ハリウッドのラットたち

@imad

第1章「ミッキー・マウス」


物語はアメリカ、正確にはハリウッドの裏通りで幕を開ける。

ここでは麻薬とセックスが、ハリウッド映画と同じかそれ以上の金を生むようになった。

我々の物語では、汚らしい欲望と高潔な理念が衝突し、マフィアと警察がぶつかり合い、マフィアが国家の関節という関節にどれだけ深く食い込んでいるかを描く。

登場人物たちは激しい心理的葛藤に苛まれ、信念や聖なるものを見直さざるを得なくなる。まさに本作の主人公のように。

物語は18歳の「ミッキー・マウス」という少年から始まる。

黒みがかった褐色の肌、背は低く、鋭いネズミのような顔立ち。歯はゴミ箱の残飯を食べてきたせいで隙間だらけ、黄色く汚い。巻き毛の髪は悪臭を放ち、いつも帽子で隠している。吃音がひどく、まともに文章を終えることすらできない。

彼は「11-11(イレブンイレブン)」という地区に住んでいる。

麻薬とポン引きが跋扈する悪名高いスラムだ。この地区のポン引きたちには左目にタトゥーを入れる習慣がある。才能も社会的地位もない彼らは、マフィアのポン引きとして生きることでしか飯を食えない。

ミッキーの母親は「マドンナ」と呼ばれる有名な娼婦だ。金髪の美しい女で、歌手マドンナにちなんでそう呼ばれている。

地区には噂が流れている——「ミッキー・マウスはハリウッドで有名な警察官の息子だ」と。その噂こそが、彼の吃音を最も悪化させた原因だ。

母親はミッキーを「足手まとい」としか見ていない。何度もマフィアのポン引き試験を受けさせたが、吃音のせいで毎回落ち、組織に時間と金と人の命を無駄にさせた。

だからミッキーは決意した。11-11地区のマフィアの動きをすべて記録し、逃げ出して別の地区のマフィアに売りつけることを。

逃亡からちょうど1か月後、新聞の見出しが踊った。

『11-11地区マフィア壊滅』

ミッキーはゴミ箱の陰で新聞を広げ、歯と歯の間から腐った息を吐きながら笑う。

「マ……マフィア……バ……バカ……が……11-11……燃……えた……」

数分後、銃声。

ミッキーはゴミ箱の陰に身を縮める。数秒後、車が壁に激突し、銃声が止んだ。

靴音が近づいてくる。血の匂い。

ミッキーは映画のワンシーンを見ているかのように、恐怖と興奮で目を丸くする。

靴音は三人分。

建物のペンキ塗り職人の作業着を着た男たちが、銃を構えている。

「ポン引きはたとえネズミでも殺せ」

ミッキー(心の声):

俺はネズミだ……俺はネ……ズミだ……でも見ない、聞かない、言わない……

数メートル先で警察が何かを見ているのに、何も動かない。

静寂。

ペンキ職人たちは運転席のポン引きが死んだのを確認する。

そのとき、ミッキーの横を本物のネズミが通り、足を噛んだ。

「Fuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuck!!!」

叫び声でバレた。

一人の男——「チャバニ」と呼ばれる男が叫ぶ。

「誰だこのネズミは!」

近づいてきて、気絶しているミッキーを見つける。

ニヤリと笑う。

「おお、おお……こいつもポン引きか?」

チャバニはミッキーを抱え、死体と一緒に車に乗せ、火を点けようとする。

ミッキーのうめき声が聞こえ、まだ生きていると気づく。

「……尋問に連れて行こう」

チャバニ(ポン引き殺し)の人物像


肌は透き通るような黄色、羽根付きのコートを着て、襟を立てる。

耳には龍のピアス、黒髪は長く湿っており、箸で縛っている(その箸で人を殺すこともある)。

小さな切れ長の目、半分アメリカ人・半分中国人(父アメリカ人、母中国人)。

チャイナタウンの路上で育ち、美しい中国人の妻と、可愛い娘がいる。

指には殺したポン引きの数だけ髑髏のタトゥー。娘に見せないよう常に手袋。

今、ミッキーがいる地区を支配するマフィア「ネズミの口(Rat's Mouth)」の幹部。

そのマフィアのボスが「ジェイコブ・GG」だ。


ジェイコブ・GG


金髪で光り輝く髪、茶色の瞳、異常に背が高い。

「1-1地区」の独立党党首という表の顔を持ち、貧しい者たちの「小さな救世主」「再臨のキリスト」と呼ばれている。

本人は内心で吐き捨てる。

「このネズミどもが、俺がマフィアのボスだと知ったら、みんなポン引きになるか、俺の首を要求するだろうよ」

(十字架にかけられたキリストの幻影が浮かぶ)


場面は戻る。

気絶から覚めたミッキーは、右にチャバニ、左にニコランを見た。

尋問室のような薄暗い部屋。

誰かが言う。

「ポン引きは舌が回るのが普通だ。こいつはホームレスみたいにどもる。偽装か? それとも本当にポン引きの印がないだけか?」

チャバニが冷たく言う。

「ポン引きだろうがなかろうが、死ぬ」

そこへ、十字架のネックレスをかけ、高級時計とワニ革の靴、赤で装飾されたスーツを着た男——ニコランが口を開く。

「このちんちくりんの無神論者、組織では無差別殺人はご法度だ。ボスの教えだ」

チャバニ、笑う。

「お前みたいなアメリカのクソ野郎に言われたくねえよ。殺しがあるからこそ『ネズミの口』はハリウッドを支配してる。顔を見た者、声を聞いた者は全員死ぬ。それが俺の仕事だ。俺には可愛い娘がいる。俺がミスったら、死んだ後でも娘が苦しむ。ボスに迷惑がかかる」

ニコラン、銃口をチャバニの口に突っ込む。

「続けろ。いま脳みそ吹き飛ばしてやる、ホモ野郎」

チャバニ、銃口を咥えたまま笑う。

「ハハハ……おいおい、アメリカ野郎、映画の撮影中か? ハハハ!

このネズミ一匹のせいでどれだけ危険な状況か分かってんのか!

お前が俺を撃つってんなら、それこそ俺の言う通り——このネズミを始末する理由になるだろ!」

その瞬間、ミッキーがゆっくりと目を開いた。

右にチャバニ。

左にニコラン。

第1章 終わり

(第2章は後日公開予定)

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