君に触《ふ》れられなくても。

三愛紫月

未来を変えるには? 1話

「私なら、未来を見せられます」

「はいはい」

「いい加減な占いだとお思いなら帰っていただいて結構ですよ」

「すみません、すみません。やります、やります。だってね、俺達。付き合って12年ですよ。同棲したかったけどしなかったのは、ほら結婚を意識したくなかったってお互いに話し合ってね。だからって、39歳になっちゃうなんてなーーって笑って。それで、結婚しようって、ほら、従姉妹の結婚式に参列して」

「いい加減黙っていただけますか」

「すみません……ヒック」



 付き合って12年経った彼女と結婚したのは、1ヶ月前の出来事だった。

 申請していた有給がとおり、ようやく新婚旅行に行ける。

 南の島にある離島がいいなんて彼女が言うもんだから。

 明日から、4泊5日で離島巡りだ。


 まあ、絶好調なのはわかっている。

 これから幸せしかないのもわかっている。

 だけど、何となく。

 さっき一緒に飲んでいた後輩が。


「滅多に会えない占い師がいるらしいですよ」と教えてくれたのだ。


 場所は、家の帰り道で。

  2つに別れる分かれ道のちょうど真ん中。

 怪しい紫色のベールを纏っているらしく。

 出会えたらラッキーなんだとか。


 後輩の友人は、20年も子宝に恵まれなかったけれど。

 未来が見えるという占い師のアドバイスを参考にしたら、僅か3ヶ月で出来たと言う。

 そんな話を聞いて、見つけちゃったわけだから。

 これは、運命なわけで。


 それで、今。

 占ってもらってるわけです。

 まあ、心配しなくても。

 俺達は、ハッピーエンドなわけですけど。


「見えました」

「ああ、見えましたか、見えましたか」


 めちゃくちゃ幸せで。

 子供に恵まれて、庭付き一戸建てに住んでるでしょう。



「3年後、あなたは彼女を殺します」


……えっ?

…………えーーーー!!!!




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