8:ダンジョン二日目。検証開始


  一時間が経過した。

 ここまでに駆除できたスライムの数は六十八匹になった。

 探している時間も含めてだからこれが効率が良いものかはちょっとまだ解らない。もしかしたらスライムがみつしりと詰まっている空間があるのかもしれないので、今度は見回ってみようと思う。


 脳が暇になったのでスライムの動きを観察してみる。観察の結果、スライムにはちゃんとした思考が存在しており、物質を溶かす際も「よし、溶かすか!」とスライムが思考することで溶解を開始するのではないか?という推論が得られた。


 つまり、スライムがこちらを敵と認識する前に素早く近寄り核を適切に処理することで、こちらはノーダメージでスライム狩りを行うことが可能になるわけだ。


  ◇◆◇◆◇◆◇

 

 それから三時間が経過した。

 メモ帳によるとこの三時間で二百匹ほどスライムを倒すことができた。

 ドロップ品はスライムゼリーが五十個ほど。スライムの魔結晶は二十五個入手することができた。


 腹が減ってきたのでここらで腹ごしらえしようと思う。

 周りにスライムができるだけ居ないところを見繕うと、座り込んでいつものカロリーバーと水分を補給する。


 目の前には一匹のスライムがぽよんぽよんしている。とりあえず俺を敵だとは認識していないようである。

 ふと、スライムは人間の食事も食べるのか?という疑問がわいてきた。


 カロリーバーをスライムの前に放り投げてみた。するとスライムはカロリーバーを認識したらしく。近づくと体内に取り込み始めた。

 シュワシュワとカロリーバーが解けていく。なんでも食べそうだな。


「これで俺とお前は同じ釜の飯を食った仲という事だな」


 なんだか彼と俺の間につながりが生まれたような気がした。

 そして俺はそのスライムを早速捕まえると核を掻き出し潰した。


 すると、スライムは魔結晶とスライムゼリーを同時にドロップした。食事中に油断するとはスライムの知能はあまり高くないんだろう。


 しばらくするとまた一匹スライムがやってきた。俺は同じようにカロリーバーをスライムの前に差し出す。

 スライムはさっきと同じようにカロリーバーを体内に取り込むと食事を始めた。そして俺はスライムを捕まえて核を掻き出し潰す。


 スライムはさっきと同じように黒い粒子に返還されると、スライムゼリーと魔結晶をドロップした。


「もしかして、食事中のスライムを倒すとドロップが確定する?」


 また検証する課題が一つ増えたようだ。しかし、カロリーバーを毎回食わせるのはコストパフォーマンスが悪い気がするし、俺が食べる分が減ってしまう。


 次に来るときはスライムが食いそうな物資を見繕ってこよう。一階層で放置されがちなスライムに活用法が生まれそうな気がしてきた。


 腹を満たした俺は狩りを再開する。四時間ぐらいでいいだろう。時計を見ると一三時を回っていた。


 これならあと二百匹ぐらいは倒せるんじゃないかな。途中で飽きるかもしれないが、疲れがたまってくるまで俺は引き続きスライムを狩り続けた。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 時刻は十七時を示していた。もうこのぐらいでいいだろう、俺は帰路につくことにした。道中で何匹かのスライムに出会ったが、問題なく処理しつつ出口へ向かう。


 今日の戦いの中で思ったことは、スライムは天井に張り付いていてそれが落ちてくることがある。

 ヘルメットをかぶっていてよかったと思う。


 入口で入退室時間を管理していたお姉さんに退出時間を確認する。


「ずいぶん長く潜られていたんですね。何階層まで行かれたんですか?」

「ひたすら一層でスライムと戦ってました」


 戦っていたので嘘ではない。どっちかというと潮干狩りをやっていた気分だ。スライムの数はそれほど少なくなかったので、入れ食いだったといっていい。


「昨日は来られてなかったと思うのですが、一日休まれたとはいえ、長時間探索って結構体力を消耗しませんか? 」

「いやあ、昨日は筋肉痛に苛まれてまして。今日は体に負担がかからないようにいろいろ考えてきたんですよ」

「そうですか。攻略法なんかの情報はギルドに挙げてもらえると助かります」

「まだ検証してる範囲なんで、攻略法がまとまったら報告しようと思います」

「期待してます。本日はご苦労様でした」


 受付のお姉さんとの会話もそこそこに、また今日も査定カウンターに向かった。


  ◇◆◇◆◇◆◇



「なんですかこの量は? 」


 プレハブギルドに戻ってきて査定カウンターに戻ってきた俺への第一声はそれであった。

 なにせ、バッグの中からドロップ品をザラザラと出す俺に査定カウンターのお姉さんは若干引き気味であった。


「頑張りました」

「頑張りすぎではー? 」

「一日でどれだけ倒せるか検証してたんです。何かまずかったでしょうか?一応数は数えながら倒してたんですが……」

「普通、スライムをそこまで専門で倒してる人はまず居ませんねー。スライムに親でも殺されたんですかー? 」

「親はもう病気で亡くなってるのでスライムは関係ないと思いますね」

「そうですか……答えづらいことを聞いてすいませんー」

「いえ、もう時間もたちましたので構わないですよ」

「こちらも仕事ですから査定は行いますがー、ちょっと時間がかかるのでしばらくギルドの中でお待ちいただいてもよろしいですかー?」

「わかりました。適当に時間潰してますね」


 すまん、ちょっと張り切りすぎたかもしれん。メモ帳によると、数え間違えてなければ倒したスライムの数は合計七百八十七匹。

 スライムゼリーの入手量は二百五十八個。魔結晶は五十二個だった。

 ざっくり計算するとスライムゼリーのドロップ率は俺換算で三十二%ほど。魔結晶のドロップ率は六.六%程度だということだろう。


 食べ物を食わせてその間に倒すという話はまだ検証段階なので今の段階で話す内容ではないと思い伏せておいた。

 生活に直接かかわるのであまり他の人に広まると間違った情報を流してしまうかもしれないし、飯のタネをわざわざ人に広めて自分の収入を減らすことも無いだろう。


 しばらくして、俺の順番が来た。


「とりあえず査定は終わりましたー。ここまでスライムばかり狙ってる人はこのダンジョンでは久しぶりに見ましたねー」

「では受け取りして帰ります。今日もありがとうございました」

「いえー、また来てくださいねー。ここ田舎だから昼間結構暇なんですよー。できれば一日の終わりにまとめて持ってこられるより、昼休憩かねてこちらに来られるとかにしていただけると私たちの負担が減って楽なので、ちょっとだけ頭の隅にとどめておいてくださいねー」

「わかりました、覚えてたらそうします」

「絶対ですよー」


 査定が終わったことだし支払いカウンターに向かおう。


「今日は結構稼がれましたね。定期的にモンスターを間引きしないと下階層に行くにも邪魔をすることがあって、スライム駆除は割と大事な仕事なんですよ」

「そうなんですね、しばらくはスライムを狩り続けようと思います。ちょっと確かめたいこともあるので」

「無理はしないでくださいね」


 今日受け取った金額は諭吉さん一枚とちょっとだった。仕事をしてる時間を考えたら前の職場よりちょっと多いぐらいだろうか。

 意外と多くの収入を手に入れることができたので、今日はおでんの卵と牛すじを買って帰ろう。

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