地滅〜地球滅亡〜
@rimit_yakitori
序章
第1話 幸せとは
―過去回想(約10年前)―
5歳の女の子「わたし、も、そーまくんのことが、すき、だった。そーまくんとけっ、けっこんして、しあわせに、なりたかったなぁ」
―過去回想(その後)―
相馬のお母さん「私の命に変えても相馬の幸せな未来は守ってみせる!」
――
俺は高屋相馬。あの日から約10年、今日は月1回のお墓参りをしに来ている。5歳で亡くなるのはあまりにも若すぎる。それほどに今の地球上では人間の戦争が絶えてならない。
民間人が戦争に巻き込まれるのは至って日常。そのため、5歳までは施設内で育てられ、6歳になるときいくつかの専門学校から一つ選択し入学、戦争に関係するものを学び、そして戦争で命を落とす。その人の才能を兵器として利用するのが今の社会の全体図だ。私は今のこの世の中が嫌いだ。
相馬「どうすれば俺は幸せになれる?」
???「幸せはね、頑張った人が掴むものなのよ。」
相馬「河原井さん」
河原井咲、俺と同級生で、戦闘専門学校の生徒。戦闘専門学校と俺の通う武具鍛治専門学校では交流があり、それぞれで1人ずつのペアをランダムで組まされ、こっちで作った武具をペアの人に使ってもらう。この人が俺のペアである。そしてあの子にとても似ている。
咲「そろそろ咲って呼んで欲しいな。まあそれはいいけど」
相馬「何しに来たの?」
咲「私もお墓参り」
相馬「俺はもう終わったから帰るわ」
咲「そうなの、あとでまた新作の途中経過見せてね。」
相馬「いいよ。好きなタイミングで俺の作業室に来て。いつでも大丈夫だから」
咲「わかった。じゃあね」
相馬「うん」
俺はものづくりが大好きで1日の大半の時間を費やしている。俺の技術は入学以来最も優秀と言われている。それもそのはず。俺はもうたくさん失ってきたからだ。
―過去回想(約10年前)―
5歳の相馬「ぼ、ぼく、さ、さーちゃんのことがす、す、すきですっ。ぼくとけけ、け、けっこんしてくださいっ」
さーちゃん「わ、わわ、わたし」(もじもじして顔を赤らめている)
(サイレン)「緊急事態!緊急事態!施設内に敵兵が侵入した模様。直ちに部屋に入り鍵を閉め、身の安全を確保してください!」
どうやら侵入したのは敵軍のAI戦闘機で、無差別に人間を殺戮するようだ。施設内の幼児たちは大パニックになり、逃げ遅れた者は容赦なく首が跳ね、胴体が跳ね、この世から旅立っていく。
5歳の相馬「さーちゃん!こっち!」
さーちゃん「うん!」
相馬は自分の部屋が近かったため、さーちゃんを連れて部屋に隠れた。
5歳の相馬「これでだいじょうぶだよね?」
さーちゃん「ありがとう。そーまくん。」
と、安心したのも束の間、鍵を開ける音が聞こえた。
「きゃー!」(ブシュ)
そしてその声はピタリと止まった。何度も鍵を開ける音が聞こえ、その度に悲鳴が聞こえ、そしてピタリと止む。それを聞いた2人は顔が青ざめるように抱き合った。そして今までで1番近くで鍵が開いた音がした。
(ガラガラガラ)
2人「ひっ!」
AI戦闘機は自分の部屋に入っていき、2人に無慈悲に近づいた。完全に怯えて動けない俺を見たさーちゃんは俺を後ろに突き飛ばし、両手を広げ、庇うように歯を食いしばった。戦闘機は腕を振り上げさーちゃんに斬りかかる。刀はさーちゃんに致命傷を与える程度に斬り、同時に戦闘機は背後から男に真っ二つに切り落とされた。
施設護衛隊の人「くそ!間に合わなかったか!大丈夫か少年!」
5歳の相馬「さーちゃん!さーちゃん!」
さーちゃん「…ゲホッ、ゲホッ」
5歳の相馬「さーちゃん」
さーちゃん「そーまくん、わたし、も、そーまくんのことが、すき、だった。そーまくんとけっ、けっこんして、しあわせに、なりたかったなぁ」
5歳の相馬「さーちゃん!さーちゃん」
その後さーちゃんは病院に運ばれ、生き残った子供達はしばらくの間実家に帰ることとなった。それ以降さーちゃんとは会っていないがあの傷を治すのはおそらくどの医療機関でも無理であろう。
――
俺はあの子が今でも忘れられない。好きという初めての感情は簡単には失うことはできない。あんなことにはもう2度となりたくない。だから俺は戦う力を身に付けようとした。だが俺は身体能力以上のことはできなかった。そこから自分が強くなるには?俺はものづくりで自分自身を外部から強化することにした。
―数時間後―
(コンコン)
咲「入るよ。って、また没頭しちゃって。部屋も綺麗にしなさいよ」
相馬「うっせ。…これが新作の部分強化装置だよ」
咲「おー!すごいねこれ!どうやって使うの?」
2人は運動場に向かう
相馬「ここをこうして、ボタンを押せば…これで走ってみて」
咲は風になったかのように走り出した。
咲「おーおーおー!速すぎっ!わっ!」
いきなり足が遅くなり、緩急で咲は転んだ。
相馬「ボタンを押してから5秒くらいで効果が切れる。」
咲「先に言ってよ〜」
相馬「これを腕に設定すれば腕力が強くなるし、手にすれば握力が強くなる。最初は設定とか大変だと思うけど、使えば使うほど設定切り替えもスムーズにできると思うよ。」
咲「なるほど、今度の演習でも使ってみるね。ところでさっき別のもの作ってたみたいだけど何作ってたの?」
相馬「あれは分解して調べるだけだから」
咲「そうなの?気になるから教えてよ」
相馬「はぁ、しょうがないなあ」
渋々作業室に戻った。
相馬「これは過去に何度も、何人もの命を殺戮したAI戦闘機だ。今回はこれの技術を自身の知識として吸収する」
咲「これ知ってる。ニュースで何度も見るし、これは…」
咲は少し俯いた。過去に何か苦い思い出があったのだろう。だがその事情を俺は聞こうとはしなかった。
相馬「これは殺戮戦闘機だが、技術面から見てみるととても凄いものがある。俺はこれを分析し、より高い技術でものを作れるようになる。」
咲「おーいーじゃん!それの分析ができたら私の新しい武具も作ってくれると嬉しいな。」
相馬「ああ…そうだな。とりあえず今日は帰りな」
咲「うん。そうだね。これをもうちょっと触ってから帰ろうかな。じゃあまたね!」
相馬「またな」
咲は部屋を出ていった。
咲「…私も貴方みたいに強い人になれるかな」
咲はボタンを押し、凄まじい速度で運動場を駆け回り始めた。
相馬「やっぱりいつ見ても河原井さんはあの子に似てる」
俺は他人とは比較的関わることはないが唯一咲を特別視している。彼女は過去に好きだったあの子の面影があり、とても可愛い。…じゃなくて、ペアとして俺を選んだのだ。
先ほど説明した交流の制度として、二校間でペアをランダムで組むのだが、人を選ぶことができるケースがある。基本成績順で選ばれるのだが(細かい選定法は省略)成績上位の数名は選択の権利が与えられる。選択の際に一覧を用意され、顔写真、成績、生活態度など隅々まで情報を提供される。基本知り合い、成績上位者同士で選択するのだが、成績ドベクラスの俺は一度も関わりのない彼女から選ばれたのだ。技術は歴代を見てもトップクラスと言われているが、素行や出席回数など、他の要素で成績を大幅に下げられている。いわゆる問題児ってやつだ。
ペアは誰でもよかったのだが、まさか選ばれるとは思ってもなかった。初めて対面した時は本当に驚いた。
―過去回想(ペア選択時期)―
咲「貴方が高屋相馬くん…」
そこにいたのはあの時俺の前からいなくなったあの子…にそっくりな人であった。
咲「…ようやく、会えた」
相馬「俺のこと、知ってるのか?」
咲「私は貴方が好きな…いや、なんでもない。過去の話はあまりしたくないしされたくないよね」
まさか…と思ったが、よく見るとあの子とは少し違う気がする。好きだったあの子のことは鮮明に覚えている。見間違えることはない。
相馬「なぜ俺を選んだんだ?」
咲「…それは」
相馬「まあいいや、欲しいものがあったらなんでも行ってみろ。なんでも答えてやる」
咲「頼もしいね。河原井咲。これからよろしく。」
――
俺を選んだ理由は今でもわからないが、少なからずとも運命を感じてしまう。俺は自分の武具を見つめた。
相馬「もう2度と失いたくない。」
そのとき、地響きで建物全体が揺れた。
(ドーン)
相馬「な、なんだ!」
慌てて窓の外から運動場を見てみると、そこには校舎2階分程度の大きな戦闘機と咲が対峙していた。よくみると、咲はかなり傷ついていて、息を切らしていた。
相馬「咲!」
俺は1番の力作『ランドセル』を装着し、運動場へ走っていった。
―数分前―
咲は運動場で先ほどもらった武器になれるため、特訓している。
咲「こうして、ボタンを押せば…これで腕力が強くなると」
咲は空を切るようにパンチを繰り出した。すると衝撃波が正面50メートル先にある木をへし折った。
咲「攻撃にも使えるのか。凄いなこれ…ん?誰かいる」
運動場の隣、山の方から大きな音が聞こえてくる。
咲「…来る!」
その瞬間、大きな地響きと共に、咲の真下の部分の地面が盛り上がり、咲を攻撃した。
咲「なっ!下から!」
幸い、瞬時に足を部分強化していたため、ダメージはかすり傷程度で済んだ。空中に飛ばされた咲はしっかりと着地するために地面を探した。
???「コレデ、100ニンメ」
咲「えっ…」
突然真上から巨大なパンチが降ってきた。
咲「ぐぁ!」
クリーンヒットした咲は勢いで地面にめり込み、吐血する。
咲「…う、うぅ〜」
咲(何が起こったの!)
初めての経験が一度に起こり、考えが追いつかない咲。他の人からしたらそもそも生きてるのも驚くものである。咲は傷ついた体のまま起き上がろうとしている。
???「コロシテナイ、マダタチアガルカ」
咲「何、こ、こいつ」
咲が目にしたのは知ってるAI戦闘機の数倍も大きいものであった。しかも喋る。
咲「これ、か、勝てるの?」
絶望した咲。そこに追い打ちをかけるように先ほどと同じような巨大なパンチが降ってきた。
咲「何も、果たせなかった…ごめん(…冴ねえ)」
(ドーン!)
巨大戦闘機「カンショク、ナシ、ヨケタ」
???「大丈夫か、咲!」
咲「…そ、相馬!」
間一髪で咲を抱え込み、救出に成功した相馬。
相馬「武具もろくに持ってないのに戦えるわけないだろ」
相馬は優しくそう言った。
咲「貴方、戦えるの?」
相馬「さあ?でもあんたのペアなんだから勝手に死なれたら困る。」
相馬は着地し、ポケットからバッジを取り出し、後方地面に向かって投げつけた。緑のエリアが展開された。
相馬「さあ、この中に入って体を休めてくれ!しばらく俺が耐えるから」
咲「…うん、わかった」
咲は相馬を信じ、エリアに入る。
咲「何ここ、体が癒えてる気がする」
相馬「さてと、ここからは俺が相手だ!絶対に俺以外に被害は行かせない!」
巨大戦闘機「ダレガコヨウトオナジダ」
(ズン)
戦闘機は地面を強く踏んだ。
相馬「ランドセル、展開!」
『ランドセル』が変形し、まるでロケットランチャーを発射しそうな姿になった。
相馬「…そこか!発射!」
ロケットランチャーを一発、前方地面に向かって発射した。同時に二発戦闘機に向かって発射した。地面に当たると同時に爆発を起こす。
咲「相殺した!」
巨大戦闘機「フン!」
腕を振り回し、ロケットランチャーを一発はたき落とす。もう一発は軌道変更し、背後から命中する。
巨大戦闘機「グオォ」
巨体が揺らぐ。
相馬「今だ!」
相馬はポケットからバッジを取り出し、戦闘機の足元に投げつけた。すると、戦闘機を囲うようにキューブ状に展開される。戦闘機はキューブを殴るが、かなり頑丈で壊せない。
相馬「これでしばらく時間が稼げる。」
咲「す、凄い!」
相馬「あれも長くは持たない。手短に話す。俺には一撃技がない。決定打が欲しい。咲には一撃を与えて欲しい!」
咲「わかった。…でも、いつもの装備がないから上手くできるかな?」
相馬「大丈夫。咲なら出来る!」
咲「…!」
―10年前―
咲「わたしにできるかなぁ?」
冴姉「だいじょうぶ!さきちゃんならできるよ!」
――
咲「わかった。必ずやってみせる!」
相馬「よし。途中まで俺が守ってやる。一撃に集中しろ!いくぞ!」
咲「ええ!」
戦闘機はキューブを破壊する。咲は走りだし、相馬はロケットランチャーを残り全て発射させる。
咲「冴ねえ、私は必ずやってみせる!」
戦闘機はパンチを咲に向かって放つ。咲はジャンプでかわし、腕を踏み台に大ジャンプする。ロケットランチャーが次々と命中する。戦闘機は上空の咲に向かってパンチを放つ。最後のロケットランチャーがパンチを横から弾き飛ばし、戦闘機は大きく揺らぐ。
相馬「今だ!いけぇーー!」
咲「おぉー!」
咲は腕を部分強化させる。
咲「さっきのお返しだぁー!」
(ドガーン!)
咲のパンチが頭にクリーンヒットし、戦闘機を破壊。戦闘機はいくつもの破片となり、崩れ落ちる。
咲「はぁ、はぁ」
相馬「咲」
咲「そっ、相馬」
なんか少し期待する咲。
相馬「新しい武器、めっちゃ使いこなせてるじゃん!」
咲「そこ?…ふふっ、ありがと、相馬!」
咲「それよりもいつの間にか下の名前で呼んでくれるようになってんじゃん」
相馬「…!…まあ、なんだかんだ付き合いも長いし…」
咲「これからも咲って呼んでね!」
相馬「わかったよ」
咲「それよりもこれどうする?」
相馬「正直俺は持って帰って今後の糧にしたいとこだけど、流石に報告かな。」
咲「それなら少しくらい持ってっちゃおうよ!よいしょ、って重!あっ!」
後ろに倒れそうな咲を支える相馬。
相馬「無理すんなって。完治してないんだから。そろそろ部隊が来るから休んでて。あとは任せな」
咲「あ、ありがとう」
咲は落ち着いたように瞳を閉じ、体を休ませる。
相馬「頑張ったものが掴む…か。…おやすみ」
その後はだいぶ遅れてやってきた部隊に今回の一部始終を簡単に説明し、2人は病院へ運ばれる。細かい説明は完治してからするらしい。巨大な戦闘機は国の最高位の研究室に運ばれ、分析すると聞いた。いろいろ落ち着くまで学校は自粛期間に入る。とにかくゆっくりお休みする2人であった。
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