第3話
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「親会社に出向が決まった。
よく勉強したいと、自分から名乗り上げてくれたんだ。みんなも応援しよう。この半月で業務を引き継いでくれ、よろしくな。」
数日後、部長から直々に間宮さんの異動の発表があった。先輩の仕入れた噂は本当だった。正確には、出向だけど。
『2週間前に発表するなんて、やっぱり絶対おかしいよ。普通引き継ぎもあるし少なくとも2カ月前から御触れが出る。』
『だよねえ、なんか、不自然っていうか。』
『間宮さんは何て言ってたの?』
「それが何にも......」
まだ本人の言葉を聞いたわけじゃない。
定例会議でも、部長の説明の後に話を振られてもよろしくお願いしますとしか言わなかった。
『絶対何か隠してるよね!何かやらかしたとか?』
『でもそれなら子会社に左遷するんじゃない?
むしろキャリアアップの流れだよ。』
気の合う同期の女の子と4人で居酒屋にいた。
3ヶ月に1回ぐらい自然発生的に開かれるこの同期会は
たいてい会社の人の話で持ちきりになる。
誰と誰が不倫してるだの、どの部長がキャバクラ通いだの、そんな闇が深くて大層浅い話。
今日は今のところ3時間のうち2時間は間宮さんの今後の予想をあれこれ話してはみんな社内では見せない悪い笑みを浮かべて楽しんでいた。
『でも間宮さんいい人だからショックだなあー』
『ちょっとした時に話しかけるとすぐ助けてくれるっていうか〜優しいよね』
『わかる、てか芽衣あの部署の中に他にいるの?あんな頼れる先輩。』
「いないよ、だから困ってるんじゃんー」
本当に王子様みたいな人だったんだ。
声を上げる前に、私のSOSに気付いてそっと手を差し伸べてくれる。
誰にも見えないところで、背中を押してくれる。
間宮さんに出会って、男の人のイメージが覆った。
あんなにも細やかに、気遣いができる素敵な人いるんだ、って。
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