第7話 現代にダンジョンが!?
(まずまずといったところか)
今日は10月1日。ダンジョンが初めて地球に出現してから、ちょうど一ヶ月が経とうとしていた。
最初に動いたのは日本だった。
警察と政府が即座に手を組み、“探索免許” なる制度を作り、免許を持つ者しかダンジョンへ入れない仕組みを整えた。とはいえ三日ほどで取得できる簡易な免許で、15歳以上なら保護者同意のもと未成年でも取得可能だ。
同時に法改正も行われ、探索者のデータは国家が管理することになった。問題行動を起こせば免許は一発剥奪。ダンジョンへの立ち入りも禁止される。
少し厳しいようだが――探索者の成長速度を考えれば仕方ない措置だった。
レベル30にもなれば、人間の身体能力は常識を逸脱する。銃火器すら効かず、一般人は太刀打ちできない。
結果として政府は悩みに悩んだ末、“毒を以て毒を制す” を選んだ。
警察庁の精鋭たちを探索者に育て、ダンジョン内でレベルを上げさせたのだ。
国はダンジョンセンターと呼ばれる施設も設置。
エネルギー結晶、回復アイテム、武器、防具――すべての売買はここで行われるようになった。
中でもポーションは社会に激震を走らせた。
時間をかけて治すはずの傷が一瞬で回復する。
現代の医療技術では治すことが不可能な病気が治る。
医療関係は大混乱になったが、政府は「ポーションを他人に使うのは医療行為」と定義し、医師免許保持者しか使用できないように制限。医療の均衡はなんとか守られた。
エネルギー結晶が世界に流通し始めてから、環境汚染は目に見えて改善し始めた。
温暖化、環境破壊――もはや悪化する要素はない。
国会でも「地球をどこまで改善できるか」が議題に上がるようになった。
探索者にもランク制度が導入された。
Fはレベル15以下、Eは30以下、Dは45以下――と最初は15刻みだが、C以上は跳ね上がり、
C=65以下
B=100以下
A=150以下
S=151以上
と、一気に基準が変わる。
Aランクともなれば、二度の種族進化を終えている者がほとんど。
だがステータスや人数差、立ち回り次第で格上を倒すことは可能だ。
その “人間の欲” を刺激するため、全てのダンジョンの入口にはランキング石版が設置された。
世界中の探索者たちは名誉と欲望のために、ダンジョンへ潜っていく。
(1ヶ月で最強がレベル16か)
石版を見ながら慎一――すなわち地球の神となった俺は目を細めた。
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◆ランキング1位:光 一(ひかり はじめ)
レベル16
種族:人間
ステータス:
チカラ 74 / スバヤサ 69 / タイリョク 77 / カシコサ 65 / ウン 6
スキル:自己鑑定・身体強化(小)・武器強化(小)・反撃の一撃・モンスター鑑定
装備:鋼鉄のロングソード、鋼鉄のショートソード×2
備考:
光一は明るく、誰かを助けることを喜びとする “英雄”。
超人的な力を持ちながら謙虚で、誰にでも優しい。
妻の美咲、息子の大翔に支えられながらダンジョンへ挑む。
(運が6と高めか。レベル上昇幅も悪くない。だが――運頼みじゃない者でも、強力なスキルを手にすれば上位を狙える)
光一は三名の仲間とパーティを組んでいる。パーティ機能を使えば経験値を均等分配でき、安定した成長が見込める。
⸻
◆日本最強パーティ
■盾使い:鉄太郎(レベル14)
→ 元軍人、堅牢な盾役。妻・美和、息子・健太。
■ヒーラー:藤原美咲(レベル14)
→ 優しく献身的。花屋の母・さつき、妹・美緒を持つ。
■斥候:紫音(レベル13)
→ 敏捷特化の索敵役。冒険者の父、料理上手の母、元気な妹がいる。
日本最強と聞かれれば、誰もがこの四人の名を挙げるだろう。
⸻
◆Fランクダンジョン 最深部
――Fランクダンジョン4階層。
「待って。この先の角、小鬼が四体」
紫音が手で制止し、低く囁く。
小鬼――緑色の肌、子供ほどの体躯。だがその醜悪さは幼さとは無縁で、容赦する理由などない。
「了解。鉄太郎、前へ。挑発でヘイトを取ってくれ」
「任せろ。一匹も通さない」
「私は鉄太郎さんに他者強化を」
美咲の魔力が盾役の身体能力を底上げする。
「紫音、位置を取って狙える敵から仕留めて」
「了解」
やがて四体の小鬼がこちらへ気付き、突撃してきた。
「鑑定完了! 小鬼はレベル10前後、平均ステ50ほど。ただ一体だけレベル14、強い個体がいる! そいつは俺がやる。残り三体、任せられるか?」
「任せとけ!」
鉄太郎がスキル《鉄壁の守り》を発動し、三体の小鬼の突進を受け止める。
「ぐっ……三体同時は重いな……!」
最初に状況を変えたのは紫音だった。
鉄太郎が押さえる三体のうち、一体がわずかに体勢を崩した瞬間――。
「……今」
紫音は滑るように間合いへ入り、喉元を一閃。
小鬼は悲鳴を上げる間もなく絶命した。
「助かった! 二体なら抑えられる!」
次に、光一の前のレベル14小鬼が、仲間の死を察して一瞬だけ動きが乱れた。
「今だッ!」
隙を逃さず斬り込み、強敵を撃破する。
戦況は一気に4 vs 2へ。
美咲の強化が光一にも届き、数分後、残る小鬼も倒れた。
「ふぅ……思ったより手強かったな」
「だが大怪我もなし。俺はレベル15になったぞ」
「私も上がりました!」「同じく」
仲間たちのレベルアップに光一も笑みを浮かべた。
⸻
◆Fランクボス「大鬼」
5階層。巨大な扉の向こうにいたのは――
身長三メートルの緑肌の巨躯。棍棒を握り、ただならぬ威圧を放つ大鬼だった。
「鑑定完了! 大鬼、レベル16。平均ステ70! 別格だ、気をつけろ!」
鉄太郎が攻撃を受け、光一が火力を叩き込み、紫音が死角から刺す。
美咲が支援を絶やさず、鉄太郎は挑発でヘイトを固定する。
三十分の死闘の末、大鬼は崩れ落ちた。
――世界初、Fランクダンジョン攻略達成。
ダンジョンセンターに報告すると出待ちが溢れ、逃げるようにその場を離れた四人は――
「「「「あははははははははっ!」」」」
緊張が切れ、同時に笑い合った。
「俺はレベル17になった。それに新スキル《モンスター特攻(F)》を獲得した」
「俺もだ」「私も」「私も!」
Fランクモンスターへの特攻効果。完全攻略の報酬だろう。
そして光一は真剣な表情になり、三人に向き直った。
「……なぁ、次はEランクダンジョンに挑まないか? 家族や周りの人をもっと支えるためにも、俺はもっと強くなりたい」
「賛成だ」「そろそろ物足りなかった」「私も頑張ります!」
四人は迷わずうなずいた。
「よし、帰ったら許可申請を出す。準備は三日。四日後――10月5日にEランクへ潜る!」
彼らは日本最強と呼ばれるにふさわしい、確かな絆で結ばれていた。
――〇HK臨時ニュース――
『本日15時、日本最強パーティ“光 一チーム”がFランクダンジョンを完全攻略した模様です。政府関係者によると、今後はEランク攻略を視野に許可申請を進めるとのことです』
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■Twitter(X)
#ダンジョン初攻略
#光一また上がった
「光一さんレベ17はやばい。」
「盾の鉄太郎さんカッコよすぎる件」
「紫音の回避えぐい」
「美咲さんの支援スキル、欲しい」
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■◆匿名掲示板
【速報】光一またレベル上げてて草
【朗報】Fランク最速攻略、やっぱあの4人強すぎ
【悲報】俺、未だレベル5
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■◆海外ニュース
――C〇N――
“Japan clears the world’s first dungeon. International exploration teams begin forming.”
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■◆ダンジョンセンター公式声明
『Fランク完全攻略を受けて、本日より“クリアボーナスランキング”を公開します。世界で最初の勇者チームを称えます』
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