まさか…朝からあんなものを奪われるなんて…待ってください‼︎くださいって言ってしまったのはわたしですがやっぱり…

猫の集会

いきなりすぎるって

 本日晴天‼︎

 

 雲ひとつない青空!

 

 …って、言いたいところだけど雲は…ところどころあるね。

 

 はぁ…

 

 さっきまでのウキウキも一瞬で吹き飛んで、わたくし真夏まなは、寒い冬空の下…自転車にまたがった。

 

 息を吸うと、冷たい空気が鼻の奥をツンっと刺激する。

 

 そんなツンは、別に求めていない…。

 

 わたしが求めているのは、心の刺激‼︎

 

 そうよ‼︎だれかわたしに刺激を与えてちょうだいよ‼︎

 

 

「くださいくださいくださいなっと」

 

 全力で自転車をこいで、いつのまにか学校に到着していた。

 

 ヒョイっと自転車から降りると、

「あの、これ…どうぞ」

 と、声がした。

 

 ⁈

 

 わたしに言っているのかしら?

 

 隣をみると…

 

 知らない男性がわたしにティッシュを差し出していた。

 

 ?

 

「えっ?」

「いや…オレが鼻かんでたら、くださいくださいって連呼しましたよね?だから、どうぞ」

 

 差し出されるティッシュ。

 

 …

 

「あ…じゃあ、遠慮なく。ありがとうございます」

「いえ」

 

 男性は、振り向きもせずに校舎へ入っていった。

 

 …

 

 あの人…

 

 自転車の貼ってある学年シールをみるからに…

 

 上級生だ。

 

 でも、上級生は…たしか自転車置き場、ここじゃありませんよね?

 

 なぜ、同じ学年でもないのに彼はこの自転車置き場に自転車をとめたのか?

 

 ミステリーだわ。

 

 なにか、メッセージを残して…

 

 いたーー‼︎

 

 そう‼︎彼は残していた‼︎

 

 重大なメッセージを‼︎

 

 なんだよ?って?

 

 それは、ティッシュ‼︎

 

 わたしが、無駄にいただいてしまったこのティッシュこそが、その証‼︎

 

 なんともピンクで可愛らしいティッシュ‼︎

 

 これは、彼女からのプレゼントに間違いないです‼︎

 

 でも…彼はなぜわたしに、このティッシュを渡してきたか?ってことです!

 

 正解は…

 

 はい‼︎喧嘩です‼︎

 

 彼女と喧嘩して、朝から鉢合わせしたくない彼は、別の自転車置き場にとめた。そして、彼女との距離をとったのです‼︎

 

 そして、このティッシュ‼︎

 

 彼女からいただいたティッシュ‼︎

 

 彼女を思い出すから、わたしというどうでもいい他人に、渡したのです。

 

 …受け取ってしまった呪い。

 

 いやよ‼︎

 

 い や よ ‼︎

 

 返す‼︎

 

 わたしは、全力で彼を追いかけたわよ。

 

 ええ、そりゃ全力で。

 

 

 そして見つけた。

 

「そこの人‼︎わたしには、呪いなんてかからないの‼︎だから、これ返します‼︎」

 と、堂々と悪霊退散したわ。

 

 彼は、少し驚いた顔をしていたの。

 

 えぇ、そりゃそうよね。

 

 あのティッシュが、また自分の元へかえってきてしまったのだから。

 

 

「えっと…」

「かえします‼︎これ」

「あー、でも…それはきみが持っていた方がいいんじゃない?」

「なぜです⁉︎なぜわたしなんですか?みるからに幸薄そうでちょうどよかったからですか?どこにでも居そうな、そこら辺にいそうな数多くの人間の一人だからですか?わたしって、ホコリみたいな人間だからですか?」

 

 …

 

 しばらく彼はわたしを見た後に、ぷッと笑って

「きみ、やっぱり面白いね」

 って言いました。

 

 ドキッ

 

 わたしは、彼のいきなりの笑顔に…

 

 キュン、ドキッっとしてしまいました。

 

 不意打ちにも程があるわ…

 

 つい、彼女もちの男性におとされるところでした。

 

 ポタッ

 

 わたしの顔らへんから、なにか落ちました。

 

 この位置は…

 

 えっ?

 

 わたし…

 

 悲しくもないのに、泣いています。

 

 これは…いったい…

 

 

「きみもドライアイなんだね」

 

 ⁉︎

 

 ドライアイ⁉︎

 

「えっ…?」

「きみ、よくさ自転車置き場でもうすぐ消えそうな月をよくみてたよね?その後、目をシパシパして。さっきも目に手をおさえてた。ドライアイなのに、涙でるっておかしいってなるよね。でも、これって自然現象なんだって。ほら、ティッシュは?」

 

 言われるがまま、ティッシュを差し出すと彼は、わたしの手からティッシュを優しく奪い、涙を拭いてくれた。

 

 

 ポタッポタッポタッポタッポタッポタッポタッポタッポタッポタッポタッポタッポタッ

 

 思わず涙が溢れてしまった。

 

「あっ、これもドライアイです…」

「えっ⁉︎いや…これはもう…むしろ泣いてる…よね⁇どうしたの?大丈夫⁇」

 

 …

 

「優しく…っ優しくしないでくださいっ…彼女いるくせに…わたしの心奪わないでくださいっ。奪っていいのは、呪いのティッシュだけですっ…うううううっ…」

「フッ、やっぱり面白いこだわ。オレさ、彼女いません。それに、ずっときみのこと気になっていたんだ。だから、今日わざと近くに自転車とめてみたんだ。そしたら、まさかのきみの方からティッシュくださいって言われてね。あれは、妹がくれたんだ。恋のおまじないつきティッシュだから、って。妹にお礼しなきゃだ。こんなかわいいこに出会わせてくれたんだから。」

「えっ?か、彼女…イナインデスカ?」

「なんで片言?」

「びっくりしすぎて…」

「じゃあ、放課後もっとびっくりすること言わせて?」

「えっ…⁉︎」

「じゃ、また自転車置き場でね」

 

 

 彼は…

 

 彼は…いきなり与えてくれました。

 

 心の刺激ってやつを。

 

 

 そして、その日からわたしたちの交際がスタートしました。

 

 

 恋って…

 

 急なんですね。

 

 今朝…

 

 まさか…

 

 そんな大事件が今日これから数分後に起きるなんて…想像もしておりませんでした。

 

 

 でも、今…とっても幸せです♡

 

 

 

 

 おしまい♡

 

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