【短編】空想恋愛譚
@dakkuchan
空想恋愛譚
弟の遺品を整理していたら、十冊程のノートが出てきた。
私は全寮制の学校に通っていたので、夏休みなどの長い休みにしか実家には帰れなかったけれど、ある日突然親から連絡が入り、弟の訃報を知った。
事故、だったそうだ。
駅のホームでバランスを崩し、転落。
特急電車が通過し、即死だった。
弟と言ったが血は繋がってはいない。
私が幼少期の頃、母が亡くなり、中学校入学の頃に父親が再婚した。
新しい母親には慣れるまで苦労したが、その母親と一緒に家族になったのが亡くなった弟である。
3年間実家で一緒に暮らしていたが、弟はとにかく無口であった。
感情も表に出さず、姉弟喧嘩などした覚えもない。
本を読むのが好きな子で、1度一緒に本屋に買い物に行った時があったが、その時は嬉しそうに買った本を腕に抱えて喜んでいた。
この子も表情を表に出すこともあるんだな、と妙に嬉しくなったのが懐かしい。
私はノートの束を取ると、パラパラとめくりながら中身を見た。
どうやら小説のように見えるが、弟が書いたものだろうか?
ノートの束の中に1冊だけ背表紙の色が違ったものがあり、私はそのノートの中身を確認すると
「これは、日記?」
最初のページには今から半年程前の日付が書かれており、めくっていくとどうやらノートの半分ほどまでびっしりと書き込まれているようだ。
読んで良いものかと思ったが、血の繋がりは無いとはいえ弟は私の家族なのだ。
弟が何を考え生きてきたのか、知る権利は私にもあるし、読み終わったら父と母にも見てもらおうと思う。
特に母は弟の死をきっかけに体調を崩し始め、先週から入院していた。
父は仕事が忙しいようだが、帰りには欠かさず母が入院している病院へ行き看病しているようだ。
私は冬休みの間は出来るだけ家の事を手伝おうと思い、洗濯、掃除はもちろんのこと、帰宅する父のために家事もした。
「料理は、これで良し⋯っと」
手早く食事を済ませ、父の分の食事を冷蔵庫にしまい、2階へ上がる。
「おっとっと⋯忘れないうちに」
途中弟の部屋に寄り、先程見つけたノートを抱え部屋に戻った。
ベッドに座り、暖房のスイッチを入れる。
先にお風呂に入ろうかと思ったけれど、後回しにして私は弟の日記を読み始めた。
6月7日 晴れ
今日から日記を書いていくぞ!
それと同時に今まで書こうと思っていた小説を書こうと思う!
「あの子、こんな文章書くんだ」
以外だった。
普段物静かだった弟がこんな文章を書くんだな、と思った。
「じゃあこっちのノートの束が」
どうやらその小説だろう。
ノートの表紙には小説のタイトルと横に数字が書かれている。
「1、2、3、4⋯」
数えると数字が10で止まり、小説はノート10冊分ということになる。
1と書かれているノートを手に取り、私は弟が書いた小説を読み始めた。
内容は、冴えないおじさんが不思議な少女と出会う所から始まっていた。
おじさんは不思議な力を持つ少女と出会い、少女の力を借りて今までの人生をやり直す決意をする。
少女は手始めに、おじさんの最初の願いを叶えた。
1冊目の内容はまとめるとこのような感じだった。
私は小説の続きを読む前に、日記へと戻った。
日記の内容は短いものもあれば長いものもあるが、毎日書き続けていこうと言う意思を感じた。
次のページをめくった途端
「え⋯?」
私は目を見開いた。
そこには一言だけ、こう書かれていた。
9月10日 雨
死にたい
心臓がドクン、と締め付けれるような感覚だった。
それまでの日記の内容は、夏休みに図書館に行き本を借りてきた、とか、小説を書いていて楽しい、など日常的なことばかり書いてあったのだが。
弟に一体何があったのだろうか。
焦る気持ちを他所に、私はゆっくり次のページをめくった。
9月15日 曇り
あの転入生をどう相手した方が良いのか分からない⋯
転入してきてから不良グループと仲良くなってたけど
どうして僕を標的にするんだろう?
僕が何をしたっていうの?
分からない⋯分からない⋯
胸が苦しくなるのを何とか堪え、私は考えてみた。
死にたいという言葉は転入生にイジメられたから、なのだろう。
ただ、父と母からそんな話は聞いたこともなかった。
駅のホームから転落と言うのも、実は自殺だったのでは⋯と不安に感じてしまう。
私は日記の続きを読むと
9月20日 晴れ
夢の中に藍が出てきた!
思ってた通り僕の想像した通りの可愛い女の子だった!
夢を見たあともハッキリと覚えてる
書かなくちゃ
もっともっと書かなくちゃ
「藍って誰のこと?」
疑問に思うもすぐに思い出す。
弟の書いていた小説の中の登場人物だ。
謎の少女、名前は藍。
不思議な力を持つ彼女は、主人公の都合のいい願いさえ叶えてしまう。
弟が想像した女の子とはどのような子なのか。
私は小説の続きが気になった。
中学生の頃に読んでいた漫画のキャラクターに恋したこともあったが、弟も似たような気持ちだったのだろうか。
壁に掛かっている時計を見ると、まだ時刻は21時前。
ノート1冊読み終えるのに20分程度だったので、日付が変わる前には読み終えるだろう。
私は小説の2冊目を手に取り、まだ見てなかったタイトルを読み上げる。
「くうそうれんあいたん?」
空想恋愛譚。
弟はどう言う意味を込めてこのタイトルを付けたのか。
「続きを読めば、分かるのかな」
私は2冊目を読み始めた。
登場人物の藍と言う少女は不思議な子だった。
強い力を持ち、不老不死の肉体を与えられていて、朽ち果てることはない。
ただそんな藍にも自分では叶えられない望みがあるらしい。
2冊目はそこで終わっていた。
何でも出来るのに自分ではできないこと、それは何なんだろうと思う。
世界の理さえも変えてしまう夢のような魔法を自由に使え、魔法のランプから出てくる魔人のように、自分には魔法は使えない、と言う制約すらない。
「その望みってなんなのかな?」
もし弟が目の前にいたら答えてくれただろうか?
その答えが見つかるかも知れない、と私は再び弟の日記を読み始めた。
9月15日以降の日記にはイジメられたと言う内容は書かれてなかった。
ただ、日記には少女との話が多く綴られている。
図書館に行く途中に藍を見かけた
今日図書館で初めて藍に声をかけてみた
初めて藍が家に遊びに来た
今日は藍と一緒に図書館に本を借りに行った
藍が家に泊まりに来る。
今朝、話を父さんと母さんに話したら2人とも上機嫌だった。
母さんは美味しい料理を作ってくれるって張り切ってたし、父さんは帰りにケーキを買ってきてくれるって約束してくれた。
ただ母さんから、
藍が寝る時はお姉ちゃんの部屋を使ってもらいなさいって
その瞬間、私は背筋が凍るのを感じた。
「⋯何を、言っているの⋯?」
藍が、私の部屋に泊まる?
ありえない、ありえるはずもない。
藍という少女は弟が考えた小説の中の架空の人物だ。
弟は精神を病んでいたのだろうか。
イジメに合い、精神が蝕まれ、小説と言うなの架空の世界に逃げ込んだ。
そう考えると辻褄が合う。
日記の内容も弟が妄想した出来事を書いていただけ、なのかも知れない。
「すぅー⋯」
1度深呼吸をし、気持ちを落ち着かせる。
喉が乾いている事に気付き、キッチンへ向かった。
リビングの電気を付け、ケトルに水を入れお湯を沸かす。
冷蔵庫の中を確認すると、まだ手付かずの料理がタッパーに収められている。
そろそろ父が帰って来てもいい時間だが。
お湯が沸く前に棚から紅茶のティーパックと自分専用のマグカップを取り出そうとした時だった。
「可愛いマグカップ⋯お母さんのかな?」
棚の中に猫が描かれたマグカップが置いてあった。
私は猫が大好きで、幼い頃に父に猫を飼いたいとお願いした。
ただ、父がアレルギーを持っており、泣く泣く諦めたのだが。
ティーパックをマグカップにセットし、お湯を入れて部屋に戻った。
ついでに見つけたクッキーの缶もこっそりと持って来たのだが、勝手に食べても怒られはしまい。
高級そうな缶に入ったクッキーを1枚かじると
「⋯美味しい!」
紅茶とも合い、気分が落ち着く。
「お父さんが買ってきてくれてたのかな?」
父はあまり甘いものを食べないのだが、私が休みに帰ってくると分かっていたので用意してくれていたのかも知れない。
糖分を摂取し、今一度頭の中を整理することにした。
弟が仮に精神を病んでいたら、父と母はそれに気付かなかったのか?
イジメの件もそうだが、感情を普段出さない弟なら、父と母にも気付かれずに隠し通せたのかも。
ただ、それでは弟があまりにも可哀想ではないか。
学校の寮で暮らす私には、クラスメイトとも友達とも仲が良いし、イジメとは無縁だった。
休みの時に家に帰っても、弟はいつも部屋にいたし、私はそんな弟に今思えばあまり関心がなかったのかも知れない。
弟の死をきっかけに
「私が弟のことを少しでも知りたいと言う気持ちは、虫のいい話なのかな⋯」
私はそれから小説の続きを一心不乱に読んだ。
何をやってもダメなおじさんを、藍が甲斐甲斐しく世話を焼く。
紆余曲折ありながらも、時にはおじさんの願いを叶え、おじさんを支える藍。
気付けばノートは最後の1冊になった。
私は弟が空想した世界にのめり込んでいた。
字は時折読めない部分もあったりしたが、弟の一生懸命さが伝わってくる。
イジメに合いながらも、精神を病んでいても、この作品は弟が生きていた証なのだ。
少し感傷的になってしまったが私は
空想恋愛譚 10
と書かれた、弟の世界を読み始めた。
ラストのシーンは、おじさんが今までお世話になったお返しとして、アルバイトで稼いだお金で藍にプレゼントをした。
藍は一瞬驚いた顔を見せるも、喜んでそのプレゼントを受け取る。
「開けてもいい?」
「あぁ⋯」
藍は丁寧に包装された紙をめくり、箱を開けるとそこには
猫が描かれたマグカップが入っていった。
藍はおじさんにお礼を言うと、おじさんは照れくさそうに
「あとひとつプレゼントがあるんだ」
「なぁに?」
「できることは少ないかも知れない、ただ今度は俺が君の願いをひとつ叶えたいんだ」
「私の、願い?」
「君は前に言っただろう?君自身の力を持ってしても叶えられない願いがあるんだって。
俺が手伝えば叶えられる、って」
「でも、それは⋯」
「こんな俺でも君の役に立てるなら、俺はそれを叶えたいんだ。だって」
「だって?」
「君のことが好きだからだ」
おじさんの告白に、先程とは違った驚きを見せる藍。
顔を赤らめて恥じらいの表情を見せると、
「嬉しい、ありがとう、おじさん」
物語の世界に入り込み、気付いたら私は涙を流していた。
昔から少女漫画を読んでいた私にとって、恋愛物の作品は好きだ。
読み始めた時、おじさんと少女の組み合わせってどうなんだろうとは思ったのだが。
ストーリーも良かったが、これを書いたのが弟だと思うと、涙に拍車がかかった。
日記の方は私が保管して、小説だけ父と母に見せよう。
こんな素晴らしい作品を弟が作ったんだって。
きっと父も母も喜ぶと思う。
日記は今の母に見せたら、病状が更に悪化しそうなので、頃合を考えようと思う。
「心が落ち着いたら、日記の続きを見るからね」
私は、もう会えない弟にそう答えた。
ベットの上に散らばったノートを片付けようとした時
「あれ?」
ノートが1、2、3、4⋯
計12冊
「数え間違えてたかな?」
ノートを1から10まで順番に重ね、日記をその上に置く。
最後の1冊を手に取るとそこには
空想恋愛譚 エピローグ
と書かれていた。
「後日談?」
確かにおじさんが藍に告白し、ふたりが結ばれたように思えたが、藍の願いが書かれていなかった。
このエピローグは、藍の願いを叶えるおじさんのお話なのかとそう思い、私はハッピーエンドを見届けるため、ノートのページをゆっくりとめくった。
「目を開けていいよ、おじさん」
俺はゆっくり目を開けると、そこはどこかの学校の屋上だった。
「ねぇ、おじさん。こっちに来て?」
藍に手を引かれ、俺は屋上の縁まで歩く。
「ここに立って」
藍は俺の手を掴み、1段上に引き上げると
「綺麗だよね、街の灯りが星みたい」
「そうだな、で?」
「うん?」
「君の願いは俺と一緒にこの景色を見ることだったのか?」
ふるふる、と藍は首を振った。
「そうじゃないの、ただ」
「ただ?」
「おじさんと最後に、この夜景を見たかったから」
そう言うと藍は俯いた。
「最後ってどういうことだ?君の願いと関係あるのか?」
「私ね、この世界じゃない、違う世界に行きたかったの」
「それはどう言う⋯」
意味だ?と言いかけたが、最後まで話を聞こうと思い、藍が語る言葉の続きを待った。
「私ね、永遠の時を生きてきた。
魔法は使えるけど不老不死で死ねないし、これから先、ずっとひとりで生きていくんだって。
この世界から別の世界の私になりたいって、ずっと思ってたんだ。
普通の女の子として、歳を取って、結婚して、子供が出来て、家族一緒に暮らして、お婆さんになって、家族に見守られながら息を引き取って、そんな人生を歩みたいの」
「俺と一緒じゃ、その願いは叶えられないのか?この世界で!」
「おじさんは私より先に死んじゃう。少しの間は一緒に生きられたとしても、私、また独りぼっちになっちゃう」
藍の気持ちはよく分かった。
分かったから余計に愛おしくなった。
「俺は君のことが好きだ」
「知ってるよ、前にも聞いた」
「愛してる」
「⋯⋯⋯」
「じゃあ、改めて、聞くけど、本当に、私の、望みを、叶えて、くれる?」
俺は
「あぁ⋯!もちろ」
トンッ
だ!
目の前の少女が俺の体を軽く押した。
足が地面から離れ、浮遊感が身体を覆う。
思考が追いついたのは、落下していく数秒間の事だった。
俺は藍に突き落とされたのだ、と。
ドサッ
意識が遠のく中、屋上にいる少女は俺を見下ろしていた。
「ありがとう、大好きだったよ、おじさん」
もう聞こえないはずの少女の声が、俺には聞こえた気がした。
訳が分からなかった。
汗がどっと吹き出し、まるで今読んだストーリーの出来事を傍で見ていた感覚に陥った。
体が震えだし、ガチガチ⋯と歯を鳴らす。
本当にこれが弟が書きたかった作品なのだろうか?
藍の願いは、別の世界に行くこと。
人を殺める事がなんの意味を成すのか。
最後のシーンが理解できない。
「⋯どういう⋯ことなの」
理解が追いつかない。
いや、これは弟が書いた作品と言うだけであって、フィクションなのだ。
そう理解しているハズなのに、何か得体の知れない不安に掻き立てられる。
日記⋯
そうだ、日記を見ればこの不安を解消出来るかも知れない。
アドバイスありがとう。
???
私は誰にお礼を言ったのだろうか?
そんなことより日記を読まなくちゃ。
10月29日 晴れ
藍が家に遊びに来た。
泊まらせてもらったからそのお礼ということで、高そうな箱に入ったお菓子を持ってきてくれた!
別にお礼なんてわざわざいらないのに。
だって藍はずっとうちで暮らしてるのに。
10月31日晴れ
お菓子のお礼に今度は僕が藍にプレゼントを送った!
急にどうしたの?って驚いてたけど、喜んでくれて僕も嬉しかった。
藍は猫が好きみたい。
そういえばお姉ちゃんも猫が好きだったっけ。
藍とお姉ちゃん、ふたりが会ったら気が合うかも。
でもお姉ちゃんの部屋は藍の部屋だから、お姉ちゃんは帰ってきたらどこで寝るんだろう?
11月1日 曇り
藍にお姉ちゃんの話をしたらすごく楽しそうに話を聞いてくれた。
休みの時にしか家に帰って来ないけど、僕はお姉ちゃんが好きだ。
その事を藍に話したら藍は顔を曇らせてた。
なんでだろう?
それから藍は僕にお姉ちゃんのことを色々聞いてきた。
なんでそんなにお姉ちゃんのことを聞くのって聞いたら、藍は君のお姉ちゃんになるんだもん!って珍しく怒ってた。
なんでそんなに怒るんだろう?
だって藍は僕のお姉ちゃんなのに。
目眩がする。
暖房をつけてるのになんでこんなにも寒いんだろう。
頭痛が止まらない。
初めて読むはずなのに、弟と会話をした記憶が頭の中に流れ込んでくる。
私は休みの時にしか家に帰らないのに。
こんな記憶、知らないハズなのに。
プレゼントのマグカップ、嬉しかった。
私と一緒にいるのに、なんで他の女の子の話をするの?
「違う!!そんなの、私⋯知らない!」
また知らない記憶が、頭の中に入ってくる。
駅のホームは帰宅ラッシュの時間帯で人がかなり多かった。
その中でも、目的の人物は一目で分かった。
見間違うハズがない。
だって、家族なんだから。
私は人混みを掻き分けながら進み、彼の後ろに立つ。
彼は本を読んでいるようで、私が後ろにいることに気付いていない。
私は時計を確認し、その時を待った。
トンッ
ズドンッ
目の前の彼が視界から消える。
ホームから悲鳴やざわめきが聞こえるが、私には関係ないことだ。
近くにいた駅員が、彼を助けようとするも間に合わない。
あぁ⋯これで⋯やっと
「願いが叶った」
私は冷めた紅茶が入ったマグカップを手に取り、リビングへと向かった。
階段を降りると、ちょうど父が帰宅した。
「おかえりなさい、お父さん」
「ただいま」
「晩御飯作ってあるよ」
そう言うと、父は申し訳なさそうに
「ごめんな、帰りに外で食べてきたんだ」
「もう、そういうことなら連絡くらいくれれば良いのに」
「いや、はは、申し訳ない」
「別に良いけどね」
私は意識していなかったが、父は私の反応の変化に気付いたらしく
「機嫌が良いみたいだけど、何か嬉しいことでもあったのか?」
「ちょっと、ね」
私は父に笑顔でそう答えた。
「そういえば、お父さん」
「うん?」
「お母さんの容態はどう?元気だった?」
私の言葉が予想外だったのか、父は困惑した様子で
「⋯すまないな。母さんが亡くなってからもう10年経つが、母さんは天国で元気にやってるだろうな」
父の言葉に、私は記憶がまだ混同しているのだと悟った。
幸いにも、父はそれ以上、私の言葉の意味について言及はしてこなかった。
記憶はまだ落ち着かないけれど、時間が経てば以前の記憶も薄まり、消えていくだろう。
ただ、これだけは忘れない。
私の願いを聞いてくれた、おじさん。
私の血の繋がらない、弟。
ふたりがいなければ、私の願いは叶わなかったのだから。
「もう寝るのかい?」
「うん。おやすみ、お父さん」
「あぁ、おやすみ」
「藍」
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