第29話 また逢えるよね

第29話 また逢えるよね

(We’ll Meet Again, Won’t We)


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 「ノエマ……その髪……」


 爆風に揺れるプラチナの髪。短くなってもその輝きは増すばかりか、もはや幻想的ですらある。


 ノエマの胸は煌々と紅い光を放っている。


 「アルテナ、わたし…………」


 「もう絶対、泣かないから。」


 アルテナは気付いていた。ノエマは遺跡で変わったんだと。しかし、自分がみつけたそれは、ノエマのほんの一部分でしかなかったことを知った。


 「ティース……こいつなんか、さっきと雰囲気ちがうんだけど……」


 「知るかよそんなことおおお!!!!もーわたくしが全員まとめてるからテメェは少し指咥えて黙って見とけ!!!!!!」


 ティースが細長い左腕をブンッと振る。すると黒色の激しい雷光が少女を真っ二つに引き裂こうと迫ってーーー


  『 ウンブリフェル 』(影を呼ぶ者よ)


 その時ーーー


 ノエマの翡翠の瞳には環が浮かび上がる。


 「え?」


 「うあああ---!!!!!!」


 [・・・・・・・・・・・・・]


 ノエマの詠唱にアルテナの体が反応を示した。

 次の瞬間ーー


 碧い光が少年の全身を包む。

ノエマは『 古い龍の言葉 』を続けた。


 『 オブスクルクス! 』(闇の輝きよ!)



 […………………………………]


 [なんだ……この……力は……]


 [ノエマが……やった……のか?]


 「しゃべってるひまないよ!アルテナ!」


 「わたしたちを守って!」

 「!!!」

 (偉大なる全知の龍よ!!!)



 [真なる観測者ノエマ]


 [我が古き友テネルクスに誓おう]


 [汝の希望のぞみ

   


 [承知した]


 アルテナを包んだ碧い光は輝きを増し、背に白銀色の翼が生えて来る。


 そして、重力がなくなったように体が突然宙に浮かび上がった。


 [うわあああ?!おれ……スキエンティア?アルテナ?だあー!もー空も飛んじゃってるし……]


 [ああ!!もうワケわかんねえことだらけだけど、……やってやるぜ!!!]


 龍の翼を与えられたアルテナは、白銀の両翼を大きく羽ばたいて爆風を起こし、ティースが放った黒い雷撃を相殺した。


 「っはあああーーー?!?」



 「フィリム……おいで。」


 「じゃあ、今から三人でたたかうよ。

お兄さんとお姉さん。」


 「……!?マジヤバイってティース!!!!」


 「いちいちいちいちいちいちいちいち」

「ああああ〜うざってーなー!!!!クソ共の寄せ集めの分際で!!」


 「フェイシー、テメェも少しは立場を

弁えろよ。」

「ノエマちゃん、それじゃあー準備はいいですかー?」



 「スキエンティア、アルテナ、フィリムいくよ」


 [おお!!ノエマこっちはいつでも良いぜ!]


 「フィーーー!!!」


 ノエマが二人の顔見て頷くと、翡翠色の瞳に浮かぶ環が強く輝いて。白紫光が三人を包んでいく。


 スキエンティア=アルテナの胸には『 影の環 』が浮かび上がり、フィリムはツノの光を最大限にした。


 「いくよ!!」

 [おお!!!]「フィイ!!!」


 「ヌビルス!!!!!!!!!」

  (朧月おぼろづき!!!!!!!!!)


 次の瞬間ーーー


 二人の否定者は光の渦に吸い込まれてーー


 「ぐああああああああ!!!!!!!!」

 「きゃああああああああ!!!!!!!」


ーーあっという間に、消えた。



 その後、ノエマは全ての力を使い果たしたようにふっと気を失い、地面に落ちる前にアルテナが抱きとめる。


 「……ノエマ!!大丈夫だ。もう、終わった。」


 そう言って、意識のない少女を抱きかかえたまま少年は、白目を剥いて地面に座り込んだ。


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  ………………


 「………………」


 「フィー……!」


 「……だっはあああ!!!」


 「……って、あれ?!」


 「フィリム?!ノエマは?」


 アルテナが生き返った後、元気がないフィリムの後についていくと、幻環の白紫光の明かりの下に、ノエマの後ろ姿が見えた。


 「ノエマーーー!おーーーい!」


ノエマがアルテナに振り返った時ーーー


 【 君が片手で押さえても、それでも夜の風になびくプラチナの髪は星の瞬きみたいで。】


 【 俺はお前がこのまま消えていなくなっちゃうんじゃないかって。不安に思ってたんだ。】


 【 その時、笑ってたの?逆光の中に立つ綺麗なその姿を、俺は今まで一日だって忘れた日はなかったよ。】


 【ノエマ……俺はずっと……ったんだから。】



 宵闇に浮かび上がる幻環の中心部。

そこに浮かぶ闇色の球体の形が歪む。


 次の瞬間。

 闇色の球体が弾けてーー


 一瞬でそこにいた二人と一匹を飲み込んだ。


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