終末の気配が満ちた砂漠、朽ちた聖堂、記憶を失った少年アルテナと異星の少女ノエマ。
まず導入の時点でとても惹き込まれるのですが、本作の魅力は、そこから始まる二人の時間が、ただ可愛いだけではなく、“喪失”と“希望”の両方を抱えて進んでいくところだと思います。
二段ベッド・改や「おやすみなさい」のやり取り、フィリムとの出会いには思わず頬がゆるむ愛らしさがある一方で、第7話で描かれるアルテナと母エリナの記憶はとても切実で、胸に深く残りました。
明るくて大雑把で、でも確かに息子を信じている“母ちゃん”の言葉が、アルテナの奥に眠っていたものを溶かしていく流れが本当に沁みます。
そして本作は龍の神殿、石盤、歪められた記憶、密林の異質さといった謎がしっかり先へ繋がっていき、ノエマの神秘性、アルテナのまっすぐさ、フィリムの愛らしさに惹かれながら読んでいるうちに、いつの間にか“この世界は一体何なのか”という大きな問いにも引き込まれてしまいます。
可愛らしさと切なさ、やさしさと不穏さ、そのどちらも丁寧に抱えた、とても続きの気になる作品です。
おすすめですよ。
人
それは孤独でいるにはとても切ない存在
もしも記憶のないもの同士が出会ったとき
なにが起こり得るのか
人が人であることの証明
それはきっと
人を想い寄り添う心のカタチが表してくれるもの
荒廃した大地で互いの温もりに触れる少年と少女がいた
記憶もなく寄る辺もなく
ただそこにいた二人の心が触れ合うとき
人が人であるという存在として意味を成す
日々の小さな心のカケラがかけがえのない絆を育んでいく
生きる意味の向こう側にたしかに息づく未来への希望
幼い心に宿る温もりと人であることの素晴らしさを感じて欲しい
失われた過去を超えて新たな生きる道を進む二人とともに
未来へと紡ぐ絆の物語をあなたも一緒に歩んでみませんか!!!
100万年後の荒廃した地球。記憶を失い、人間ですらない存在となった少年アルテナが目覚めたのは、見渡す限り何もない砂漠だった。そして朽ち果てた聖堂で出会ったのが、同じく記憶を失った異星人の少女ノエマ。二人は不安定な二段ベッドを作り、古い缶詰を分け合いながら、小さな共同生活を始める。
この作品の魅力は、壮大なSF設定と心温まる日常描写の絶妙なバランスです。100万年後の地球、幻環という謎の天体現象、記憶の欠片が砂となって散らばる世界。そんな壮大な舞台設定がありながら、二人が「おやすみなさい」の言い方で笑い合ったり、シャワー室でのハプニングに赤面したりする日常の温かさが丁寧に描かれています。この対比が、荒廃した世界に確かな人間性を灯しているのです。
特に印象的なのは、アルテナが母エリナの遺したホログラムメッセージと再会する場面。失われていた記憶が涙とともに溢れ出し、ノエマがそっと寄り添う描写には胸を打たれます。「形に残るものは心を留める器になれる」という母の言葉が、この物語全体のテーマを象徴しています。
そして物語が進むにつれて明かされる謎の数々。記憶を改ざんした存在、密林で待ち受ける影、フィリムのツノが示す新たな方向。二人が取り戻す記憶の欠片は、やがて世界の真実へと繋がっていくのでしょうか。
「生きていてもいいと言われたことがないすべての人へ」という副題が示すように、この作品は生きる意味を問いかけながらも、誰かと共にいることの温かさを優しく描き出しています。SFと日常、冒険と感動が織りなす、先が気になる作品です。