第47話 若返ったお祖母ちゃん⑥

 すやすやと眠る明人を見たあと、里美絵津子はベッドをでて、ベランダに立った。

 夜風が冷たかった。

 里美絵津子の隣にはいつの間にか黒いスーツスカートを着た女が立っていた。

 夜風にポニーテールが揺れている。

「タイムオーバーなのかしら……」

 里美絵津子は細い目の女に訊いた。

「そうだね」

 黒いスーツの女はジャケットからタバコを取り出すと、口にくわえた。

 不思議なことに勝手に火がつく。

 細い目の女は紫煙をその薄い唇から吐き出した。

「ありがとう、細井瞳さん。心残りがないと言えば嘘になるけど十分楽しかったわ」

 里美絵津子は夜空と三日月を眺めながら言った。

「そうか、じゃあもう行こうか」

 細井瞳はそう言い、白い煙を吐く。

 その煙に二人は包まれる。

 煙が消えた後、ベランダから二人の姿は消えてしまった。

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