
「ん?子供?」
「いや、モンスターじゃないか?魔力を感じる。」
兵士が釣られるようにその墓石に近づくと墓地全体が結界で張られその場から出られなくなる。
「あんた達お馬鹿さんじゃない?」
声の元を辿ると貴族の大きい墓の上に人形が座っていた……。
「そもそも、このドロシーちゃんを下位のモンスターと侮る時点で負けよ。」
ドロシーが手の平を下にし指を細かく動かす……まるで操り人形を動かすように……。
「ア……たい……ちょう……。」
「うん?どうした。」
兵士が剣を抜き近くの兵士に斬りつける。
「気でも狂ったか!」
切られた兵士は死に絶えるが、再び動き出す……。
「アンデットだと?!」
すると墓の中からスケルトンやゾンビが地中を掻き分け地上に出る。
「私は傀儡師でネクロマンサー……この意味分からないの?」
「何?!」
「私が結界を張ったのは墓地全体……アンデット生成には最高の環境……そして、あんたらの仲間が死ぬ度に私の手駒が増える……。」
「ふざけおって!」
兵士がドロシーに向かって剣を投げつけると包丁を取り出し弾く……。
「面白い事して遊びましょうか?」
ドロシーは剣を投げた兵士を操りこちらに引き寄せる。
「や、やめろおおおお!!」
「私の体に傷を付けようなんて『腹綿』が煮え返りそう……私はご主人のオナホになるまではこの体に傷一つ付けたくないの……分かるでしょ?」
「このバケモンがああああ!!」
「怒ってるって言ってるのよおおおおおおおおおおお!!」
ドロシーは包丁で兵士をズタズタに切り裂く。
「はぁ……はぁ……お前達にも見せてやる……この傀儡師とネクロマンサー併用の本質を……。」
死んだ兵士の肉片が一箇所に集まると別の生き物になる……。
「さぁ、やってしまいなさい。」
肉片で出来た化物は巨大だ……接着剤の代わりだろうか……隙間に血液や内臓が露出する……。
ミートゴーレムとアンデット……死んだ兵士の死体……墓地にいる兵士を殲滅し始めると結界を解き兵士を殺して回る。
「おい!なんだあれ!」
「墓地にバケモンが!」
遠くで墓地の異変に気づく兵士達……直ぐに向かおうとするが。
「ん?ここは危険だ……早く離れて。」
通路の真ん中に紙袋を被ったメイド服の少女が立っていた……。
「危ないぞ、紙袋なんか被ってないで……早く避難を。」
紙袋を外すとそこには絶世の美女がいた……顔立ちが綺麗で美人以外の言葉が見つからない程に……。
「おお……。」
「おい、見惚れんじゃねぇ。お嬢さん早く……。」
「エサ……。」
「は?」
少女がよく分からない事を喋る……。
「イタダキマス……。」
美人な顔が一瞬で変わる……花の蕾が開くように割れ頭の部分に脳が露出……綺麗な瞳は触手のように脳と繋がっており、この世の生き物とは思えない程悍ましい姿をしている……。
「なんだ……これ……?」
兵士の一人が花の弁に飲まれるとゴリュゴリュと音を立て、次第に骨が軋むような音に変わる……意思を持ったウツボカズラというべきか……一つ違うのは咀嚼してること……これが恐怖を煽る。
「ああ……ああああああああ!!」
兵士が逃げ出すと胸に違和感を覚える……。
「い、いやだああああああ!!」
リンの手は遠くまで伸び兵士の心臓を貫通……返しのような突起を手に精製し自分の所まで引き寄せる。
「お、お願いだ!!死にたくない!!」
兵士は心臓を貫かれてるにも関わらず抵抗を見せる……だが、もう遅い……。
仲間が次々と死んでる事に城を見回る近衛騎士団は気づかない……。
「おい、外が騒がしくないか?」
「ああ、また小規模デモだ……酔っ払いがいるんだよ。」
「アリス団長はまだ、マルクレイブ卿の部屋にいるのか?」
「ああ……全く……。」
彼らは見回り交代のため兵舎に訪れる。
「おい、じか……?!」
中に入ると顔がパンパンに腫れた仲間達が椅子に座り苦しむ。
「ど、どうした?!」
「が……ああ……う……。」
苦しんでる兵士は必死に目線を上に向ける。
「上?」
頭を上げると下半身がムカデで上半身が女性の異形が天井に微笑みながら張り付いていた……同時に気持ち悪さも感じる。
「うおおおおおお!!」
持ってた槍で突こうとすると、避けられる。
「せっかちは嫌われるわ。」
天井から床に降り立つと仲間の頭を掴む。
「触るな!!」
「うるさいわねー。」
「くそ!おい、ジャン!仲間を!」
連れの兵士に指示を出す。
「そうだ、少し面白い物を見せましょう。」
シックス・アイズは手首から糸を出し外に出ようとする兵士を捕まえる。糸が絡み抜け出す事が出来ない。
「この毒ね……感染力がとても高いの……私の新作……。」
「その糸を解けええええ!!」
「はぁ……話を聞かない男ほど愚かな物はない……意見を求めてないのと同じでただ聞いて欲しいだけ……。」
パンパンに腫れた顔の兵士に鋭利な指先で突き刺す。
「見てなさい……これの感染力を……。」
その瞬間兵士が爆発する……内臓や肉片が飛び散り辺りに血飛沫が撒かれる。
「どうしたら旦那様が私を抱いてくれるのか話だけ聞いて欲しいの……この体じゃあセックスなんて難しいし……」
血飛沫を浴びた兵士はシックス・アイズの言葉より自分の体の変化を気にした……血飛沫が掛かった所が赤くなり腫れていく。
「あ……うう……おえええええええ……。」
その後嘔吐し、体全体が麻痺する。
そこからは数珠繋ぎで死体が爆破……兵舎は肉片と内臓が溢れかえった地獄になる。
そして最後に……城郭都市の広場に堕天使が姿を現す。
「なんだ……あれは……。」
翼が黒々としており邪悪さの中に神聖さも感じる……。
「主人の命により……あなた達を殲滅します……まぁ……彼女達は主人のためなら見境がなくなりますが……私は違います……一つ選ばせて差し上げましょう……これは警告……私と戦いますか?」
「弓兵!準備!」
弓兵が数十人と弓を引いた瞬間全員の首が飛ぶ。
「は?」
兵士達は異常な強さに理解ができなかった……。
「もう一度言います……私と戦いますか?」
「奴は悪魔!!神聖呪文を唱えよ!!」
「なるほど……分かりました。」
術師が神聖魔法を放つとメラニアは瞬間移動し指揮官の背後に現れる。
「転移魔法?!」
「少し違いますね。」
指揮官の後ろから刃物で心臓を刺すとぶっ倒れる。
再びメラニアは上空に姿を現す。
「た、隊長!!」
「では、ハンデを差し上げましょう……私はこれより武器を持たず素手であなた達を倒します……もちろん魔法は一切使いません。」
メラニアは地上に降り立ち、両手を後ろに回す。
「バカにしやがってええええ!!」
兵士が剣を振るうも避けられる。
三人が武器で攻撃するも一向に当たらない。
「どうしました?遊んでいるつもりなら死にますよ?」
「この、天使もどきのモンスターめ!!」
「ん……思いの外つまらないので、死んで頂きましょう。」
三人の上半身が消し飛び死ぬ……全くもって兵士達は理解が出来なかった……。
「ただ、私を悪魔やモンスター呼ばわりされましたので……勘違いされたままは嫌ですね……。」
メラニアは上空に飛び立ち右手に闇魔法……左手に神聖魔法を宿す。
「私は堕天使……職業もスパルタファイターで肉弾戦に長けます‥…おまけにマジカルライトオブダークネス……神聖と闇の魔法も同時に使える……転生石の恩恵が強いのが原因……ありがたい事にヤマザキファミリアの中で私が一番強いとご主人も認めてらっしゃる……。」
両手を合わせ光と闇が混ざる魔球が完成する。
「さて……私も頑固でしてね……真実は真実であると認めながら死んでください。」
「ああ……。」
兵士達は上空を見上げるばかりで何もしてこない。
「『終焉の領域』……レベル1でもやり過ぎでしょうね……。」
魔球が地に落ちると広場の兵士が全員灰になる。
「あら?」
メラニアが建物の影から女性兵士を見つける。
「あ……あああああああ!!」
目が合うなりどこかへ行ってしまう……。
「隠密系でしょうか……大変強いスキル……私が見落とすとは……。」
——「如何なさいましたか?ハル様?」
「いや……何でもない……。」
彼女達の活躍を見ていたけど……警告してから殺せと言ったのに……メラニア以外は聞いてくれなかったな……彼女達は忠誠心よりかは好意に近い……我ながら凄いメイドを作ったと思う……特にヘイムス・ヴィティズは、異常なまでの強さと好意を兼ね備えている……彼女達の好意を裏切って敵にでも回したら勝てることは不可能だ……僕が彼女達の愛を全力で受け止めなければ……。
第十五話に続く……。
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