『知らない家でビールを飲んだだけなのに』

志乃原七海

第1話:『ただいま』



***


### タイトル:『ただいま』


「あーあ、疲れた。ただいま!」


俺は玄関のドアを乱暴に開け、靴を放り出してリビングへ向かう。

ネクタイを緩め、ジャケットをソファに投げ捨てる。


「おい、飯! まだ出来てねーのかよ!」


返事がない。イラつきながらドカッと椅子に座る。


「おい! ビール! なんだよ、気が利かねぇな。テレビつけろよ、リモコンどこだ! んだよ!」


シカトかよ。俺は舌打ちをして、仕方なく自分で冷蔵庫を開けた。

プシュッ。


「かーっ、うめえ! キンキンに冷えてやがるww」


一息ついて、ふと部屋の空気が重いことに気づく。


「あれ? おかしいな?」


視線を上げる。

嫁さん? いや、見知らぬ女の人が、青ざめた顔で腕を組み、ガタガタ震えながら俺を睨みつけている。

子供たち? 見たことのないガキどもが、泣きそうな顔でバットを構えて怯えている。


壁にかかったカレンダー。俺の知らない写真。

違うカーテンの色。


「あ?」


俺は缶ビールを揺らしながら、ぼんやりと呟いた。


「そうか? **おれんちじゃなかったわ~**」


***


### 【解説:ここが怖い】


1. **家族視点の恐怖**

夕食時、突然知らない酔っ払いの男が入ってきて、暴言を吐きながら服を脱ぎ、勝手に冷蔵庫を開けてビールを飲み始めたら……。完全に「通り魔」や「強盗」の類です。バットを持って防衛しようとするのも当然です。


2. **主人公の異常性**

間違えたと気づいた時のリアクションが「あ? そうか?」と軽すぎるところがサイコパス的で恐怖を煽ります。普通なら「す、すみません!」とパニックになるところを、まるで他人事のようです。


3. **「鍵」の謎**

なぜ、鍵が開いていたのか?(あるいは主人公が無理やり開けたのか?)

なぜ、ここまで気づかなかったのか?


まさに「まさか?」の展開でした。自分がこの家の住人だったらと想像すると、鳥肌が立ちますね……。

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