第13話 豊富な知識
「あれは……」
岩を積み上げて作ったような巨人の怪物。
僕も以前に戦ったことのある
一方で黒髪の少女の方は見覚えがなかった。
黒いローブと黒い三角帽子を着用しており、帽子の下からはボサッとした黒い長髪が覗いている。
まさに“魔女”という言葉を連想させるような服装と容姿の少女は、枯れ木のような杖を構えながら
「【エアロブラスト】!」
少女の構えた杖の先端から鋭い風が吹く。
それは細かい刃のようになって通路を吹き抜け、
無数の風の刃が
だが……
「くっ――!」
威力が弱いせいで、
今のは間違いなく“魔法”による攻撃。
だけど、魔法にしてはかなり威力が乏しいように見える。
あれでは
「そ、それでしたら……!」
少女は風系統の魔法が効かないとわかると、即座に杖を構え直した。
「【ブレイズレイン】!」
瞬間、少女が
そこから細い炎が雨のようにして降り注ぎ、
しかし……
「ゴゴゴォォォォォ!」
「ひ、ひぃぃ!」
せっかく繰り出した魔法が容易く一蹴されて、少女はあわあわと戸惑う。
どうやら彼女はたくさんの魔法が使えるみたいだけど、魔力値が低いせいで
低級の魔物ならそれでも倒すことはできるんだろうけど、
「どど、どうすればいいんでしょうか……!」
ジリジリと迫って来る
次第に壁際の方まで追い込まれてしまい、為す術もなく困惑するしかなかった。
助けなきゃ、と思う一方で、僕は踏み出しかけた足を止める。
ギルドにいた時は気が付かなかったけど、もしあの子も選考試験を受けているなら助けるのは悪手だと思う。
この試験は単独での戦闘能力を測るものだと言っていたし、協力行為は禁止だと聞いた。
もしかしたら僕が助けに入ったその時点で、あの子は失格になってしまうかもしれない。
同時に僕もだけど。
だから試験参加者かどうか、まずは確認することにした。
「ヘルプさん、あの子って……」
すると僕の心中を疑問として受け取ったヘルプさんが、こちらが言い終えるよりも先に、とんでもない情報を口走り始めた。
『本名、ヴィオラ・フェローチェ。性別女性。Eランク冒険者。黄金の鐘の選考試験に参加中。年齢十七歳。身長1.55メル。体重と胸囲は……』
「わぁぁ! そこまで言わなくていいって!」
「んっ?」
思わず大声を上げてしまうと、案の定少女と
ヴィオラという名の少女は、驚いた様子でこちらに目を向ける。
「あ、あなたは確か、冒険者ギルドにいた……」
「ちょ! まえまえ!」
その隙を、
逞しい岩の右腕を掲げて、ヴィオラを目掛けて振り下ろしてくる。
「ひっ!」
彼女はその一撃を、奇跡的にも寸前のところで回避して、すかさず
続けて
逃げ足は結構速いな。
魔力値は低いみたいだけど、敏捷値はそれなりに高いみたいだ。
ただ、あまりにも防戦一方なので、見ているこちらがハラハラさせられてしまうけど。
だから僕は気遣うような言葉を掛けようとした。
「だ、だいじょう……」
「手を出さないでください!」
「……?」
「これは、私の獲物ですので……! 絶対に、手を出さないでください……!」
「……別に、横取りするつもりはないけど」
まあ、このタイミングで他の試験参加者が来たら、そう疑うのも無理はないか。
ていうかあそこまで追い込まれておいて、強気にそう言えるのは大した根性である。
ともあれ手を出すなと言われたからには、僕は黙って見守ることにした。
あれだけ強気な態度を見せていたので、他にも隠している奥の手などがあるのかもしれないし。
と、思ったのだが……
「ゴゴゴゴッ!」
「うにゃああぁぁぁ!!!」
ヴィオラの多種多様な魔法は、
……ダメそう。
本当に色んな種類の魔法を使えるみたいだけど、やはり魔力値が足りていない。
だから魔法を撃っては逃げて、また撃っては逃げてをひたすらに繰り返している。
なんだか色々と惜しい子だ。
いよいよ危なくなったら、助けに入っちゃっても大丈夫だよね?
『ヴィオラ・フェローチェでも、
「えっ……?」
『いまだに試していない魔法の中に、雷系統の魔法がございます。一見は効果的に見えない魔法ですが、それが
「……それで倒せるってことか」
どうやら彼女はそれを知らないらしいので、先ほどから別系統の魔法で応戦しようとしている。
まあ、渇き切った岩の体に雷魔法が効く印象はないもんね。
それだったら早いところ、彼女にこのことを伝えないと。
今回の選考試験は協力して討伐するのは禁止されているけど、助言をすることまで禁じられているわけじゃないし。
たぶん、大丈夫だよね?
「
「えっ?」
戦闘中のヴィオラに不意にそう伝えると、彼女はきょとんと目を丸くした。
初耳だと言わんばかりの表情。
やっぱり知らなかったのか。
すると彼女は
「【サンダーバード】!」
瞬間、少女の背後に鳥の形をした雷が生成された。
合計で五羽。小ぶりな雷の鳥たちが、息を合わせて
バチバチッ! と弾けるような音が響く。
「――っ!」
すると、いくら魔法を撃ち込んでも傷一つ付かなかった岩の巨体が、微かに欠けているのが見えた。
雷系統の魔法が弱点というのは本当のことみたいだ。
そこに勝機を見たヴィオラは、続け様に同様の魔法を放つ。
「【サンダーバード】!」
再び五羽の雷鳥を出現させると、
バチバチッ! バチバチッ! と
それを五回ほど繰り返すと、いよいよ
岩の体は、バラバラになって遺跡の床に崩れた。
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