怖くない。ずっと待ってたから。

るる

第1話

下校途中、気づくと目の前が真っ暗になった。

(何?)と思った瞬間に、ふわっと体が浮いた。(誰かに抱えられた?)

体を拘束しているものはガシッとした腕のようだった。固い。痛い。

明らかに同性ではない体の感触だなあ、とぼーっと考えていた。現実感がなかったのだ。何メートル進んだのだろう、エンジン音が大きくなってきた。

(車?)

そして、何かに乗り込むような振動を感じた。椅子に座らされたと同時にバタンと音がした。「よし、いいぞ。」そう声が聞こえた。若い男の声のようだった。

(ああ、これは誘拐というやつでは?)

相手はおそらく複数の男。

(これは勝てないな)と自他ともに認めるほどの察しの悪い私にもわかった。

(助けて!と大きな声を出せばよかった?)

そんなたらればを冷めた脳の一部で考えた。まだ目は見えない。

「あの、こんにちは。私はリン。高橋リン。お兄さんたちを何て呼んだらいい?」笑っているような声で話しかけた。

「は?」酷く驚いたような呆れたような声が返ってきた。

怖くない。だって私はずっと連れ出してくれる人を待ってたから。

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怖くない。ずっと待ってたから。 るる @after2200

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