5話
私石ノ上絵里は学校から帰ると一人の美少女が玄関前で座っているのを目撃し驚いた。
「あのぉ〜……どちら様ですか?」
「すみません、私石ノ上君のお友達の春雲華音と申します……もしかして石ノ上君の妹さんだったりするのかな?」
「そうですけど、兄に何か用ですか?もしかして、うちの兄が春雲さんに迷惑をかけたとかですか?」
「いえ、実は私……父親と喧嘩してしまいまして……その、家出してしまって……」
たまに私は兄が帰ってきてないことを利用して部屋に入ってラノベをこっそり読んでいるからなんとなく予想がつく。
春雲さんは『私はそんな顔も見たことないような人との婚約なんて嫌です!私には心に決めた相手がいるんです!』とか言いながら家を飛び出したに違いない。
「理由はお父様が本家の方に婚約者をあてがわれたようでして……私はすぐさま写真を見せられて、お父様は『家のためだ!』とお見合いするように言われたんですけど……何度嫌だと言っても聞いてくれなかったのが家出した理由です……」
やっぱりな、普通家出する先は女友達の家を選ぶだろうに。
それを敢えてうちを選ぶということは春雲さんは兄のことが好きに違いない、そうでなければここに来るはずがない。
「分かりました、ここじゃなんですので一先ずうちにあがってください」
「ありがとうございます」
しっかりとお辞儀をした春雲さんはとても美人で胸だって私なんかよりも大きく、清楚な女性だ。
兄はあんまり自覚ないけどそこそこイケメンなのだ。
もう少し自信を持てれば女の子にモテるだろうとは思っていたがまさかUR級の美少女がうちに来るとは思わなかった。
でも、最近の兄は某カードゲームアニメの主人公にファラオの魂が憑依したかのように自信ありげな顔だったから少し不思議に思ってたけど春雲さんの影響なんだろうな。
***
「それより兄貴、春雲さんうちに来てるよ」
「どういうこと?」
正直意味がわからなかった。
『歴史が少し変わってしまったようだな……そもそも本来であれば今日は春雲さんと一緒に弁当食べるなんてことしてなかったし……『一緒に弁当食べよう』と誘われても恥ずかしさとあいつらの視線が怖くて断ったから違うのは当然だけど……この調子で俺の人生崩壊事件を防ぐことができればなんら問題はないけど不安だ』
結弦が俺の頭の中でぶつぶつと呟き始める。
華音は俺の部屋でラノベを読んでいたのだ。
「おかえりなさい石ノ上君、妹さんからは話聞いているだろうけど……暫くの間泊まってもいいかな?」
「春雲さん、一応親御さんに連絡しといた方がいいよ?つか、もしかしたらもう春雲さんの運転手だか執事が迎えに来たりしてね」
大体この手のパターンでは華音のスマホにGPSやら発信機が搭載されてて居場所を特定なんてやってるだろう。
まぁ、アニメや漫画ではの話だろうけどね。
「ごめんください、こちらに春雲華音お嬢様はいらっしゃいますか?」
適当なこと言ってたら如何にもセバスチャンを名乗ってそうなイケオジがやって来たよ。
「ほら迎えに来たじゃん、というわけで帰った方がいいよ。あとでラインで愚痴の一つ二つ聞いてあげるから……」
「その件ですが、旦那様から今晩は『ご学友の家に泊まってもよい』と許可が出ておりますので大丈夫ですよ」
「ありがとうございます!筒井さん!」
こっちの事情を一切聞かずに話が勝手に進んでいく。
絵里は母親に電話で確認して声が明るくなってたから多分OKの二文字が出たのだろう。
『本来の歴史ではそもそも俺の家に家出することは無かったんだけどな……』
筒井と名乗る運転手のおっさんはそのまま車で去り、華音は家に泊まるしで色々と面倒な状況になった。
その上絵里も近くにいるから魂の結弦と会話すらできない状況だ。
***
母親も帰って来てから女三人食卓が賑わっていた。
俺はその光景を無表情で眺めながら飯を食う。
「結弦君のお母様、この唐揚げとても美味しいです!」
「あら華音ちゃんよかったぁ〜、まさか結弦がこんなに可愛い女の子を家に連れてくる日が訪れるなんて思いもしなかったからちょっと気合い入れちゃった!」
「お母さん若者ぶってるけどアラフォーなんだから落ち着かなきゃ〜」
「絵里、女はいつでも気分はJKなのよ!」
家で女子会開いてんじゃねぇよ。
確かに結弦の母親は見た目は若いし綺麗だけど、今は結弦の体に憑依してるから俺の母親ってことになるのか。
『このままだとまずいな……人生崩壊事件を防がなきゃいけないのに純平は暴力で解決したがるし他にいい案が浮かばねぇ……』
さっきから結弦は何をぶつぶつと俺の頭の上で呟いてるんだろうと疑問に思った。
俺の勘だが、人生崩壊事件が訪れないとゲームで例えるなら特定のルートが解放されないとかそんな感じなんだろうな。
だが大丈夫だろう。
矢沢が不登校にならないようにすればいいんだから。
俺だって黙ってやられるつもりはない。
(意外だなぁ、華音があんなに庶民料理を美味しそうに食べるなんて……結弦のお袋さんの唐揚げは美味いから納得だけど)
夕食を食べ終えると華音は絵里と一緒にお風呂に入った。
俺は部屋に戻って今日起きた出来事をノートに書き記し計画を立てる。
『純平分かっていると思うが春雲さんとのやり取りによって歴史は変わっている』
「そうなんだ?俺は普段から学校では寝てたから分かんなかったが、それでどうしたらいい?矢沢とお前の人生崩壊になんの関係がある?」
俺は結弦の体で魂となった結弦に問う。
『それはお前が寝た時に教えるよ』
「『寝た時に教える』って……イカれてんのか?寝てるのにどうやって教えるんだよ!」
『寝ればわかるよ寝れば』
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