鉛筆くんと消しゴムくん

大玉寿

第1話 鉛筆くんと消しゴムくん


 鉛筆くんが書いて、消しゴムくんが消す。


 鉛筆くんは消しゴムくんがいるから、安心して字が書ける。


 消しゴムくんも、鉛筆くんを支えることを誇らしく思っている。


 そんな二人は最高のコンビだ。




「今日もいっぱい書いたけど、いっぱい間違えちゃった。消しゴムくん、いつもありがとう」


「いえいえ、それがボクの役目ですから。鉛筆くんが何度間違えても、僕がきれいに消すから安心してください」


「さて消しゴムくん、今日は終わりにしよう」


「そうですね鉛筆くん、帰って休みましょう」


 二人は筆箱に帰ることにした。


「消しゴムくん、僕は筆箱に帰る前にやることがあるんだ。先に帰って休んでてよ」


「わかりました鉛筆くん。でもボクは必要じゃないですか? 鉛筆くんが仕事をするなら、いつでも手伝いますよ。ボクたちは最高のコンビじゃないですか」


「ありがとう消しゴムくん。でも、これは僕一人の用事なんだ」


「そうですか、ならボクは先に筆箱で休んでますね」




 鉛筆くんは筆箱の隣の鉛筆削りくんのところへ行った。


「ようこそ鉛筆くん、今日も来たの? キミは毎日来るね」


「頭が丸いままじゃ働けないからね。明日のために、しっかりバッチリ尖らせてほしいんだ」


 鉛筆削りくんは、鉛筆くんの頭をシャシャっと削り、しっかりバッチリ尖らせた。


「今日もいっぱい書いたけど、これで明日もたくさん字が書ける。鉛筆削りくん、いつもありがとう」


「いやいや、それがオレの役目さ。鉛筆くんが何度丸くなっても、オレがしっかり尖らせてあげるから安心して」


「さて鉛筆削りくん、僕はそろそろ筆箱に帰るよ」


「お休み鉛筆くん。また来なよ」

 鉛筆くんは筆箱に帰った。




 今日は赤鉛筆くんと一緒に仕事。


「鉛筆くんは気楽でいいね。間違えても消しゴムくんに消してもらえるからさ」


「そうだね赤鉛筆くん。僕には消しゴムくんがいるからね、君の何十倍、何百倍も働けるよ」


 二人はライバルだけど、とても仲良しだ。



 今日は定規くんと一緒に仕事。


「鉛筆くん、線を引くとき、定規をあまり汚さないでね」


「ごめんよ定規くん。でも安心して。定規くんについた汚れも、消しゴムくんがきれいにしてくれるから」


「そうです定規くん、ボクがきれいにするから安心してください」


 定規くんも消しゴムくんがいて、安心して仕事ができる。



「さて消しゴムくん、今日の仕事は終わりだ」


「そうですね鉛筆くん、帰って休みましょう」


 二人は筆箱に帰ることにした。


 そしていつも通り、鉛筆くんは消しゴムくんと別れ、鉛筆削りくんのところへ向かった。




 しかしその日、なぜか消しゴムくんがついてきたのです。



「鉛筆くん、楽しそうですね。彼は誰ですか?」


「えっと、消しゴムくん、なんでここに来たの?」


「オレは鉛筆削り。キミは?」


「ボクは鉛筆くんの最高のコンビ、消しゴムです」


「最高のコンビ? そんなの違うね。字を間違えたら黒く塗りつぶせばいい。消すのは絶対に必要ってわけじゃない。

 だけどオレがいなきゃ、鉛筆くんは字が書けなくなる。絶対に必要なのはオレさ!」


 消しゴムくんは何も言い返せず、鉛筆くんに尋ねた。


「鉛筆くんも、そう思っているのですか?」


 鉛筆削りくんも同じように尋ねた。


「鉛筆くんはどっちの味方なんだ?」



 鉛筆くんは少し考えてから答えた。


「僕は消しゴムくんも鉛筆削りくんも、どちらも大切な仲間だよ。消しゴムくん、君がいなかったら、間違えた字を消せなくなってしまう。

 鉛筆削りくん、君がいなかったら、僕は丸くなって字が書けなくなってしまう。二人が一緒に仕事をすることはないけれど、二人とも僕には絶対に必要な存在なんだ。仲良くできないかな?」


 鉛筆くんの言葉に、二人は涙を流した。


「ごめん消しゴムくん、ひどいことを言って」


「こちらこそ鉛筆削りくん。僕たちは仲間ですね」


 消しゴムくんと鉛筆削りくんは仲直りした。


 鉛筆くんはホッとした。


「みんな仲良くしてくれて、僕はうれしいよ」


 鉛筆くんは思った。


 この二人がケンカしたら、僕は安心して働けなくなってしまう。

 大好きなノートちゃんに、カッコいい字を書いて見せること。

 それが一番大事なことなんだから。


「さあ、みんな仲良く頑張ろう!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る