コンプレックス
茉莉花
第1話
彼女の吐息に苦しさが増し、身体が極限まで反り上がり、体から一気に力が抜けベッドのスプリングが思っていたよりも強く軋んだ。
恥ずかしいから、と常夜灯も付けずに暗闇の中を、私は手探りの中で彼女に触れた。彼女が望んだことだった。
彼女の華奢な体、小ぶりな胸、肉の少ない尻、筋肉が少なく柔らかい脚、滑らかなお腹。
彼女は自分の体がコンプレックスだと言う。
どこがだろう。それとも恋人のフィルターがかかっているからなのか。
可愛い。
暗いけれど、光なんて一筋もないけれど、目はだんだん慣れていって、私の瞳には彼女の輪郭を映し出す。
もっとセクシーな体になりたい、と彼女は言った。
確かに、傍から見れば二十代も後半だというのに幼児体型なのかもしれない。
お揃いの下着のサイズも私より明らかに小さかった。お店では1番小さなサイズが彼女のサイズで、それ故にデザインはシンプルになり、それを彼女はショックがっていた。
彼女が体の中で1番のコンプレックスだと感じている部分に、まだ体が無意識に動くその最中に、私は吸い付いた。
例えば彼女がこのサイズでなく大きい場合、学生だとしたらいじりの一環で同性から触れられたりもあるだろうし、触れられるという行為自体に慣れているはずだ。
声が漏れる度に、声を我慢して、我慢しきれない声が漏れ出す。
自分の口を少し雑に動かす。
皮膚も先端も形が歪み、また彼女の腰が少し反る。
手で抑えるように腹部を押して、小刻みに動かす。
マットレスと私の手で圧迫された柔らかなお腹が痙攣し始める。
私が止めないことを彼女は分かっている。それでも途切れ途切れに抵抗の言葉を私に言う。
可愛い。それ、止めないで。
私と付き合うまでは誰ともこういうことをしたことがなかったはずなのに、でも彼女は最初から感度が良かった。変態。
入口が粘着質で滑らかで、さっき入れたからすんなりと私を飲み込んだ。口ではダメと言っても、体は素直だ。思考と本能は別物で、本能のままに私を深くまで飲み込んだのだ。
私にしがみつく彼女の手の爪が皮膚に食い込む。彼女の鮮やかな色彩のネイルは今は暗くて見えないけれど、可愛らしいパーツのついた爪は不規則に私の肌に跡をつけていることだろう。
深爪にしている私の短く丸々とした爪は今は彼女の中にあり、その指の腹はざらりとした感触を撫でた。
抵抗しようとする足を肘で抑えつけて、ゆっくりと撫で続ける。
そうすればさらりとした液体が溢れ出し、止めようと腹筋に力が入れば入るほど、私の手を濡らすのだ。
何度もした行為であるのに、彼女の口からは途切れ途切れにごめんなさい、という言葉がこぼれ、私はそれを掻き消すようにより早くそこを撫でる。
肩に彼女の爪が、歯が、力強く食い込んで、柔らかな足か私にしがみつき、指に伝わってくるものが痙攣し、耳元で彼女が耐えきれない声を上げ、
そしてぱたりと力が抜けた。
思いっきりローテーブルに手を伸ばし、リモコンで常夜灯を付けた。
私の体に抱きつき必死に痙攣を抑えようとするも跳ね上がる彼女の体、小刻みに動く彼女を抱きしめる、濡れたシーツ、同じもので濡れた私の手、縋り付くように理性が戻らない彼女が私に何度もキスをして、舌を割入れれば、動くのが収まりそうだった体がまた動き出す。
よれたメイク、くしゃくしゃの髪の毛、細まる目、緩んだ口元、熱い吐息が私にかかり、私にエンジンがかかり、激しく彼女の唇を奪った。
彼女で濡れたままの私の手が、泥濘んだそこへと吸い込まれる。
電気を消して、と彼女が言う。
それを無視して傷つけないように、不格好な爪のついた指を奥へと進める。
コンプレックス 茉莉花 @marika_0419
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