思い出のあなたと知らない君ともう一度恋をする
花月夜れん
1話・知らない君①
痛い、痛い、痛い。すごく痛いよ。
守れなくてごめんなさい。私が全部悪いんだ。神様お願いします。やり直したい。全部、全部――。
ふわりとした感覚がしたと思ったら急に落ちるような感覚が襲ってきた。
暗い空を見上げる。暗闇のすき間に大きな流れ星が見えた。もしかして私のお願いが神様に届いたのかな。
ねえ、………………。
◇◇◇◇◇◇
頭が痛い。そう思って手で頭を押さえた。ゆっくりと目を開ける。視界には白いカーテンと光、窓の外から聞こえる元気な生徒達の声。
あれ、生徒?
「あ、起きたか? 良かったな」
話しかけてきたのは知らない顔の男の子。でも学校の体操服を着ているから同じ学校の生徒だろうか。
「先生、目ぇ覚ましたみたいです」
「えっと……」
「あー、動くなよ。倒れたから頭を打ってるかもだぞ」
倒れた? 私が……?
ここは私が通う学校の保健室だ。どうしてここにいるのかわからない。私、家にいたはずでは? 思い出そうとすると頭が痛い。
「良かった。大丈夫そうね。なら、そろそろキミも戻りなさい。担任にも目を覚ましたこと、伝えておいてね」
服の上に白衣をまとった保健の先生が知らない男の子に指示をする。
「わかりました。じゃあな!
「あの……」
いったい誰なんだろう。見たことない男の子。何組の子なんだろう。でも、むこうは私を知ってる?
知らない男の子は足早に廊下を去っていく。
「少しだけこぶになってるね。もう少し冷やそうか」
「……はい」
枕に置いてあった凍った保冷剤を後頭部に当てられる。私、知ってる。これ前にもあった。でも……。
確か、寝坊して朝ごはんあまり食べられなかったから体育の授業中に目眩がして倒れてしまったんだ。そして、保健室で目が覚めた。その時、運んでくれたのは彼ではなくあの人だった。
私のせいで死んでしまった、同じクラスの男の子。
そう、この時に私を運んでくれて、それがきっかけで好きになって付き合ったんだ。
だけど、いまそばにいてくれたのは全然知らない男の子。どういう事なんだろう。
そこまで考えて、ハッとする。
「先生! 今日は何月何日ですか!?」
「え、今日は四月二十四日だけど? 大丈夫? もしかして混乱してる? 名前とかわかる?」
「大丈夫です。
「え、あ、これ持っていきなさい。あとでまた返しに来てね」
保冷剤を渡され、頭を下げて廊下に出る。
四月二十四日!? まさか、そんな――。
私はドキドキする気持ちを抑えながら静かに走った。
自分のクラスのドアを開ける。皆がこちらに視線を向けた。その中に一人、会いたかった人がいた。窓際の前から3番目の席に座る彼が――。
(勇太が生きてる――――)
私は溢れ出てきた涙を止めることが出来なかった。それと、お腹が空いていた事を思い出してしまったのかその場でへにゃりと座り込んでしまった。
(生きてる。生きてるよぉ)
きっと、神様にお願いが届いたんだ。勇太が生きている。絶対に死なせない。今度は私が守ってみせる。
みんなに心配されながら私は自分の机へと向かい、涙を拭いて鼻水をかんだ。
それをじっとあの知らない男の子が見ていた。
クラスにあの人はいなかったと思うんだけど。いったい誰なんだろう?
「大丈夫か?」
横の席にいる彼はそう言ってティッシュ袋を渡してくれた。
「ありがとう」
えっと、あなたは本当に誰……?
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