第11話:悠真の決心。

舞の心が穏やかじゃないまま次の日、悠真と舞は図書館にいた。

もちろん本棚の後ろで、ルシルがふたりの 会話を盗み聞きしていた。


「引っ越すって言ったけど・・・俺、ここに残るわ・・・」


「残るって?」


「おやじとおふくろだけ北海道に行ってもらって、俺ひとりこっちに残る

・・・そう決めた」


「そんなことして大丈夫なの?」


「大丈夫もなにも、俺が決めたことだから、おやじとおふくろには文句は

言わせない」


「こっちにひとりで住むの?」


「そういうことになるな・・・」


「じゃ~私の家に来ればいいよ」

「うち男手ないから悠真が来てくれたら大助かり」

「それに、毎日朝も夜もいっしょにいられる」


「俺が入り込んで迷惑じゃないか?」

「それに智晴さんがなんて言うか・・・」


「大丈夫だよ・・・お母さんは私が説得するから」

「ルシルだって家にいるでしょ」


「それは女同士だからだろ?」

「いくら幼馴染って言っても男と同じ屋根の下ってまずくないか?」


「説得してみないと分かんないじゃない」


「ま、それは俺がここに残るって決まった後でもいいだろ?とにかく俺は

残るから・・・舞もそのほうがいいだろ?」


「悠真のご両親・・・うんって言ってくれるかな」


「反対もなにもないさ、俺が決めたことだし・・・」

「今夜、おやじとおふくろに言うよ・・・ここに残るって」

「もし、自分のことは自分で責任持ってやれって言われたら バイトでも

して生活費稼ぐかな」


「私も協力するから」


悠真は悠真なりに一番いいと思う選択をしたのだろう。

とりあえず遠距離は免れたかもしれなかった。

そばで悠真と雫の話を聞いていたルシルはだんだん自分の体の変化を日ごと

に感じるようになっていた。


次の日の朝、悠真と舞はバス停にいた。


「おはよう、悠真」


「おはよう、舞」


「夕べ、どうだった?話したんでしょ引越しの件」


「うん、話した・・・」

「で、親父とおふくろに言ってやった」

「親の都合で子供の人生を振る回すのは反対だって」

「絶対ひとりこっちに残ると主張してやった」

「そしたら今朝、親父に呼ばれて・・・」

「お母さんを頼むって・・・」


「結局、父親だけ北海道に単身赴任することになった」

「喜べ〜舞、俺こっちに残るから」


「よかった・・・おじさんには気の毒だけど・・・」

「いっしょに住めなくなっちゃったけど 悠真がこっちに残ってくれる

んなら、どっちでもいい 」


「俺もだよ・・・一時はどうなるかと思ったけどね」

「実はね、僕がひとりこっちに残るって話、実はルシルの入れ知恵だよ」


「え?そうなの・・・またルシル?」


「ルシルがいなかったら、俺たち自分の気持ちも伝えられないまま

離れ離れになってたかもな」

「彼女は悪夢なんかじゃないね僕らにとっては女神だよ」


「そう言えば、最近ルシルはどこへ行ってるのかな?」

「昼間はどこかへ出かけて行って夜になると、ひょこり帰って来るんだよ」


「俺たちの邪魔にならないよう気を使ってくれてるんだよ」


「ならいいんだけど・・・ちょっと心配・・・」


ふたりが乗ったバスをルシルは、名残惜しそうに見送っていた。


「舞、悠真・・・どうやら、さよならだな・・・」


つづく。

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