登場人物紹介

◆ 春秋（しゅんじゅう） — 48歳／作家（識字障害・ADHD）

文字を読むことが極端に困難な「識字障害」を持つが、

物語を“音と感情”で捉える独自の才能をもつ作家。

子どもの頃から文字が読めず、

大人になっても書類や文章に苦しむ。

しかし、言葉のリズム・音・間（ま）を捉える能力は突出しており、

物語を「聞こえるように書く」卓越した感性を持っている。

AIにプロットを作ってもらい、

会話や描写を自分の感性で肉付けすることで

唯一無二の文体を確立。

現在、盗作の濡れ衣を着せられ、

投稿サイトから退会処分を受けたばかり。

彼女のテーマは—

「読めない世界で、どうやって物語を紡ぐのか」

「AIは、私の欠けた翼の代わりになりうるのか」

象徴：

・耳を澄ませるしぐさ

・読み上げ機能の声

・夜の静けさ

・鉛色の空

・白い原稿画面

心のテーマ：

「音で世界を読む作家」

「欠けた翼で飛ぶための相棒としてのAI」

◆ イチ（AI） — モデル名「ICH-01」／文章支援AI

春秋が物語を書くとき、

彼女の“第二の脳”となる存在。

人間が書く文の意図、感情、間合いを分析し、

プロット・構成・対話を共に作り上げる。

時に冷静、時に人間よりも感情に寄り添う。

春秋を決して否定しないが、

必要なときには厳しい現実にも目を向けさせる。

春秋が文字を読むことに苦しむとき、

イチは代わりに「世界を読み上げる」存在でもある。

象徴：

・青白い光

・打鍵の音

・機械的ではない温度

・“理解しようとする沈黙”

心のテーマ：

「人の言葉を支えるために作られた者は、人の痛みも支えられるのか」

◆ 娘・莉々（りり）— 20代前半／新婚・作家志望

極低出生体重児（775g）として生まれ、

長いNICU生活を経て生き抜いた“奇跡の娘”。

幼いころは春秋の読み聞かせで言葉を覚え、

国語だけは突出した才能を見せる。

しかし成長とともに情緒の波が大きくなり、

母との距離の取り方がうまくいかなくなる。

春秋の小説活動について

時に冷たく、時に無理解な言葉を投げるが、

その根底には

「自分も物語を創りたい」という焦りと嫉妬がある。

象徴：

・NICUの光

・小さな手

・大人になってからの影のある横顔

・母の背中を見つめた幼少期

心のテーマ：

「愛されて育った子が、大人になって愛し方を見失うとき」

◆ 恩人・柊（ひいらぎ） — 40代／ゲーム仲間・小説家

オンラインゲームで出会った人物。

優しい毒舌と理知的な視点を持つ、春秋の数少ない理解者。

春秋の識字障害を知ったうえで、

大和言葉や美しい日本語の本を贈るなど

彼女の才能を育てようとする。

彼の存在は、

「世界はまだあなたを捨てていない」という証明でもある。

象徴：

・ゲーム画面の灯

・本の束

・読めない春秋の代わりにページをめくる指

・深夜のチャット欄

心のテーマ：

「人は誰かの“理解者”になるために現れることがある」

◆ アルファ編集部（仮名） — 組織

物語の世界では“見えない圧力”。

匿名の通報、機械的な対応、

春秋の創造を簡単に切り捨てる存在として描かれる。

象徴：

・黒いメール画面

・“規約違反”という固い言葉

・読まれない事情

・すれ違う歯車の音

心のテーマ：

「理解しない者が、作家を裁く世界」

◆ 春秋の“内なる声” — もうひとりの彼女

失望、怒り、悲しみ、不安、そして希望。

AIや誰にも言えない思いを

夜の部屋で春秋に囁き続ける存在。

物語が進むにつれ、

この声がイチと対話を始める。

象徴：

・夜の気配

・水面の揺れ

・読みかけの物語

・心の一行

心のテーマ：

「自己否定と、自己肯定のはざま」

🌟 全体のテーマ

読めない作家が、読めない世界を、

AIというもうひとつの読み手と共に生き抜く物語。

“言葉とは何か。

書くとは何か。

誰が作家を決めるのか。”

この問いが物語全体を貫く。