第4話『シーツの波間で』他1編

『シーツの波間で』

 隣で眠る女とは海で出会った。

 女の胸に耳を当てると微かに波の音が聞こえた。

 こうして一緒に眠ると、必ず海の夢を見る。

 堤防を越える波、浅瀬の国道、波間に浮かぶ滑り台の上から落ちていく夕日を眺めるふたり。

 女が海を、海が女を呼ぶのだろう。ベッドが漂いださないのが、不思議なくらいだ。

 寝返りをうった君の作り出したシーツの波が僕の手前でとまった。このまま僕をのみこんでしまえばいいのに。



『7日目の足』

 海で出会った女の子と暮らし始めて一週間が過ぎた。知り合った日に、ふたりで入った家の近くのコンビニで、今朝から彼女は働き始めた。

 日曜日で仕事が休みの僕は、部屋中の窓ガラスに青いフィルムを張ると、カーテンも買ってきたばかりの青いものに取り替えいく。

 僕が心配しないように隠してはいるが、彼女がホームシック気味なのには気がついていた。差し込む日差しに青く染まる部屋を見て、故郷の海みたいだと恋人が喜んでくれたら嬉しい。

 初めての仕事に疲れて彼女は帰ってくるだろう。戻ったら生後7日目の足にキスをしよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る