幕間No.6 Halloween

「…ハロウィン?何だそれは?」

リカブさんが首を傾げて言った。


「僕の世界にあった、秋に行われる催し事です。お祭りみたいな感じで、皆が毎年楽しみにしてるんです。」

「ほう!面白そうだな!どんな事をするんだ?」

リカブさんが目を輝かせて食い付いてきた。


「例えば、近所にお邪魔して"トリック・オア・トリート"と言ったり…」

「トリック・オア・トリート…どんな意味なんだ?」


「"お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ"です。」


「――恐喝じゃないかぁーーーッ!!!」

リカブさんは驚嘆を露わにして叫んだ。


「違う違う、違います!!! ホントにそういう行事なんですって…!!! "悪戯するぞ"の脅し文句も、行事の範疇を出ないマイルドな物で…」

僕は必死に弁解する。


「…なんだ、それなら良かったが…この世界じゃ同じ事は出来そうにないぞ?」

「…ですね。」

…さっきのリカブさんの反応が、それを証明していたし…。


「あっでも、ハロウィンでする事はまだまだありますよ!"仮装"です!

皆が怪物や人気キャラクターのコスプレをして街に出るんです!」

「大規模なコスプレイベントか…面白そうだな…!」

リカブさんは再び、目を輝かせる。


「よし!9万職員も誘って仮装大会といこう!」

「あっ、9万職員さんならさっき出掛けました。」


僕がそう告げた瞬間、リカブさんの表情が曇りだした。

「…ヨシヒコ君、ひょっとして9万にもハロウィンの話をしたのか?」

「えっ?はい…。」


「…まさか…。」

リカブさんはリモコンを手に取り、テレビを起動した。


『――続いてのニュースです。つい先程、スーパーに強盗に入った容疑で、ハローワークに勤務する女が逮捕されました。』

「あっ。」

リカブさんは、全てを悟ったような表情で呟いた。


『目撃者によると、女は"お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ"と店員を恐喝したとされ――』


僕はテレビ画面を覗き込む。

そこに映っていたのは、サングラスに黒いスーツ、そしてニット帽を付けた9万職員さんの姿だった。


…コスプレじゃねえ!

傍から見たらただの変装だよコレ!!!



 ――幸い、9万職員さんは不起訴処分となった。

…マワリさんには滅茶苦茶怒られた。



END

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る