特に決まってない「後日変更予定」
@saionzihuuka
第1話
世界は、静かに、しかし決定的にその様相を一変させた。その引き金となったのは、西暦20XX年、突如として日本海へと落下した巨大な隕石である。この未曽有の大災害は、単に甚大な物理的被害と大規模な津波を引き起こしただけでなく、世界全体に「魔力」と呼ばれる、科学の常識を超越した未知なるエネルギーを、空気中の塵のように微細に、しかし確実に拡散させた。そして同時多発的に、まるで世界の裏側、あるいは次元の裂け目と繋がったかのように、「ダンジョン」と呼ばれる特異な異空間へのゲートが、人目につく都市のど真ん中や、地図にも載らない人里離れた秘境など、地球上のありとあらゆる場所に突如として出現したのだ。突如として現れた脅威。
第一の惨劇
初期のダンジョンは、その特異な現象と、ゲートから発せられる神秘的な光ゆえに、当初は科学的な特異点、あるいは壮大なイリュージョンとして捉えられた。好奇心を抑えきれない一部の一般人、そして新種のエネルギー源や鉱物を狙う企業や研究者たちが、軽装で、軽い気持ちでこの「穴」への侵入を試みた。彼らは、既知の物理法則が通用しないこの空間の向こう側に、新たな富や冒険があるのではないかと、淡い期待を抱いたのだ。しかし、彼らがそこで遭遇したのは、ただの奇妙な空間や未発見の資源ではなかった。リザードマン、ゴブリン、オーガ、そして古の神話やファンタジーの世界にしか存在しなかったはずの獰猛で異形なモンスターたちが、生きた、そして恐るべき脅威として、現実に実在していたのだ。彼らは、人間が持つ通常の武器や知恵を嘲笑うかのような、強靭な肉体と異質な能力を有していた。何の準備も持たない無謀な侵入者たちは、モンスターたちの餌食となり、その多くが悲鳴を上げる間もなく命を落とし、二度と現実世界へ戻ることはなかった。最初の犠牲者たちの報告は、当初「集団ヒステリー」や「捏造」として片付けられようとしたが、次々と発見される遺体と、ゲートから漏れ出る異形の咆哮が、その真実を嫌というほど突きつけた。
事態は、人類がその脅威を理解しきる前に、さらに最悪の局面へと移行する。「ゲートブレイク」と呼ばれる大規模な現象が、世界各地で同時多発的に発生したのである。これは、ダンジョンと現実世界を隔てる、これまで堅固だと信じられていた境界(ゲート)が文字通り崩壊し、ダンジョン内部にひしめいていた大量のモンスターが、統制を失った濁流のように現実世界へと一挙に溢れ出す、絶望的なカタストロフだった。各国政府は、警察機構と、対テロ・対外戦争を想定していた軍隊(日本では自衛隊)を総動員して、この未曾有の事態に対応しようと試みた。しかし、強靭な肉体と、銃弾や砲撃を容易く無効化する、あるいは偏向させる異能を持つモンスターに対して、通常の火器や戦術は全くの無力だった。都市は瞬く間に蹂虙され、インフラは破壊され、多くの尊い命と、戦いの最前線に立った多くの兵士たちが、無力感の中で犠牲となった。人類文明の存亡が、文字通り秒読みの状態に陥ったのである。覚醒者、そして新たな秩序の誕生。世界が完全に崩壊の淵に立たされた、そんな絶望的な状況の中、奇跡とも呼べる、人類にとっての唯一の希望の光が現れた。突如として、隕石落下と共に拡散された魔力を生まれつき、あるいは極度のストレスや生命の危機をトリガーとして後天的に使いこなす「覚醒者」と呼ばれる特異な能力を持つ人間たちが出現し始めたのだ。彼らは、従来の物理法則や常識を覆す圧倒的な力と、魔力を駆使した火、氷、雷などの異能、または身体能力の超強化といった能力を発現させた。覚醒者たちは、組織的ではないながらも、溢れ出したモンスターの群れに対して果敢に立ち向かい、その規格外の力で猛威を振るう異形の脅威を一掃し、滅亡の危機から人類を辛うじて救い出した。彼らの存在は、人類にとっての救世主であると同時に、新たな社会秩序の礎となった。
この新たな脅威、ダンジョンとモンスター、そしてそれを凌駕する「力」を持つ覚醒者の出現は、各国にとって最優先で対応すべき、地球規模の喫緊の課題となった。覚醒者をどのように管理・統制し、その暴走や権力の乱用を防ぐのか。そして、ダンジョンという新たな資源(未知のエネルギー源、未確認の超硬質鉱物、魔物のドロップ品など)と、同時に存在する脅威を、国際的な枠組みの中でどう扱うのか。国会や国際会議では連日、激しい議論と、国家間の利権を巡る水面下の駆け引きが交わされた。簡単な結論が出るはずもなく、既存の国家権力側と、覚醒者側の代表団、そして国際法学者や人権団体も交えた、人権、国家安全保障、経済効果に関する幾度もの話し合いが重ねられた。
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