第5話 ダンジョン作り!?

(まずはコアだな)


俺は片手を前に出し、スキル〈物体創造〉を展開する。

このスキルは“完全イメージ再現”。

頭の中で細密に描ければそれはもう現実に出力される。


今回作り上げたのは──ダンジョンコア。


半透明の球体で、中心に“青白い心臓”のような光が脈打つ。

内部には高度AIを搭載。

外部干渉、突然の侵入、予期せぬ事態にも自律判断で対処できる。


(ここに……〈共有〉で追加スキルを渡す)


コアへ触れると青白い光が一瞬で濃くなる。


付与したのは〈生物創造〉。

ダンジョン独自のモンスターを自動生成し、倒した時に報酬を落とす仕組みを形成するための中核だ。



■モンスターテーマ性付与


「植物系・竜系・芸術系……テーマ別に分けるか」


テーマはダンジョンごとに個性になる。

植物系なら蔦の魔物や樹木の巨人。

竜系なら飛竜、地竜、黄金竜。

芸術系は、彫刻や絵画がそのまま生命となった“動く作品”。


テーマごとの“世界観統一”をコアに直書きした。



■ランク設定と階層


ダンジョンは7段階。


F / E / D / C / B / A / S


Fランクは初心者向け・5階層。

Sランクは世界最強規模・50階層以上。

階層が深いほどモンスターも知性も強さも跳ね上がる。


(このくらいの方が分かりやすくていい)



■ドロップアイテム


倒したモンスターが落とす報酬も整える。


・エネルギー結晶(地球の新エネルギー源)

・装備

・武器

・スキル媒体

・消費アイテム(回復薬等)


ランクが高ければ性能も跳ね上がる。

“遊び”として飽きない設計。



■経験値とレベルシステム


(レベルアップ制度は……人間の成長を後押しするためだ)


・モンスターを倒すと経験値獲得

・一定値でレベルアップ

・身体能力がランダムで1〜5上昇

 (力、素早さ、体力、賢さ、魔力、感知……運以外全部)


運は変動させない。

運まで上がるとランダム成長の意味が消える。


スキル獲得は以下の三本立て。


・スキル媒体を使用

・特定の行動で自然獲得

・レベルアップ時の“超低確率抽選”


(こういうのは思わぬ天才を生むんだよな)



■種族進化


レベル50ごとに開放。

本人が「YES」を選んだ時だけ発動。


例:

・人間 → ハイヒューマン(1段目は固定)

・そこからは素質次第で“適正種族”へ変化


魔法適正ならエルフ系。

肉体特化なら鬼人系。

芸術適正なら造形種。

異能思考なら異形種。


(レベルアップとは桁違いの成長幅だし、拒否できるのも重要だ)



■ダンジョン死亡ペナルティ


本当に死なせるのは論外なので、代わりに“精神的にちょっと痛い罰”を用意。


・装備没収

・スキル没取

・レベル没収


上記の三択がランダムで選ばれる。


(死なれると世界的に面倒だし、保険は必要だ)



■ダンジョンの配置計画


(ここをミスると世界が崩壊する)


人口密度に比例して配置。

その国の首都にはSランクダンジョンを必ず設置。

その他は人口分布に応じて合計100前後。


観光地や自然保護区域に置く場合は、被害が出ないように周囲の空間を“別次元化”する。


大枠はすべて決まった。


(ふぅ……さすがに疲れたな

 ダンジョン配置は……9月1日の配信で一気に発表するか)


俺はベッドに倒れ込み、数分で眠りに落ちた。











──9月1日 前夜──


都内、首相官邸。

徹夜続きで顔色の悪い官僚たちが、会議室の隅でコーヒーを啜っている。


若い官僚が首相へ声をかけた。


「総理……明日は自称神の言っていた“9月1日”です。

 本当にまた配信があるのでしょうか」


総理は書類から目を離さない。


「配信があろうがなかろうが、我々にできることは多くない。

 警察庁、消防庁、自衛隊……すべて連携し、民間人の暴走を抑えるだけだ」


「……了解しました」


官僚が退出し、部屋には静寂が戻る。


総理は深くため息をついた。


「明日の配信次第で、世界は本当に変わる……

 国が、文明が、何百年分も揺れる可能性がある……

 頼む……被害が民間に及びませんように……」


呟きは誰に届くこともなく、空気に溶けて消えた。

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