第28話 急成長の理由
「おかえり、ヴィオラ」
黄金の鐘のメンバー二人がいる場所で待っていると……
坑道の奥で凄まじい音がした後、しばらくしてヴィオラが戻って来た。
後ろには悔しそうに俯くカンパネラもいる。
「怪我とか…………は、まあないか」
「はい、問題なく
「こっちも特に何もなかったよ。ここら辺の
黄金の鐘の女性組が怪我をして動けなかったので、僕がここで二人を守って、ヴィオラが坑道の奥にカンパネラを探しに行くことになったのだ。
お互いに上手く行ったみたいでよかった。
そのことに安堵していると、俯いていたカンパネラが僅かに視線を上げて、訝しい目をこちらに向けてくる。
その視線には、“なぜ自分を助けたのか”という疑念が多分に含まれていた。
「礼を言うなら、お宅の副リーダーさんに言うんだな」
「チャ、チャイムに……?」
「お前に裏切られて置き去りにされたらしいけど、それでもお前を助けてほしいって僕たちに言ってきたんだからな」
「……」
カンパネラは面食らった表情でチャイムの方を見る。
彼女はその視線を気まずそうに受けながら、何も言わずに黙り込んでいた。
僕たちは、黄金の鐘より先に
しかし着いた時には、すでに
当初の予定とは大きく異なってしまったが、僕とヴィオラは
そして形として二人を助けると、直後に涙ながらに懇願されてしまった。
『カ、カンパネラ様が、この先に……!』
どうやら裏切られて置き去りにされたみたいだが、それでもチャイムはカンパネラを助けてほしいと言ってきた。
わざわざあの男を助けに行く理由なんかないと思ったけれど、お礼としてそれなりにまとまったお金も提示されて、何よりヴィオラが助けに行くと言ったので了承することにした。
なぜ彼女がカンパネラを助けると言ったのか、その理由はなんとなくだけど想像がつく。
たぶん、このまま言われっぱなしでカンパネラに死なれるのが嫌だったのだろう。
あれだけ散々罵られて、何も言い返せずに死なれるのが癪だったから。
今の清々しいヴィオラの表情を見るに、結果的に何かしらの形で仕返しができたみたいなのでよかった。
「……すまなかったな、チャイム」
裏切りがあったゆえに、なんだか黄金の鐘の間に気まずい空気が流れていたが、それを押し退けるようにして僕は言った。
「さてと、それじゃあそろそろこの坑道から脱出しようか。怪我人もいることだし」
「はい、そうですね」
ヴィオラとそう言い合って、坑道の出口に向けて歩き始める。
と、一歩を踏み出しかけたその時――
「ま、待て……!」
「……?」
「なぜ、この女が劇的に強くなっているのだ……! この短期間に、いったい何をした……!」
カンパネラが険しい表情でこちらを睨みつけてくる。
その疑問はもっともだと思ったけど、わざわざ律儀に教えてやる必要はない。
ただ……
「詳しいことは言えない。でも、これだけは教えておいてやる」
「……?」
「ヴィオラの魔力値は今……1200だ」
「…………はっ?」
カンパネラだけではない、チャイムもそれを聞いて唖然としている。
1200。
過去最高の恩恵値が980と言われている中で、それを大きく超えて1200に到達している。
これは嘘でも誇張でもない。何よりそれが事実であるということは、目の前で彼女の魔法を見たカンパネラが一番わかっているだろう。
賢者の魔眼という恵まれたスキルを持ちながら、魔力値が乏しいせいで実力がないと見做されてきたヴィオラ。
そんな彼女は、今やもう……
「彼女はもう守られるだけの存在じゃない。見ただけでどんな魔法も習得できて、それをすべて“高次元の魔法”に昇華させることができる……唯一無二の最強の魔法使いだ」
「……」
その時、通路の横道の方から大きな人影が現れた。
すでに幾度となく見てきた
その後方には同じ姿の巨人たちが、棍棒を振り回していたり膨れた腹を抱えて笑っていたりする。
「これで最後かな?」
「はい。感知魔法で坑道全体を確認しましたが、この
感知魔法の範囲も見違えるほどに拡大されており、彼女は今トラック地下坑道のすべてを見通している。
すっかり頼もしくなったヴィオラと目配せをすると、先頭に立っている
「じゃあ、行くよヴィオラ」
「はい!」
それに呼応するように
丸太のように太い脚で地響きを鳴らしながら駆けて来て、右手に持った巨大な棍棒を振り上げた。
「はあっ!」
僕はその棍棒が振り下ろされるよりも早く、
それは見事に
漆黒の巨体が吹き飛ぶ光景を見て、カンパネラとチャイムは口を開けて呆然とする。
ヴィオラもすごいけど、僕だって負けてはいない。
筋力恩恵値1000超えともなると、やはり
僕は続け様に、その近くにいたもう二体を右拳と右脚で後ろに吹き飛ばす。
そして三体が重なって倒れているところに、ヴィオラが杖を向けた。
「【グラビティパウンド】!」
刹那、その三体は強烈な重力によって地面に押し潰された。
討伐推奨階級Aランクの魔物を、いとも簡単にまとめて撃破。
その実感がじわじわと湧いてきたのか、ヴィオラは感激するように声をこぼした。
「私、こんなに強くなれると思いませんでした……」
嬉しさを滲ませた瞳をこちらに向けて、満面の笑みを浮かべる。
「本当にありがとうございます……モニカさん!」
それに対して僕も笑顔で応えて、残りの
にしてもまさか、“パーティーメニュー”があんなとんでもない機能だとは、まったく思わなかったな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます