サンシャイン

醒疹

零(ゼロ)の世界線シースペイン・アイン編

第1話 始まり

「鼓動が聴こえる・・・」


パチリ、と何かが動いた。

名前も何もわかるとも表せなかった。

ピクピクとする。

これは何処で起きているのかも。

どこかで「音ですよ」と。


クウぅ――、おお、これは?


辺りは空気が鼓膜を突き抜ける。


それが言葉になるのはまだ。


なに?

それは流れだというのですね―――。


ドックン、

それがどのようにも捉えられなかった。

それを形容すると、「ああ、なんという事だ!」と伝えてくれる。

シメシメと音が流れてくるこれは何だ。

そこから流れてくるのは無上だった。


その軋みがトン、と流れてくる。


どうしてたくさんの線がドンドンと流れてくるのか。

それすら言葉という形で連なりこの上ない喜びだったのだ。


スウ――、

あなたが痛みと告げています。そこが「居場所なんだ」っていうんです。

音、居場所、痛み、何かが足り得ていない。そこへズーーッと刺さってくるのが伝わる。何かがが瞑ることを伝えてくれる。

ハア―――ァ・・・

「あなたは?」

はい、あなたなのです。ねぇ、よいでしょう?あなたは倒れていたのです。

ドッ、ドッ・・・ド――ット・・・何があったのか知らなかったその“恐れ”とは?

倒れていたそれは何だったそのなにかに「守られていた」のだろうか。

違うあなたが「たくさん休んでいた」と跳ねてきたのだ。


フワッ?それが“白い目”だとあなたから音にする。

そう、知らなかった。

だけどあなたからは眩き白のほうが映ってくる。

何と何が一緒になるとこうも映るのか、どうしてこうも心地よいのだろう?

トクン・・・「え!」そこで生きるために動けという。

何かが裂けようと動きはじめた。

「痛くてたまらない!」

何かがあなたを出そうとする。

ますます汗が滲む。


―――だめだ、あなたは起きたのに動けない。


「起きる」とは何かも分からない。少しでいい、休ませて・・・


ドン、いい、温かい・・・教えて、ください?

ド、トックン、トクン・・・・、ああ、なんと苦しい、これが汗!

それは“意志”なのです。さむい、ふるえる、そしてあたたかい・・・。

あなたへの“贈り”といいます。痛みを贈り続けるそれを何というのですか。


――シュルシュルシュル――、


何かが巻き付くその言葉さえ見つからなかった。

それは一体何を示すのかと起きてみた。教えてほしい、と音を出す。

するとようやく白の目をパチリと解き放つと、それは「赤い」ことを教えてくれた。それは「糸というのですよ」と答えた。


フオ――ォンッ――ピ、ピ―、ピリ――、


赤い糸が切れてゆく。

その切れ目から蒼くて見えないところが現れた。

そこへ光って丸くてキラキラした泡が流れてゆく。

これは何だろう、強くも当たるその勢いにまみれてゆく。


「あなたは誰?」



あなたとは“何か”を教えてくれそうだった。


教えてくれた音に“ありがとう”と伝えた。


これでようやく動ける。


パリ、ピッ―――、トン、トン・・・ドン


音だ、音が鳴る。


あなたを呼ぶ音が“うれしい”と伝えてくれる。動けば動くほどその音が響くので「たのしい」と波長にも似たそれが遂に、赤い糸の向こうを突き抜ける。えい、えい、やぁ―――ア・・・ドオンッ!


キリキリキリ・・・パシャアアァ―――・・・


「あ・・・あ、ゥ・・・あ!」


音が鳴るとまみれる何かが出ていった。


あなたが動けば何かに当たると出てゆくのだ。


そっと、あなたに当たるそれは何ですか?と聞いてみた。


それは“膜”だとあなたが教えてくれた。


そこは“円”だったことも伝えてくれた。


動くそれが目、腕、口、足だといい、あなたに包まれる事を“脳と体”なのだと見せてくれた。


そこで何故にあなたは“感じる”のかも知りたくなりました。


あなたは“わたし”という音をその耳に動かせてゆくのです。


それがわたしの“記憶”なのですよ、と教えてくれたのです。


では、またね。


        ◇


「ああ、痛いっ・・・ちぃ・・・」


名前は「ビグヴァル」だと思い出す。


それが何なのかを思い出せという“声”が脳へ突き刺さっていく。


痛くてたまらない。体は緩やかに痛みを感じるようにカタカタと揺れている。


ありがとう、「あなたはビグヴァル、わたしの子ですよ」という声よ。


わたしはその蒼いところへ向かうよ。


わたしはその冷たなところを温めてあげる、とあなたへ伝えたい。


ああ、するする、滑る。ドクン、これが最後の音なのですね。


体が浮いた、そして流れた・・・。

あ・・・あ、う、お、え、あ、声が漏れたそれが“自分”というのだそうだ。

膜から、わたしは落ちてゆく、蒼くも黒いそこに向かうから・・・。

ああ・・・なんと、つよい痛みなのだ。


これが・・・「糸」・・・なのか。


その赤い糸は蒼くも黒い空間を這ってゆく。

ええ、わたしから遠くあなたが離れてゆくのです。

同じ場所にいた筈なのに、糸よ、教えて。


とても遠い場所をも幾つ、幾つと別れてゆくキミ達は一体だれなの?


「シースペイン・アイン宇宙アミと呼んでください」


そうですか、わたしはビグヴァル。


よろしく・・・。


あの膜からピリピリする電磁が起きたのをその“身”に感じ取れた。

強い痛み、それが“超電磁爆発”だったことをアミは言ってくれた。

ビグヴァルが何も分からない底を創る、

それがわたしの使命なんだと誰かが言ったのです。


「アミよ、シースペイン・アインよ、キミはたった一つの“世界”なんだよ。そこの糸を見てごらん?まるで線のように伸びているではありませんか。それが宇宙線というのですよ?」


わたしの使命、宇宙にある泡を飛ばすこと。


その線を一本だけ手に取ってみよう。


すると線は「わたしは固くて細いでしょう」と言う。


その一手を泡に振り出すと泡が散ってしまって、沢山の粒となった。

知らなかったそれが“光”というものでした。

ええ、「それはもう生命という星の形を宿したのです」


―――誰かが答えた。


     意志


わたしの元に星が生まれた。


それも線を振って沢山の星々を創っていった。


ああ、とても楽しい・・・何とも“おもしろい”のだろぉ・・・う。


それを何かが教えてくれたのです。


「涙」と呼ぶのです。


蒼いそれが灯されたことを“理解”したのです。


「それは何?さぁ、言ってごらん?」


そう。


トン、トン、トン・・・トクンッ―――、


生命が踊り始めた。


それは暗い“闇”と呼ぶのです。


聞きました、

それは光なの、

闇なの、


と。


すると星々は答えた。


宇宙に浮かぶその一つの光を見てほしい、

それこそが太陽、

それこそが銀河だと次々と教えてくるのです。


わたし一つの手を煽ってみせた。


すると太陽が、

銀河が、

生命たちが渦を巻きはじめ、

そして一閃の光によって散っていった。

銀河はわたしの頭にクルクルと回ってゆくではないか。


「ビグヴァル、あなたに“友達”ができたのです、さぁ、来なさい」


シュウウゥ―――、


それは蒼き宇宙を歪めて飛んできた。


「やあ、君が創星主ビグヴァルなんだね、よろしく宇宙をすべる意志よ」


あなたは?

キミはだれ?

そこで何をするのだ?


私はニューファザー、


君が創ったブラックホールと呼ばれる創生の主だよ。


キイイ―――ドカアアア―――ン


それ、

あのようにして私はやって来たのだ。

あれ等の線を君が星なんか飛ばしている内にそれ諸共、

宇宙は爆発するのだ。


あの膜を打ち破ったのは君なのだよ。

白の目を3つ飛ばしたのだろう?


わたしが飛ばしたそれが超電磁爆発ビグヴァルと名付けたのはニューファザーだった。


「君は知っているかな―?別次元と呼ばれる場所を――、」


あの歪んだ穴がそうなのだよ、

君が起こした星を飛ばす、


スぺエリクス・ウェーバー、


宇宙に波を生んだ。

その波こそが波紋となって沢山、生命の形を変えてしまったのだよ。

形はそれぞれの意志を受け継いでゆくのだ。

その大いなる意志、ビグヴァルそのものを生んだのだ。


「わたし・・・私の体が体でなくなってゆくよ・・・どうして?」


当然だ、

あのような力場(エネルギー)を与えたのだから、

君の体など砕けてしまうのだよ。

散り散りになったそれこそが世界に揺らぐ線たち、


“世界線”と呼ぶ!


  世界線


君は知っているかな?

覚えていないだろう?

そう、分からなかったのだ。

君が目を覚ましたそこは膜であり、

“母”と呼ばれるものの“胎内(たいない)”だったのだ。


君はね、


前世で倒れていたんだよ。


『オーズ、お前はオーズ・ルクスだろう?』

『え?あなたは誰ですか?僕は・・・どうしてここに?』

『マーズ、お前はマーズ・アイシュだろう?』

『え?あなたは誰?私は一体、何を言っていたのでしょう・・・』


このようにね、

幾つもの世を潜り抜けてはイーシュル、ベーシス、ゴリューザいろいろと巡って来てね、君の意志だけが記憶されていたんだ。


それを世界線と呼ぶのかな?


その頭の中にある脳が線を張り巡らせていたんだよ。


呼ぶ声がしたのを思い出せたのだろう?

パチリと、開いただろう―――?


「私はビグヴァルに辿り着いた」


これまで幾つもの世を生き抜いていたのだね?

勿論覚えているよ。

それで忘れては思い出せば“涙”が出るのだ。

それは痛みというものだと誰かが教えてくれたのだが、

もう私一つしか居なかったのだよ。


「君は産まれたばかりの赤子だったのだよ」


私も生まれて間もなく、そこで出逢った。

それは天使とも名語(なかた)っていた。

それも“母”の揺り籠に揺られてやって来たのだ。

天使は私に伝えてきた。


「その意志を以って“父”になりなさい」とね。


さぁ、


温かくなってきたな。


君はこれから多くの“魂”を創らなくてはならなくなったのだからね。


「たましい?その魂はどこかへ向かうのかね?」


私は分からないまま、突然の意志と記憶に驚いているのだ。


とてもじゃないが私一つでは何も成し遂げられぬのだ。


教えてくれニューファザーよ。


私はこれからどのようにすればよいのだ?


ズドオオオォオオオ――――・・・


キュウアアァ――――・・・


「君の音、君の声、たった一つのその意志、“迷い”が赤い線を打ったのだ」


見てみるのだ。

その目が口となったことをその記憶から伝い、

その手を入れてみたまえよ。


抜けるのだ、

それが“黒の口”と天使は呼んでいた。

その“時”というものが白から黒へと向かってゆくのだ。


数えてみよ、

君たるビグヴァルの“霊体”を使って

この宇宙全ての空間を解いてみせるのだ。

幾度と目覚めては倒れて、

呼び覚まされたその光こそ“紀”の時を刻むのだろう?


       変容


「さぁ、これで白の目、黒の口が揃ったよ」


トクン、ドクン、トク――、トン―――ッ!


ああ、この踊る霊体をどうして捉えてゆこう。

このような“感覚”は初めてだ。

おお、なんという強さだ。

これほど私を更なる線の向こうへ紡ぎたてるとは。

教えてくれ黒の口よ、

もう6の時がやってきた。


トン、ドン――トクン―――、ドクン、ドン、トン、トッ―――!


「あまりにも早すぎるその流れ、シースペイン・アイン。その世界はようやく使命を終えてゆくのだ――あの温もりを思い出すのだ。君も温もりを与えるのだ」


恐れ、望み、贈り物、全て持ってゆこう。そして失ってみよう。

手を広げて宇宙を再び創るのだ。

そこに何もなくとも生み出せる力場を示せばよいのだろう?


―――無論だ。


ここには私と君だけではない生命が多く居るのだから、

世界線へと通してあげるよ。

楽しみだ、

如何なる形へと変わるのであろう。


なぁ、

君はどうだ?

君が打ち出したそれが生命の形を変えてゆくのを。


ビグヴァルよ、


答えるのだ。


楽しみでたまらないのだろうに?


ドオオオ――――ン・・・

キュオオオ―――・・・ォ・・・


ゴォ――ッ


「ニューファザー、君も時が迫っていたのだな」


霊体と霊体でないその体で変容を迎えると

意志と記憶に体とは、

如何なる形をも吸い込み、

世界線の数々によって貫かれてゆくのだろう?


そうなると私達は性別を持つ事にもなるのだろうか?


性別とは、何だろう?

そんな疑問を抱くニューファザーへ私は線を取ってみせた。

これは何なのか、と音なる声を交信しては、私が線だと答える。

それがどうなるのか、と聞かれると、

その線をこのように使えば分かると言った。


「私が“―”で君が“>”の線を掴むのだ」


「ほう、では性別を掴んでみせよう」


―どうだろう。

私はこの“闇”の線を掴んだ。

広がり続ける宇宙の世界にあるほんの小さな意思をこれから広げてゆく。


>成程、これならどちらが私と名乗っているのかが分かる。

すると君は闇で私は“光”なのだな。

これならあらゆる磁場を表し

地という平らな線をも創ることも出来る。


―この線はやがて生命線となり、世界線へと広がるだろう。

どこまでも強く赤い白の太陽の真ん中を

多くの星が磁力軸となった銀河として形成するのだろう。


>では、ビグヴァルよ。

その霊体から魂を宇宙の力場に放つとよい。


―成程、霊魂の力場バーンウォール!


ス――、


ヒュウウゥ――


キュッッ・・・!


――――ビグヴァルに、ニューファザーよ。


あなた達は、これから長い旅に出るのです。


きっと双方の線がやがて一つの形を象り、


数多なる生命へ意志を吹き込む事でしょう。


 ◇


ではね!

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