キャラが立つ料理店

@doraemon-help-me

第1話 キャラクターの立つ料理店

 激ウマの料理店がある。

 山形市に。

 グルメ記者の船大工俊夫。

 喰わねばと。

 森の中にポツンと立つ店舗へ脚を運んだ。

 現れたのは。

 コック帽を装着した白人のマッチョだった。


 「へい!らっしゃい!なんにしやす?マグロかい?良いマグロ入ってるよ!なんせウチは産地直送だからね!私、今朝方採ってきたからね!リールぐーりぐり巻いてね。釣れたら空手チョップ脳天喰らわしてね。ウチは神経締めなんか空手チョップだからね。なんにしやす?マグロかい?マグロ入ってるよ。お客さん、マグロみてえな顔してるもんね!」


 凄え喋る白人のマッチョだった。

 洋食屋さんなのに。

 マグロのゴリ押し。


 「じゃ、じゃあ。仔牛肉のビーフシチューを頼めますか?」

 「はい、マグロ一丁!」


 間髪入れずに出されるマグロの握り。

 光の速さで。

 カウンターに置かれた。


 「いや、ボクはビーフシチューを頼んだんですが?」

 「マグロ良いの入ってるよ!マグロしかないだろう?」

 「洋食屋さんに来たのはマグロの握りを求めてじゃないんですよ」

 「ウチに来てマグロ頼まねえとはクレイジィな野郎だ!マグロあるならマグロしかないだろう!」


 「あの、ビーフシチュー頼めますか?」

 「はいよマグロ一丁!」


 レスポンスが良過ぎる店主さんだった。

 0.5秒で提供されるマグロの握り。

 中トロに近い部分はサービスだとか。

 違えよ。

 ビーフシチュー喰いてえんだよ。

 要らねえサービスされてありがとうとはならねえよ。

 

 「あの、すいません」

 「はいよ、マグロ一丁!」


 今度は注文ですらなかった。

 

 続。

 

 

 

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