カッコイイスキルくださいって言ったら通じなかった。~周囲から浮いてる少年の『囲いコミ』ライフ?~

うしさん@似非南国

第0話 異世界転生とか言われましても。

 なーんにもない空間で、俺はぼーっと漂っている。


 なんだこれ?

 確かさっき、季節外れの雪で滑ってか、脱線した列車がのしかかってきたような……


『そーさねー。

 君は死亡しました!

 でもここは天国でも、地獄でもない。


 君はあの世界で浮いてたろう?

 あれね、君が本来異世界の魂なせいでね!

 急遽ボクが回収を申し付かったんだけど、ちょっといろいろ間に合わなくってねえ!』


 神様なのか、その眷属なのか、とてつもなく軽い声だ。

 嫌な部分を突いてくるあたりが、それっぽくはあるんだけど。


 うん、周囲からも、家族からも。

 俺は常に浮いていた。馴染めて、いなかった。


 俺自身は、ごく普通の人間のつもりでいたし、基本的に第三者の目から見たときには、何の異常もないと判定されてもいた。


 だというのに、近しい、親しい仲になればなるほど、些細な違和感に苛まれるんだ。

 これは、俺自身にも感じられてはいたんだけど。

 つまり、双方向性の何かがあった、ってわけだな。


 困ったのは、その違和感の正体が、結局誰にも掴めなかったことだ。

 俺自身ですら、そうだったんだ。ほかの人なんて、言うまでもないだろう。


 ……そういえば、自分の名前が思い出せない。

 三十歳過ぎたサラリーマンだったことは、確かなんだが。


 周囲に馴染めないタイプだった俺の就職先は、いわゆる中小ブラック企業、って奴だった。

 アットホームな職場です!っていうアレな。


 俺はそこでも、しっかりきっちり浮いた。

 但し、その結果は、俺にとっては予想外のプラスに働いた。


 呑み会圧とか、喫煙ルーム圧とか、全部スルー。

 自分のできる範囲の仕事はきっちり期日内に仕上げてはいたから、まあこいつはほっといてもできるからいいか、ってなってたらしい。


 それでも突然ぶっこまれた余分な仕事や、先輩のやらかしの尻拭いを押し付けられたりしてたせいで、サビ残で午前様になることはしょっちゅうあって。


 そのせいで運転士しか乗ってない回送列車の転覆事故に巻き込まれた、らしいんだが。


『いやホントに、あの事故は君しか死なない結果になったからねえ!

 ちょっと無理したから、他にも巻き込んだらどうしようと思ってたんだけど』


 こいつの差し金かよ!

 運転士さんと路線管理者に迷惑かけてんじゃねえよ!

 復旧にどれくらいカネと時間がかかると思ってんの!!


『きみきみ、そういうトコもだよ、浮いてたの。

 自分が殺されたって思うより前に、会ったこともない他人の心配してんじゃないよ?

 あ、一応、これ以上の不運や不幸が連鎖して発生はしないよう調整しているよ!』


 できることに限度はあるけどねえ、と、謎の声は続ける。


 この太平洋側の地方で雪が降るのは、割とレアだ。

 それなのに、こいつはまだ秋で、ここいらじゃ絶対雪なんて降ったりしないレベルの気温の中、どうも数十センチ近い積雪をあの場所に齎したらしい。


 つまり、翌朝の交通機関は全部止まる。

 そのくらいの時間稼ぎ?はしているということらしい。


 雪自体も、本来の気温条件に晒されたら、あっという間に溶けるだろうという話だ。

 そうだな、俺が生まれてからは、秋とは名ばかりの高温期が続いていたからな。


『まあそんなわけで、君にはもともと所属していた方の世界に転生して貰うことになる。

 魔法もスキルもある世界って奴だね。

 ラノベとかの嗜みがあるなら、その辺も理解オーケーだと思うんだけど!』


 ラノベ?

 あー、ウェブ小説って奴?


 たまに、移動中の隙間時間を潰すのに、短いのを何本か読むくらいだから、転生ものってジャンルは知ってるけど、内容は殆ど知らんぞ?


 読書は嫌いじゃなかったけど、なにせブラック企業勤務だ。腰を据えて長編を読む時間なんて、なかった。


『……マ?条件説明、省略できるかと思ったのに!』


 そんなところで!手を抜くな!


 そんな気の抜けるやり取りの後、一応説明は受けた。



 俺が今度産まれる世界は、神も魔法も、スキルなんてもんも存在する、今まで生きてきた世界とは、世界そのものを構成する法則が多い世界だという。


『で、君は今現在残っている知識と記憶を持ち込む許可は出ている。

 それとは別に、スキルが一つ、付与可能。

 このスキルが基本的に魔法素養を決定するんだけど、内容はある程度指定可能だよ!』


 つまり、自分が決めることが……微妙にできない気配がしないでもないな?


「ゼロ歳児からリスタートってやつなんだろうし、どうせならカッコいいスキルがいいな」

 言葉が、するりと零れた。


 中二病?何とでも言え。

 目立たないのに浮いてるなんて面倒臭い人生を三十年から送ってきたんだ。


 どうせならリスタートは派手な方が良くないか?


『あー?かっ、こい、い……かこい、い……?』


 おい?さっきまですらすらと俺の心中を読んでいたのに、いざ希望を述べた途端に難聴ムーブ出すとかお前?!


『よし!希望は受け付けられたんで!んじゃレッツゴー転生!!』



 待てやゴルァ!!ヨシじゃないが?!


――――――――――――――――――――


というわけで新作は前作までとは一切関わりのないお他所の異世界です☆

なお難聴?の理由:そこだけ音声だったので聞き取りエラー。仕様。

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