第2話 夏祭りは異世界だった
小学校に上がって、初めて漁港の花火大会に連れて行ってもらった頃。夕闇の中で出会う同級生や、知り合い。その邂逅は新鮮に感じた。
何もかもが目新しく、屋台の光に照らされると普通のものが全て特別に見えてしまう。
中学校に上がると、親ではない友達と共に練りある夜。やはり、特別だった。しかし、会いたくない人がいた。僕が好きな人だと嘘の噂を流されたせいで、近づきにくくなった同級生の女の子だった。きっと彼女も会いたくないだろうと、暗闇を歩いた。
彼女が家族と親友と歩いているのを見かけた瞬間、避けるように逃げたことを覚えている。夏の夜は、子どもたちには、異世界なのだ。普段と違う雰囲気、門限を経ない特殊な空気。もしかすると、あの中なら彼女とも普通に逢瀬し、会話できたのかもしれないが、それを彼女の周りが許さなかったろう。
変な意識と拗らせた中学生時代。その三年間の縛りが、僕を花火大会から遠ざけていった。
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