第6話 実戦:巨大トラブル戦(ミナ、覚醒の兆し)

「……なに、この音……」


ミナの声は震えていた。

ダンジョンの奥から、地鳴りのような振動が伝わってくる。


ユウトはというと――


「おお、なんかでかいの来たな。レアモンスターかな?」


なぜかワクワクしている。


(この人ほんとにFランクなの!?)


手汗を拭いているミナの横で、シロまで尻尾をふりふりして嬉しそうにしている。


“ドゴォォォン!!”


ついに正体が姿を現した。


■ 巨大岩甲ゴーレム、参上


「ご、ゴ、ゴ……ゴーレム!? しかもあんな巨大……!」


目の前に立ちはだかるのは岩甲ゴーレム。

通常サイズの三倍はある。

腕だけで家の外壁くらいの太さだ。


ミナは思わずユウトの背中に隠れた。


「ユウトさん、帰りましょう!? これ絶対やばい奴ですよね!?」


「いやぁ、大丈夫だろ。近づかなきゃ」


(この人の“大丈夫”は信用できない!!!)


ユウトは呑気に顎をさすっている。


■ ゴーレム、突然の雄叫び


“――グオオォォオオ!!!”


すさまじい咆哮が響き渡る。


ミナは耳をふさぎ、目をつぶった。


ユウトは――

なぜかその声に合わせて「あ、今の低音いいな」とか言っている。


(この人の感性どうなってるの!?)


■ ゴーレム、急接近


「ミナ、下がれ!」


「は、はいっ!」


ユウトに言われて跳び退いた瞬間――


“ドォォォン!!”


さっきまでミナが立っていた場所に、ゴーレムの巨大な拳が突き刺さった。


「あ、危な……」


「お、よけられたじゃん。すごいすごい」


「いや褒めてる場合じゃ――!」


でも確かに避けられた。

ユウトの特訓の成果だろうか。


(……もしかして、私ほんとに強くなってる?)


だが感慨に浸っている暇はなかった。


ゴーレムは続けざまに拳を振り上げ――


“ゴオォン!!”


「ミナ、右!」


ユウトの声に反応し、ミナの体が勝手に動いた。


――避けた。

――避けられている!


「あ、あれ!? 私、動けてる!?」


「やっぱ才能あるな。半日でここまで来るとは」


「半日!?」


■ ミナ、反撃(?)開始


だが、避けるだけでは終わらない。


ユウトはミナに木の棒を渡した。


「はい、叩いてみろ。軽くでいい」


「む、無理ですって!!」


「大丈夫。ゴーレム硬いし、ミナの攻撃なんて――」


「なんて?」


「……いや、ほら、いい練習になるって意味で」


ミナは涙目になりながら棒を構える。


「……うぅぅ……えいっ!!」


“コッ”


とても軽い音だった。


しかし――


ゴーレムの動きが止まる。


「……え?」


「お、ミナ。そこ急所だわ」


「急所!?」


ゴーレムの胸の奥で光るコア――

ミナの棒は、偶然にもそこに当たっていた。


ミナの顔色が変わる。


「や、やば……!」


ユウトは笑った。


「ミナ、今なら倒せるぞ。決めてみろ」


「む、無理無理無理!!」


「大丈夫。ほら、勇気を出せ」


そっと背中を押され――


ミナの身体はふわっと前へ飛び出した。


(ユウトさん!? 無理ですってばぁぁああ!!!)


■ ミナ、まさかの決着


ゴーレムが拳を振り上げる。

ミナは叫びながら棒を振り上げた。


「うわああああああああ!!」


“バチィィィッ!!”


コアに木の棒がヒット。


一瞬の静寂。


次の瞬間――


“ガガガガガガガ……!!”


ゴーレムの体がひび割れ、崩れていく。


ミナは尻もちをついた。


「……え?」


ユウトが近寄ってくる。


「おつかれ。よく頑張ったな」


「……倒した……私が……?」


「うん。ミナの勝ちだ」


ミナは信じられないという顔で、崩れたゴーレムを見つめた。


そして、じわりと涙が浮かぶ。


「……ほんとに、強く……なれてるんだ……」


ユウトは優しく笑い、

シロは嬉しそうにミナの膝の上で転がった。


■ そして事件はまだ終わってない


「さて、戻るか。今日はいい練習になったな」


「は、はい!」


ミナは少し誇らしげに立ち上がる。


その瞬間。


“ピコンッ”


どこからか、聞き覚えのない機械音が響いた。


ダンジョンの壁に、つい先ほどまではなかった「光る紋章」が浮かび上がる。


ユウトが目を細める。


「……あれ? なんか新しい道できてない?」


ミナは青ざめた。


(私の初勝利、即トラブルに繋がってません!?)


まさかの新エリア発生。

ミナの強化回は、まだ終わらなかった――。

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