100万年後の荒廃した地球。記憶を失い、人間ですらない存在となった少年アルテナが目覚めたのは、見渡す限り何もない砂漠だった。そして朽ち果てた聖堂で出会ったのが、同じく記憶を失った異星人の少女ノエマ。二人は不安定な二段ベッドを作り、古い缶詰を分け合いながら、小さな共同生活を始める。
この作品の魅力は、壮大なSF設定と心温まる日常描写の絶妙なバランスです。100万年後の地球、幻環という謎の天体現象、記憶の欠片が砂となって散らばる世界。そんな壮大な舞台設定がありながら、二人が「おやすみなさい」の言い方で笑い合ったり、シャワー室でのハプニングに赤面したりする日常の温かさが丁寧に描かれています。この対比が、荒廃した世界に確かな人間性を灯しているのです。
特に印象的なのは、アルテナが母エリナの遺したホログラムメッセージと再会する場面。失われていた記憶が涙とともに溢れ出し、ノエマがそっと寄り添う描写には胸を打たれます。「形に残るものは心を留める器になれる」という母の言葉が、この物語全体のテーマを象徴しています。
そして物語が進むにつれて明かされる謎の数々。記憶を改ざんした存在、密林で待ち受ける影、フィリムのツノが示す新たな方向。二人が取り戻す記憶の欠片は、やがて世界の真実へと繋がっていくのでしょうか。
「生きていてもいいと言われたことがないすべての人へ」という副題が示すように、この作品は生きる意味を問いかけながらも、誰かと共にいることの温かさを優しく描き出しています。SFと日常、冒険と感動が織りなす、先が気になる作品です。