第5話 奴隷商
どんよりとした曇り空、隣村までの道を歩く。皆、足取りは重く暗い表情を浮かべている。
そんな中、ゲイルおじさんは優しい表情で言う。
「リリーよく頑張ったな。昼過ぎには村に着く。それまでもうひと頑張りだ」
ゲイルおじさんはお父さんの友人で時々、遊びに来ては昔、冒険者だった頃の話を聞かせてくれた。
「この子、泣かずに頑張ったのよ」お母さんはそう言うとリリーの頭を撫でた。
「お父さんに会えるかな?」
「会えるといいな」とゲイルおじさんが言ったその時前を歩いていた村人の頭を矢が貫く。
木の影や草むらからナタや斧を持った男達が飛び出してきた。
「一匹も逃がすな!」一人の男がそう叫ぶと周りを囲まれてしまった。
ゲイルおじさんは腰のナイフを取り出し男達に飛びかかる。
「逃げるんだ!」そう叫び野盗の首筋にナイフ突き立てる。
「くっ!こいつやりやがった!」複数の野盗がゲイルさんに襲いかかった。
マナンはリリー抱きかかえ走り出した。
必死に走ったマナンだがやがて膝を着き倒れ込んだ。
「お母さん⋯?」
リリーは起き上がりお母さんを見る。背中には矢が刺さっていた。
「ちっ!手こずらせやがって」そう言いながら野盗はお母さんを蹴飛ばしリリーを担ぎあげた。
先ほどの場所まで戻るとそこには野盗数人と血だらけのゲイルさんが倒れていた。村人達は拘束されて檻に入れられている。
「お前も入ってろっ!」そう言うと檻の中に押し込められた。
真っ暗な中、ガタゴトと揺れている。いつの間にか眠っていたらしい。
どうやら馬車で運ばれているみたいだ。暗幕がかかり今が昼か夜かもわからない。
「俺達この先どうなっちまうんだ⋯」村人が言う。
「お母さん⋯」そう呟くと唇を噛みグッと涙を堪えた。
どのくらい時間がたったのだろう。馬車が止まり、檻から出された。薄暗い中、そこにはまたいくつも檻が並んでいる。
「ここはどこだ!俺達をどうするんだ!?」村人達は口々に言う。
「ここは奴隷屋さ、お前達は売られてきたんだ」痩せこけたちょび髭の中年男が言う。
「お前はここだ」そしてまた、檻に押し込められた。
「うわあああっ!」リリーは叫び目を覚ました。
魔族に村が襲われ、野盗にお母さんとゲイルさんが殺される夢を毎日見ている。
「うるせぇぞ!毎日毎日!このクソガキ!」赤犬族の男が怒鳴る。
「お嬢ちゃん気にしなくていい。ここには色んな身の上のやつがいるんだ」隣の檻のリザードマンが言う。
彼は何かと気にかけてくれているようだ。
ガチャ、ギィー
入口の鉄の扉が開く。ちょび髭の奴隷商が入ってくる。隣には身なりの良い肥えた男がいる。
隣の檻の前まで来るとちょび髭の奴隷商は
「コイツです。リザードマンの戦士、負け知らずの強者ですよ。闘技場でも活躍する事請け合いです」
「ふむ、身体つきも良いし鋭い瞳、コイツを頂こう」
「ありがとう御座います。ではあちらで契約書の記入お願いします」そう言うと檻の鍵を開け、リザードマンを鎖で繋いだ。
「お嬢ちゃん、希望を持つんだよ」そう言い残し去って行った。
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