「二人の間で揺れ動く」という普遍的なテーマながら、本作の没入感は群を抜いています。主人公の煮え切れない心理描写の解像度、それぞれ異なる魅力と弱点を持つ二人の登場人物。その丁寧な筆致により、読者はどちらも選びきれない「ぐちゃぐちゃな葛藤」を擬似体験することになります。
私自身、三角関係というジャンルは読んでいて疲れるので苦手なのですが、本作には「どうせこちらと結ばれるだろう」という予定調和な導線が一切ありません。人間の狡さや業までもが容赦なく言語化されており、良い意味で「読んでいてめちゃくちゃ疲れる」一冊です。恋愛ものを敬遠している方にも、この人間ドラマを味わってほしいと思います。