音の少ない場所を歩いているような、そんな読書体験でした。家庭の空気や教室の沈黙が丁寧に描かれていて、「声が軽い」という感覚が、自然と伝わってきます。牛乳の甘さをめぐるやり取りは、この物語を象徴する場面のように感じました。「好きかどうか」を簡単に言えないこと、言葉を選ぶために立ち止まること。その時間そのものが、空だった場所に何かが満ちていく瞬間なのだと思います。素敵な作品を読ませていただきました。ありがとうございます。