元不良少年は学園生活を謳歌したい!

@Tehalu

第1話 待ちに待った高校生活!

「東岡中学の狂犬」というのはその中学、ましてやその地域に住んでいる人なら誰でも知っている異名であった。


 そいつは、正体を隠し、毎日のように騒ぎを起こす迷惑者であった。


 まあ、その正体は俺、春夏冬俊輔あきないしゅんすけなのであるが。


 察しはつくと思うがそれはとても不名誉なものであり、自分でも余り掘り返したく

 ないものである。だが、中学の時はその呼び名をとても気に入っていた。「狂犬」ってなんかかっこいいし、異名がつくというのは俺の世界では憧れるものであった。


 俺の世界というのは品行が悪く、毎日のように喧嘩を起こし、騒ぎを起こして…まあ、要するに不良やヤンキーと呼ばれる世間からは評判の悪いものである。


 しかし、その頃の俺にはその世界はとても居心地が良かった。なぜかというと、平凡に暮らしていくのが嫌だったから。喧嘩や騒ぎを起こすことで注目を浴び、自分はここにいるという存在証明ができたつもりでいたから。


 だけど、俺がどれだけ無駄なことをしていたのかある日気付かされた。


 そのある日ということについては、長くなるので別の機会に話をしよう。


 長々と前置きをしてしまったが、俺の中学の話はこれで終わりだ。


 これからは高校生活が始まる。


 俺はこれから、友達をいっぱい作り、勉学に勤しみ、恋をしたり…そんな学校生活にワクワクがいっぱいなのだ。


 まるで小学生のような意気込みだが、俺にとっては今日がスタートライン。


 今日から始まる高校生活、平凡な暮らしを謳歌するぞ!


 「ピピピッ」と携帯のアラームが鳴り、眠気を振り払う必要もなく、まるで修学旅行当日のような気持ちで目を覚ました。俺の未来は希望に満ち溢れている。そんな気分だ。


 今日から高校生、過去の自分とはおさらばして新しい自分で生きていくのだ。

 新しい自分というのは、勉強を程々にこなし、問題を起こさないといった普通の人間である。


 元不良がそんなことできるのかという疑問も湧いてくるだろうが、心配はいらない。


 学校が始まるまでに俺は様々な準備を重ねてきた。

 小学生レベルだった学力をなんとか中学生レベルに上げ、礼儀作法を身につけ、ルールやマナーも勉強した。

 今の俺ならば周りに馴染んで生活していくことができるだろう。

 

俺は身支度を済ませると「行ってきます!」と言って、家を出た。


外は入学式日和と言っても申し分ないような春うららな天候であった。


春うららという表現でいいのか分からないが、まあ良いだろう。

だって使ってみたかったんだもん。

人は今まで聞いたことのないような言葉を使いたくなるもので、ニュース番組で女子アナが言っていた「春うららな天気ですね」という表現を自分の頭の中で想起させていた。


心地良い気分で歩いているともうすぐそばに学校が見えてきていた。

もうすぐで新しい学校生活が始まる。

そう考えるとワクワクしてたまらなかった。


学校の校門まであと50メートルほど。

今50メートル走を走れば俺は6秒台は出せそうなほどにコンディションは抜群である。

走らないけどね。


高ぶる気持ちを抑えてゆっくりと足を進めた。


そして、ついに校門をまたぐときが来た。

ここをまたぐと同時に学校生活がスタートする。


まるでゴールテープを切るような気分で俺は校門をまたいだ。

やっと学校にたどり着いた。


そうして、俺が息をつくと同時に周りがざわつき始めていた。

みんなテンションが上っているのかな。

やっぱり考えることは一緒なのか。


だけど、そのざわつきは盛り上がっているという感じではなく、不穏な空気が

流れているといったほうが正しいだろう。


そのざわつきの正体が気になり、ざわついている後ろの方を振り返ってみた。

後ろを振り返った瞬間にそのざわつきの正体にすぐ気づくことができた。

どれだけ鈍感なやつでも気がつくだろうな。


それは学校へ登校してきた不良5人組の姿であった。


見た目で判断するなと言われるかもしれないが、不良というのは自分の存在を認めてほしくてその姿をしているのである。つまり、見た目だけで判断材料が揃っているというか、不良ではないと変にかばうほうが、相手を傷つけてしまうのである。

だから、この5人組がしている、リーゼントやツッパリ系の格好も変に馬鹿にしてはいけないのである。


この5人組には変に感情移入してしまいそうになるな。

あまり干渉しないようにするか。


その不良5人組は校門をくぐるとすぐに生徒会の目に止まったらしく引き止められていたが、それを無視して学校へと突っ切っていた。


俺は玄関へとゆっくりと足を進めていると、不良5人組と横で並んでいた。

あいつら足速いな。

そんなことを思いながら、チラ見してみる。

そうしたら、不良のボスらしきやつと目があってしまった。


なんとなく俺は目を逸らしてしまったが、別にビビったわけではないぞ。

いや、ビビるという話で言うとボスらしきやつが俺の方ずっと見てくるんだけど。

俺何もしてないよな。喧嘩沙汰はゴメンだぞ。入学式の日というのにそんな事になっては困る。


なんでこっちを見てくるのかと考えていると、ボスが驚いたような顔をしていた。

驚いたような顔をしたまま、こっちに近づいてこう訪ねた。

「お前は東岡中の狂犬か?」


なんでこんなところでバレそうになってんだよー!。

心のなかでそう叫んだ。

だが、バレたわけではない。

疑問形で聞かれているだけであって、正解にはたどり着いていないのである。

俺は慎重に答えた。

「狂犬……なんのこと?知らないけど。」


ボスはその答えを聞くと再び聞き返してきた。

「本当に知らないのか。俺のことも知らないか?」


ボスの顔に見覚えもないし、それにどうして勘付かれているのだろうか。

手がかりになるはずのものはないはずだけどな。


俺は答えると同時に、探りをいれることにした。

「知らないなー。それはそうと、なんで俺のことをその狂犬って言う人だと思ったの?」


ボスは俺の問いに真っ直ぐに答えてくれた。

「俺は昔、その東岡中の狂犬に世話になったことがあるんだが、そいつはお前がしてる指輪とおんなじのを薬指に付けてたんだよ。だから、もしかしたらと思ってな。すまん、人違いだった。」


俺はハッとした。

細かいところを見ているものなんだな。

「ああ、これは俺の形見みたいなものでさ、いつも身につけているんだよ。でも、同じ指輪をつけているからって、同一人物とは限らないよ。そこは、気をつけてね。」


そう言うと、ボスの子分たちが怒ってきた。

「ボスに対して口の聞き方がなってないぞ。もうちょっと態度を改めろ!」


急に質問されて答えただけなのに、理不尽に怒られた。

こっちが怒りたいくらいだ。

まあ、ボスに嘘をついたのは申し訳ないけどね。


「おい、余計なこと言うんじゃねえ。俺が勝手に人違いしてただけなんだから。急にすまなかったな。」


「いや、別にいいよ。人違いは誰にもあるし。」


余計なことだと思ったが、聞かずにはいられなかったので、ボスに俺から質問した。

「その狂犬にあって何をするの?」


喧嘩を申し込むとかじゃなければいいけど。


すると、ボスは以外にも懐かしそうな顔をしてこう言った。

「ありがとうって伝えたいだけだよ。」


ボスはそう言って去っていった。


俺がボスに何をしたかは覚えていないが不良が感謝されるって、なんか不思議な気分だな。


でも、ボスも見た目こそは不良であるが話してみるととてもいいやつだったな。

また、話す機会があればいいなあ。


ボスとの会話を思い出し、俺は右手薬指にはめている指輪を眺めた。

そして、その指輪を優しく撫でた。


この指輪をまじまじと見ると思い出してしまう。大切な人のことを。

ワクワクで埋まっていた心の中を20パーセントぐらいの憂鬱が染めてきた。












 


 

 

 


 


 

 

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